必殺・にゃんにゃんパンチ!
天宮さくら
必殺・にゃんにゃんパンチ!
「ニャーン……よくぞここまで来たな」
そう言って悪の
けれど俺は歯を食いしばり、みんなの顔を見て回る。どいつもこいつもブラックニャーンの
それが
「
俺以外のパーティは全員、猫だ。毛の色はなんでもござれ。赤毛のレッチッチ、黄毛のイエエー、青毛のブルルン、緑毛のグリッリ。
俺の言葉にみんなは少しだけ勇気を取り戻した。うっかり取り落としそうになっていた武器を
その姿を見て俺は安心し、前を見た。ブラックニャーンは俺たちが
「
ブラックニャーンは俺を
そう、四匹の猫(パーティーメンバー)に囲まれていう俺は、人間だ。
* * *
俺の名前は
事件が起きたのは、
俺が住んでいた場所は雪なんて
けれど俺はそんなことに構わず自転車に
「どうして大雨の日は休校になるのに、雪が積もっても休校にならねぇんだよ」
あの時の俺は雪の上を自転車で走ることがあんなにも危険だとは想像していなかった。
ちょっとした段差を自転車で乗り越えようとした時だった。加速をつけなくてはと思いペダルを強く
──目の前を猫が横切った。
「あぶねぇっ!!!」
博愛主義者である俺は
身体能力を
「ごめんなさいね、タイミング悪くて」
目が覚めるとそこは暗い空間だった。声をかけてきたのは真っ白な猫。暗闇を
自転車ですっ転ぶ原因となった、目の前を横切った猫。
「私ってば
そう言って白い猫が俺の
「あなたをニャンダー島へ転生させてあげましょう」
「なんで?!」
まるで意味がわからない。
白い猫は俺の
「とても良いところなのですよ、ニャンダー島。ただ最近、悪の
「それのどこが良いところ?!」
「もちろん、あなたは人間のまま転生させましょう。人間はニャン族を
「どこが?!」
「ああでも、身ひとつでの転生は不安ですよね。そんなあなたにラッキーアイテム!」
そう言って白い猫が自分の前足をポキリと
「ぎゃああああ! あんたバカなのか?!」
あまりの気色悪い光景に俺は叫んだが、白い猫は首を
「バカ? そんなことありませんよ。これがあればニャンダー島で平和に生活できるでしょう。でもこれはチートアイテム。むやみに使わないでくださいね」
白い猫は俺に無理やり折り取った手を
そして俺は強制的に行きたくもないニャンダー島へと転生させられたのだ。
ニャンダー島での生活は
ニャン族(猫)に見つかれば、まず殺されかける。俺は敵ではないと
説得できたと
やっと仲良くなれたと思ったら、今度は旅人のニャン族に追いかけ回され、最終的に国王に呼び出された。
「ブラックニャーンを
桃毛の国王猫の言葉に
俺はものすごく苦労して仲良くなったニャン族たちと別れを
ブラックニャーンの捜索よりも、
それを手に入れればなんとかなるんじゃね? と俺は考えた。
だから、出会った仲間達をなだめすかし、適当におだて、ブラックニャーン
* * *
「そ、そうだぞみんな! ここでふんばらなければ我らが大将・タモツの命は消えてしまう!」
レッチッチが叫んだ言葉に反応したのはイエエーだ。そうだそうだと声を上げる。
「タモツが死んでしまっては、俺たちの
イエエーの声にブルルンが涙を流す。
「我々の野望……タモツをニャンダー島の新たなる王とする! それが叶えられない悲劇などあってはならない!」
ブルルンの涙をグリッリが優しくぬぐい、
「そのためにもブラックニャーンが
パーティーの言葉を聞いたブラックニャーンが怒る。
「それではお前ら、
ブラックニャーンが目を光らせ、謎の光線を飛ばしてくる。俺たちはそれを
「ブラックニャーン! お前に
俺は
それをブラックニャーンに
「必殺・にゃんにゃんパンチ! くらえー!!!」
俺の言葉に白い猫の手は反応した。ピカピカと光り
「うぉぉぉぉっ!!!」
ブラックニャーンが
「これで終わりだブラックニャーン! さあ、抱え込んでいるカリカリ
「ふざけるな! あれは俺が長年、国王のお皿から
ブラックニャーンが必死に
「みんなー!!!」
俺は
……穴は意外と
「さあ、これでお前も
ブラックニャーンが最後の力を
「そうはいくか! にゃんにゃんパンチ、
白い猫の手を投げる。手はブラックニャーンのおでこに当たり、燃えた。
「にゃんにゃんパンチでファイヤーだぁぁぁぁぁ!」
「やめろぉぉぉぉぉ!!!」
ブラックニャーンは火を消すため急いで水辺へと走り去っていった。
* * *
ブラックニャーンを
結論から言うと、俺は国王に
「お前はやはり人間! ニャン族を危険にさらす悪い
牢屋に入れられた俺は、自分の運命を
「なんで俺、こんな謎世界で
「それはあなたが私の手を投げつけるからですよ」
気がつくと側には俺を転生させた原因・白い猫がいた。
「猫の手を借りておいて投げつけるだなんて、
「いやいやいや! 俺が悪いのかなこれ?!」
「まさか私の手を使ってブラックニャーンのおでこに
「ん? 子供たち?」
首を
「そういえば
「では、あなたを
白い猫の言葉を聞いた
* * *
気がついたら俺は雪道に転がっていた。いや、正確には自転車ですっ転んだ現場。頭には
急いで
どうやら俺はすっ転んでからしばらくの間、気を失っていたらしい。
じっと手のひらを見てみる。そこに白い猫の手は存在していなかった。
せめてニャンダー島の思い出は何かないのかと必死に探す。
けれど、白い猫はどこにもいなかった。
「俺、博愛主義、やめよっかな……」
頭をさすりながらつぶやいた。
必殺・にゃんにゃんパンチ! 天宮さくら @amamiya-sakura
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