169.おっちゃんのところの山に登ろう

 翌日の朝、桂木さんから連絡がきた。

 おっちゃんちに妹と共に行くらしい。でも基本台所で調理などの手伝いをするそうだ。山の手入れは頼みますと言われた。力仕事を任せてくれるのは助かる。女性が一緒だとどうしても必要以上に気になってしまう。怪我などしないかどうか心配してしまうのだ。

 昨夜ニワトリたちに今日の予定を話した。おっちゃんちの山の見回りに行くこと。台風による被害の確認と、できれば害獣がいたら狩る、もしくは生息している場所を確認するのだと伝えた。ポチはそれを聞いただけで行く気満々だった。頼むから一羽で突っ走らないでほしい。


「相川さんも来るけどリンさんとテンさんはこないから」


 と言ったらタマが行く気になった。「イノシシー!」とか言ってる。だからお前らはいったいなんなんだよ。ついでに、山の見回りはしないが桂木さんとその妹が来ることは伝えた。ユマが話したらしくポチもタマも頷くように首を動かした。


「で、明日おっちゃんちに行く人ー」

「イクー」

「イクー」

「イクー」


 全員出席だな。これなら万が一泊まりになっても大丈夫だろう。おっちゃんにその旨連絡した。


「そうか! ニワトリたちが来てくれると助かるな!」


 とおっちゃんは喜んでいた。おばさんに負担をかけるのは気が進まないが、山の見回りは大事だと思う。また果物などを手配しようと思った。

 んで翌朝である。タマとユマの卵を無事回収し、でっかい目玉焼きを食べて幸せに浸る。うちのニワトリ、サイコーである。

 畑に異常がないか確認してから、みんなで山を下りた。朝晩はかなり寒くなってきた。陽が出ている昼間ならばただ立っているだけでも汗ばむことはあるが、朝晩に関しては凍えそうだと思う日もある。


「山だから、雪も降るよなー……」


 まだ十月も半ばに差し掛かったところだからまだだと思いたい。明日には養鶏場に連絡を入れなくてはと、ニワトリのエサのことを思い出した。冬の過ごし方も改めて聞かなくてはと思う。

 おっちゃんちに着くと、桂木姉妹はすでに着いていた。おっちゃんちの横の日陰のところにドラゴンさんの姿が見えた。


「タツキさん、おはようございます。うちのニワトリが三羽とも来ています。よろしくお願いします」


 ドラゴンさんは閉じていた目をうっすらと開け、軽く頷いた。話の分かる御仁である。タマがドラゴンさんに近づいて軽く突き始める。最初は何をするのかと肝を冷やしたが、身体についた小さな虫などを取ってあげているということに気づいてからは気にしないことにしている。


「こんにちはー」


 家のガラス扉を開けて中に声をかける。廊下の向こうからどたどたと音がしてきた。おっちゃんだった。


「おー、昇平来たかー。ニワトリ全員で来たんだよな?」

「はい。今庭にいます」

「みんな山に登るのか?」

「おそらくは」


 なにせポチとタマの張り切りっぷりがすごい。山に足を踏み入れた途端全力疾走でもしそうな勢いだ。来る前に、勝手に走って行かないこと、ちゃんとこちらの指示を聞くようには言ってあるがどうなることやら……。


「あんまり気前のいいことは言わないでくださいね。また張り切って飛んで行ってしまうと困るので」

「それもそうだな」


 ニワトリに社交辞令は通用しないし、その場のノリも通じない。イノシシを狩ってきてくれなんて言おうもんならこの間のようなことになる。まさに口は災いの元である。(なんか違う気もする)

 相川さんの軽トラが着いたようだった。


「すいません、遅れてしまって……」

「時間なんざ決めてねえだろ。大丈夫だ」


 とりあえず上がると桂木さん姉妹がおばさんとお茶を飲んでいた。


「こんにちは、佐野さん、相川さん」

「こんにちは」

「こんにちは」

「こんにちはー、おにーさんたち! 今日もカッコイイねー!」


 朝からテンションの高い妹である。今日は桂木さんに服を借りたのか、一応作業着だった。化粧はバッチリである。


「こら、リエ!」


 桂木さんが顔を真っ赤にして妹を窘める。


「気にしなくていいよ」

「お気になさらず」


 相川さんと苦笑した。


「桂木さんの妹なんだって? 元気だよなぁ」


 ガハハとおっちゃんが笑う。おばさんも嬉しそうだ。


「今日もよろしくお願いします」


 おばさんにはいつもお世話になっている。また昼食等も用意してくれるのだろう。頭を下げた。


「何言ってんの! こちらがお願いしてんのよ。昇ちゃんも相川君もいつもありがとうね」


 お茶を一杯いただいてから出かけることにした。


「ねーねーおにーさん、今日ニワトリちゃんはー?」

「全員連れて来てるけど、一緒に山に連れてくよ」

「えー、そうなんだー。ニワトリちゃん仕事熱心なんだねー、すごーい!」


 やっぱりこの娘面白いと思った。

 お茶を飲み、漬物を食べて、おばさんから握り飯を受け取る。飲み物については各自だ。ニワトリたちの分も用意してある。背負うのは各自である。


「じゃあそろそろ行くか」


 おっちゃんの号令で山を登ることになった。ポチとタマの暴走を食い止めることができるだろうか。ちょっと心配になった。



ーーーーー

またレビューコメントをいただいてしまいました! ありがとうございます!!

SF(少しファンタジー)とかBL(バードラブ)とか皆様言葉を作るのがうまいですね~(笑)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る