第6話 ニヤニヤする渚
早苗たちが行くケーキ屋は外装が白く、オシャレなケーキ屋だった。
落ち着いた感じの内装で、入った瞬間甘い匂いが早苗たちを包み込む。
客層は主に十代から二十代で、落ち着いている内装とは逆に店内は活気に満ちていた。
「ケーキ屋の甘い匂い好きだな~。食欲がそそられる~」
「早苗は昔から甘いものが好きだからね。あたしも分かるよ。あたしも甘いもの好きだから」
甘いものが好きな早苗にとってケーキ屋は最高のお店だった。
将来はパティシエになるのも良いかもしれない。
毎日好きなケーキを作って囲まれて、隣には茜がいる。
最高の人生かもしれない。
「どうしたの早苗。顔がにやけてるよ」
「将来、茜ちゃんと二人でケーキ屋を経営したら楽しそうだな~と思って」
「それは楽しそうだね」
「でしょでしょー。私がケーキを作って茜ちゃんが販売する。そして二階は二人の居住スペースにすれば通勤時間も削れるし、一緒に暮らすのもアリかも」
「そうだね。早苗と一緒に暮らしたら毎日楽しいかも」
茜ににやけていることを指摘された早苗は、今思い浮かんだ将来のビジョンを楽しそうに話す。
茜もそのビジョンを想像し、幸せそうな表情を浮かべる。
大学生になっても社会人になっても、隣に茜がいる未来は他のどの未来よりもきっと楽しいに決まっている。
「……あれってもはや告白通り越して婚約してるよね」
「……あはは、ボクもミチルの言う通り婚約しているようにしか見えないね。本人たちはその自覚がないと思うけど」
後ろにいるミチルと渚が早苗たちの会話を聞いて呆れていた。
だが、早苗と茜は自分たちの世界に入っているため、それに気づかなかった。
その後、四人はそれぞれケーキと飲み物を頼み、支払いは早苗と茜の二人で割り勘した。
「ありがとう早苗、茜。二人に祝ってもらえてとても嬉しいわ」
「今日だけは二人に甘えさせてもらうよ。ありがとう」
お祝いでケーキを買ってもらったミチルと渚はそれぞれ二人にお礼の言葉を言う。
「どういたしまして。さぁ、早く座って食べよう」
「そうだね。あそこの席空いているからそこにしよう」
早苗は嬉しそうな表情でお返しの言葉を言い、茜は四人で座れる席を見つけ、そこに三人を誘導させる。
席の配置は早苗が奥側に座り、横に茜、正面にミチル、斜向かいに渚が座る。
「それじゃーいただきます」
「ちょっと待って早苗。食べる前に写真撮らせて」
「早苗、食い意地張りすぎ」
「早苗は映えより食欲だね」
「そうだったっ。食べることしか頭になかったよ。高校生なんだからこういう映えも意識しないとね」
映えよりも食べることが好きな早苗は早速ケーキを食べようとするものの、ミチルに止められてしまう。
食べる前にミチルたちは写真を撮ってSNSに上げたかったらしく、茜は呆れていた。
渚にも笑われ、早苗は明るい感じで軽く反省する。
その後、四人はスマホでケーキや自分や友達を取って、ハッシュタグを付けてからSNSに投稿する。
「やっと食べられるね」
「ホント、早苗は映えよりも食べることしか考えてないよね。まっ、それが早苗らしいんだけど」
写真も撮り、SNSに投稿も終えたのでこれで心置きなくケーキを食べることができる。
やっとケーキが食べられると喜んでいる早苗の隣で茜は呆れているものの、それが早苗らしくて笑みを浮かべる。
ちなみに早苗は王道のイチゴのショートケーキとオレンジジュース、茜はチョコケーキとブラックコーヒー、ミチルはレアチーズケーキに茜と同じくブラックコーヒー、渚はモンブランに緑茶を頼んだ。
早苗はフォークで一口サイズに切り分けて口の中に入れる。
「ん~、甘~い。この生クリームのくどい甘さが好きなんだよね~。それにイチゴの酸味が良いアクセントになってより生クリームの甘さを引き立てている。幸せ~」
もしこれがアニメやマンガだったら早苗の周りにお花のエフェクトが出るぐらい、早苗はとても幸せそうにケーキを頬張っていた。
「ホント、早苗っていつもおいしそうに食べるよね」
「早苗は特に甘い物が好きだからね」
「早苗が幸せそうな顔で食べてくれるから毎日早苗のために料理作っちゃうんだよね」
おいしそうに食べている早苗を見て、三人も笑みがこぼれる。
「そんな見つめられると恥ずかしいから、あまりジロジロ見ないで」
三人のことは大好きだが、食べている姿をジロジロ見られるのはいくら友達でも恥ずかしい。
そんな頬を膨らませた早苗も可愛いのか、三人はますます笑顔になる。
「だっておいしそうに食べてる早苗は可愛いから無理かな」
「もう~、茜ちゃんったら」
茜がからかってくるので、早苗はポカポカ茜を叩いて照れ隠しをする。
「……なんかあたしたちよりもカップルみたいじゃない」
「……そんなことで嫉妬するなんてミチルは可愛いね。良い子良い子」
「なっ、なんでいきなり撫でるのよ。恥ずかしいじゃない」
「それはミチルが羨ましそうな顔で二人を見て嫉妬してたからだよ。そんなミチルも可愛いよ」
そんなカップルのようにイチャつく二人を見て、ミチルが嫉妬しそれに気づいた渚はミチルの頭を撫でて宥める。
ミチルは彼女に頭を撫でられて嬉しがるもそれを素直に表現することができずにツンツンしてしまう。
そんなミチルが可愛くて渚は思わずニヤニヤしてしまう。
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