第4話 ハグする幼馴染と欲しがりなミチル
「やっと放課後だ~」
七時間の授業とホームルームを終えた早苗は机に突っ伏す。
長期休暇後の学校は特に疲れが溜まりやすいと早苗は思う。
「お疲れ様、早苗」
そんな疲れ切っている早苗に茜は後ろから抱きしめながら労う。
どんなに疲れ切っていても茜に抱きしめられるだけで疲れが飛んでいく。
「ありがとう茜ちゃん。茜ちゃんに抱きしめてくれたおかげで疲れが飛んでいったよ」
「それは良かった」
疲れが吹き飛び、再び元気になる早苗を見て茜も嬉しそうな表情を浮かべる。
「お礼に私も茜ちゃんを抱きしめてあげる」
「早苗の場合、ただ抱き着きたいだけでしょ」
「えへへ」
早苗は一度立ち上がると正面から茜を抱きしめる。
本当はただ茜に抱き着きたかっただけなのだが、さすが幼馴染。早苗のことを完璧に理解している。
茜もそれを分かりながらもやぶさかではない表情を浮かべながら、早苗に抱きしめられる。
「……あれで付き合ってないんだから驚きよね」
「……あはは、二人が付き合ってない事実を知ってもあの二人はカップルにしか見えないよ」
教室で堂々と抱き合っている早苗と茜を見てミチルはため息をこぼし、渚は苦笑いを浮かべている。
「ボクたちも一回ハグする?」
「ば……まだ付き合ったばかりなんだし、早苗たちみたいに所かまわず抱き着くのはまだ恥ずかしい……」
早苗たちのハグを見てムラムラしたのか羨ましく思ったのか、渚がミチルをクラスメイトの前でハグしようとするものの、ミチルに断られてしまう。
ミチルも渚と付き合い始めたばかりということもあり、まだクラスメイトの前でイチャつくのは恥ずかしいらしい。
「茜ちゃんに抱き着くと一日の疲れが癒されていくよ~」
「あたしも。早苗に抱き着くと疲れが癒される」
ハグするのも恥ずかしがるミチルとは反対に早苗と茜はお互い抱き合って癒されていた。
お互い同じ身長ということもあり、目線も一緒で吐息がかかるぐらい近い距離で見つめ合っている。
至近距離から見ても茜は可愛い。
「そうだミチルちゃん、渚ちゃん。今日放課後空いてるかな」
満足するまで茜と抱き合った早苗はヒマワリのような笑顔で二人に話しかける。
「別に大丈夫だけど」
「ボクも大丈夫だよ」
「それなら今日の放課後、四人でケーキ食べに行かない? 付き合った二人のお祝いしたいしさ」
二人とも予定がなかったのは早苗的に好都合だった。
ミチルと渚には内緒で今日、早苗と茜は付き合った二人をお祝いしたくていろいろと計画を練っていた。
「さすがに大げさすぎるでしょ。ここまでお祝いされると逆に恥ずかしすぎるんだけど」
「照れたミチルも可愛いね。それに早苗も茜もボクたちのためにお祝いの計画を練っていたみたいだし、ここはお言葉に甘えようかな」
たくさん早苗たちにお祝いされて照れるミチル。
そんなミチルを彼女の渚は微笑ましそうに見つめる。
「気づいてたんだ」
「そりゃあね。ずっと早苗がニヤニヤしっぱなしだったし、今日はずっと二人でコソコソ話してたしね」
計画が筒抜けただったことに茜は驚く。
それには早苗も驚いた。
二人には内緒で計画を練っていたのに、渚にはバレバレだったらしい。
「あたし、全然気づかなかった」
ミチルは自分だけ気づいていなかったことに愕然している。
「大丈夫だよミチル。そんなミチルも可愛いから」
すかさず渚がミチルをフォローする。
渚のすぐに相手をフォローできるところが渚の美徳だと早苗は思う。
「私ってそんなにニヤニヤしてたっ?」
「うん、してたよ。授業中もずっとニヤニヤしてて先生に怒られないかソワソワしてたよ」
「だったら言ってくれれば良かったのに~。茜ちゃんの意地悪」
「ごめんね早苗。でもそんな早苗も可愛かったよ」
「……もう~、茜ちゃんったら」
自分では全然ニヤニヤしていたことに気づいていなかった早苗は驚愕する。
茜は早苗がニヤニヤしていたことに気づいていたが、早苗にはなにも言ってはくれなかった。
茜に意地悪されて早苗は頬を膨らますも、茜に可愛いと言われ思わず一瞬で頬が緩んでしまう。
「早く行かないと時間もなくなっちゃうし、そろそろ移動しようか」
教室で四人で盛り上がるのも良いが今日はミチルと渚のお祝いのためにケーキを食べに行く予定がある。
「そうだった。忘れるところだった」
「早苗が計画したのに忘れないの」
「えへへ、ごめんね」
一日中計画を練っていたのにも関わらず、四人で放課後話していたことが楽しくてケーキを食べに行くことを忘れかけていた早苗。
そんな早苗に茜は呆れていた。
「全く、早苗は」
「それが早苗らしいと言えばらしいんだけどね」
これにはミチルも呆れ、渚は苦し紛れのフォローをする。
その後、四人は教室を出て、昇降口で外靴に履き替えケーキ屋に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます