199.ごみ処理場ってちょっとわくわくするよね

 一番近いごみ処理場はN町の外れにある。N町を更に西に行った、山と山の間にあるのだ。

 ごみというのは本来自区内処理が基本らしいが、この辺は土地はあるが人が少ないのでごみ処理場も広域化が進んでいる。麓の村とその北東方面にある奥の村のごみもN町に集めているそうだ。そんなわけでうちの山のごみはN町に持って行くことになっている。

 昨日まとめたごみをみなで荷台に積んだ。けっこうな量が残っていたようで、全ての軽トラの荷台がそこそこいっぱいになった。どんだけだよ、と思った。

 今日は陸奥さん、戸山さん、相川さんと俺である。軽トラとはいえ四台分のごみってなんだよ。解体すればもっと出るのだからとりあえず処分しなければとさっそく運ぶことになった。

 ポチとタマは陸奥さんたちが来たら、また来たのかと一瞥して遊びに行った。そういえばユマって誰かが来る時なんかはいつも留守番だよな。そこらへんどうなってるんだろう。


「今日はごみ処理場に行くから、ユマは留守番かな」


 と言ったらすごくショックを受けたような顔をされた。


「だってさ、ユマ。ごみ処理場ってけっこう臭うじゃないか。臭いのやだろ?」


 どんなにキレイなごみ処理場だって、ごみピットに投入する場所は臭うものだ。さすがに建物の外は臭わないが今日はけっこうごみを下ろすのだ。いつもみたいにパパッと終わるものではない。

 ユマはコキャッと首を傾げた。

 陸奥さんが笑った。


「佐野君、ユマちゃんは一緒に行きたいんだろ? 連れてってやれよ、健気じゃねえか」

「かわいくていいよねえ」


 戸山さんもにこにこしながら言う。俺は苦笑した。


「後で文句言うなよ?」


 そう言ってみんなで出かけた。

 少し離れたところから白いものを吐き出している煙突が見えた。あれは煙ではなく水蒸気なのだという。寒くなってきているから白く見えるらしい。基本的にあの煙突から有害物質は出ていないそうだ。バグフィルターとかいうので念入りにそういうものは除去しているようで匂いもしないらしい。ちょっとした豆知識である。

 ごみ処理場では受付で量りに軽トラのまま載り、帰りにまた量ってもらっての重量換算で料金を払う形だ。N町はkg辺り35円である。車でごみを下ろす場所に向かい、まずは可燃ごみを台の上に下ろした。この台は扉が閉まるとガコン、と動いて斜めに下がるようになっているらしい。台の向こうはごみピット。可燃ごみを溜めるばかでかい穴である。落ちたらクレーンで引き揚げてもらうようだが、けっこうな深さがあるので怪我は免れないだろう。もちろんごみの中に落ちるわけだからどろどろになるのは必定だ。

 そんなわけで、この台にごみを下ろすのはいつも怖い。


「おー、にーちゃん。おっかなびっくりやってっとかえって危ねーぞ」


 おかげでごみ収集車に乗ってる兄ちゃんにいつも言われてしまう。わかってたって怖いものは怖いんです。

 収集車はパッカー車だ。バックで乗り付けて、パカッと蓋を開けて押し出し式でごみを直接ピットに落としていく。いつ見ても働く車っていいなと思う。ちなみに、パッカー車というのは英語の「詰め込む」、のpackからきているらしい。蓋がパカッと開くからパッカー車というわけではないそうだ。実はそう思ってたなんて言えない。

 可燃ごみを置いたら不燃ごみ置き場に不燃ごみを置き、そこで有害ごみなども置く。最後に粗大ごみ置き場で粗大ごみを置いて受付で量りに乗り、お金を払ってN町のいつもの駐車場まで移動した。やはりごみピットがある搬入場所は臭かった。ユマがちょっと顔を歪めていたように見えたがしょうがない。ついてきてしまったわけだし。お弁当にと持ってきた白菜の葉をあげたら無心でつついていた。ごみ処理費用、思ったよりかかったけどしょうがない。解体などでこれから更にかかるのである。覚悟するしかなかった。

 ちなみに廃屋の解体をすると元庄屋の山倉さんたちに伝えたら、費用を半分ぐらいは負担すると言ってくれたが断った。一応お知らせしただけである。今は俺の山なのだから俺が処理するのが当然だ。それにしたって気候も寒ければ財布の中も寒い。だから空き家の解体とかってなかなかしないんだなと納得した。

 N町のいつも使っている駐車場に、みんな各自の軽トラを停めて思い思いに昼飯を買いに行った。食べるのは駐車場で、各自軽トラの中でである。今日はこのまま解散だ。


「ちょっと行ってくる。すぐ戻るからな」


 ユマに一言断ってスーパーへ駆けて行くことにした。今日はリンさんがいないからユマ一人で留守番になってしまう。


「佐野さん、買い出しもするでしょう。僕待ってますよ」

「ありがとうございます。急いで戻ってきますね」


 さすがに今日はリンさんを連れてくるわけにはいかないからと、相川さんが残ってくれることになった。誰かが戻り次第買物に行くそうだ。

 陸奥さんと戸山さんはスーパーのお弁当コーナーで難しい顔をしていた。


「いろいろあって悩むなぁ」

「そうだねー。目移りしちゃうよねー」


 お弁当代は受け取ってもらえなかった。今日は俺を手伝わせる予定はなかったからと言って。みなさんなかなかに律儀である。俺は昼飯に牛丼を買い、その他村では買えない物を買って戻った。やっぱり大荷物になってしまった。


「ユマ、ただいま」


 お弁当に持ってきた白菜を全部出す。ユマは嬉しそうにぱりぱりと食べた。

 ふーっとため息をつく。解体作業はまだ始まったばかりだが、ちょっとだけほっとした。解体したらその木ぎれなどの処理もあるからもっとたいへんだということはわかっているが、ゆっくりでもいろいろ進んでいることが嬉しかった。


「また明日~」


 食べ終えて軽トラを走らせる。相川さんはこの後用事があるらしい。陸奥さんと戸山さんもN町に来たついでにどこかへ行くそうだ。俺はユマと一緒にドライブしながら山に戻ったのだった。



ーーーー

レビューコメントいただきました! ありがとうございます!

ニワトリファンタジー!(また新語いただきましたー

まだまだ続きます~。


ごみ処理場のかんじとか、処理費用については各自治体で違います。興味がある方は見学に行ってみてください。けっこう好きです。

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