106.不法投棄対策をいろいろ考えてみる
ドラゴンさんは家の横の影になっているところに寝そべり、タマは遠くへツッタカターと駆けていき、ユマはリンさんの側へ行った。動物たちは養鶏場の建物に近寄らないように言われたのをよく聞き届け、思い思いに過ごすようだった。
「相川君は……彼女さん、本当にいいの?」
相川さんから手土産の箱を受け取って、おばさんが心配そうに聞く。
「人見知りが激しいので、すみません」
「でも一緒には来るのね。健気だわ~」
そういうのがおばさんは好きらしい。相川さんは苦笑した。
「そうですね。それにすごく嫉妬深いので、佐野さんの側にいることにします」
「その方がいいわね。桂木さんだっけ? かわいいわねぇ……」
俺には誰もなんの感想もない。うん、平々凡々だしな。普通が一番だ。別に悔しくなんかないんだからねッ!
居間は人でいっぱいになった。おばさんが煎餅と漬物、そして人数分のお茶を出してくれた。
「木本さんは今日は?」
「ニワトリたちの様子を見に、定期的に来てるんだよ。君のところのニワトリたちも好きだなぁ。後で診せてもらっていいかい」
「はい、ありがとうございます。助かります」
ここのニワトリたちは食肉用だ。病気になんかなったら出荷できなくなるから、定期的に診てもらっているのだろう。
「で、ごみ拾いウォークのことなんだけど」
「はい」
松山さんに促されて、相川さんと開催に至った経緯、スケジュールなどを説明した。
「へえ、ニワトリと一緒にごみ拾いかぁ。佐野君考えたねぇ」
木本さんが感心したように言った。
「知らない人が来ることを考えてファスナーをつけるか……。確かにその方が安全かもね。今の人たちは勝手に写真撮るからね~」
「そうなんですよね。何も断らずに写真をばしばし撮るので怖いなって思いました」
「スマホ普及の弊害だね」
写真機能付き携帯電話からかな。写真を撮る時には一応断ってほしい。
「随分参加者がいたのねぇ」
「参加費は保険分の300円だけいただいたので。一日参加しても三日参加しても300円にしました」
「保険って三日分もカバーできるの?」
「いえ、一日300円ですよ」
「それはしっかり徴収した方がよかったんじゃない?」
おばさんは眉を寄せた。
「そうですね」
それぐらいは徴収してもよかったかもしれない。不法投棄を処理する費用を考えたら、なんて考えてしまったのがいけなかったかもしれない。
「またやる予定はあるのかな?」
松山のおじさんに聞かれた。俺は相川さんと桂木さんを見やる。
「……そうですね。9月の連休の様子を見て、というところです」
相川さんが答えてくれた。
「そうだね。今年は四連休だもんなぁ。連休はいいけど、不法投棄が増えるのが困るところだね」
「基本現行犯逮捕でないといけませんしね」
どこの山でも困る問題のようだ。
「不法投棄っていえば、鳥居をつけたら不法投棄されなくなったとかって話を聞いたことがあるよ」
木本さんが言う。その話は俺もしたことがあった。
「聞いたことはあります。ただ、全く効果がなかった場所もあるらしいので、設置するならばかなりしっかりしたものの方がいいでしょうね」
相川さんが冷静に答えた。松山さんが首を傾げる。
「効果がなかった場所って、どんなかんじだったんだろうね?」
俺も気になってスマホで検索した。場所柄もあるだろうが、形と色が鳥居なだけの、木の枝を組み合わせて作ったようなものを設置したみたいだった。これではさすがに効果も出ないだろう。どうせ作るなら小さくても如何にもな物を作った方がいい。
「こんなちゃちなかんじだったみたいです」
松山さんに見せると、「これじゃあねぇ」と納得したようだった。
そうだ。
「……ごみ拾いウォークもいいですけど、鳥居作りを子どもたちに手伝ってもらうってどうですかね?」
木材はいくらでも出せる。間伐材を使えばいい。それを板状に切って、色塗りや木組み、~~神社や文言などは子どもたちに考えてもらうとか。で、最後にしめ縄をつければ実際に不法投棄が減るんじゃないだろうか。
「それはなかなか面白そうだね。ちょっと考えてみようか」
「はーい、ごはんよ~」
おばさんが料理とホットプレートを運んできてくれたので一旦話を止め、みんなで鶏料理に舌鼓を打った。うん、新鮮な鶏はおいしいな。
うちのニワトリは絶対絞めないけど。(間違いなく返り討ちに遭う)
唐揚げうまい。なんでこんなにうまいんだろう。自分で実際やってみると、下味をつけるのは唐揚げの味粉でいいんだが、油の温度調節はたいへんだし、ちょっと油断すると黒焦げになるし、でも中は生焼けなんてこともあるので難しいなと思った。俺の作り方は一度何分か揚げてから出して、熱を中まで浸透させてからもう一回揚げるという二度揚げ方式だ。これなら中が生焼けなんてことにはならない。作るのはそれでいいが、油の処理はたいへんだし台所は油まみれになるしであまり揚げ物はやりたくない。油ポットとかも持ってないから、もうやらないだろう。村のおばさんたちはよく揚げ物を出してくれるが、いつも頭が下がる思いである。唐揚げも天ぷらも全ておいしいです。いつもありがとうございます。
今回もホットプレートでタッカルビを作ってくれた。辛い、うまい。ごはんが進む。みんな争うようにして食べた。
そして今日もこれでもかとごちそうになったのだった。
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