第49話
宗くんへのおにぎりは、あおちゃんに持って行ってもらった。
『すっげぇイヤなんだけど‼︎何であおが⁉︎あんなやつに明くんのおにぎりを恵んでやる必要ないだろ⁉︎あいつの分もあおが食べる‼︎』
って、めちゃくちゃイヤがるあおちゃんを説得するのが、僕は正直最後面倒になった。
だからもう今度から僕が休む日は、宗くんには悪いけれど絶対に作らないと心に決めた。
どうやらあおちゃんは宗くんがキライらしい。
………って、宗くんもだよね?宗くんもあおちゃんを見ると何故か舌打ちをしたり、文句みたいなことを言ったりしているから。
………でもそれは何故なんだろう。何か理由があるんだよね?
あおちゃんは僕の幼馴染みで、宗くんは家族だから、できればふたりには仲良くして欲しいというのが僕の希望。
なんて言っても、僕自身がまだ宗くんと仲良くできていなかったりする、よね。
………そう言えば、あのふたりは面識ないのかな?ふたりが僕と同じ保育園なら、当たり前だけどふたりが保育園同じなはず。
でも、今のところふたりからそんなことは聞かない。
と言うことは、微妙にふたりの在園期間がズレている?
僕の保育園時代の記憶は曖昧。
冴ちゃんがずっと働いていたから、長く在園していたはずなのに、宗くんが居たことも、あおちゃんが途中から入ったことも覚えていない。
その、僕の記憶が曖昧な理由を、冴ちゃんと実くんは知っている。
色々あって、ありすぎて、聞こうと思っていたのに今日までずっと聞きそびれまくっている。
………今日、実くんに聞いてみようかな。
『………今度お礼にあのカフェ行ってあげるから』
『そう?じゃあ、あおも行ってあげる♡』
あれだけイヤだイヤだって騒いでいたはずなのに、最終兵器の僕を差し出したら、あおちゃんはいとも簡単に引き受けてくれて、僕はそこでどっと疲れを感じた。
「やっぱり明くんのおにぎりは最高」
冴ちゃんが作ってって言ったとき、実くんは明くん熱だよ⁉︎って怒った。
………なのに今、実くんはにこにこしながら実くんにも作ったおにぎりを頬張っている。
おにぎりの具は鮭。
塩鮭を焼いてほぐして入れた、簡単なやつ。
「明くんのおにぎりって、ご飯の塩加減とこのおにぎりのかたさが最高なんだよ」
「………そうかなあ」
「そうなの」
ちなみに今はまだ午前10時。
おにぎりを作ってあおちゃんに配達を頼んだ後、僕はベッドでおとなしく寝ていた。少し眠った。
トイレに起きたら台所に実くんが居て、お腹すいたからおにぎり食べるってにこにこしながら食べている。
ほうじ茶いれるから明くんも水分補給に一緒に飲もうって誘われて、僕はそれを実くんの横で飲んでいる。
あ、これは聞くチャンスかもしれない。宗くんのこと。
いつものマグカップにいれてもらったほうじ茶を一口飲んで気持ちを落ち着かせてから、僕は何故保育園時代のことを、宗くんのことを覚えていないのかを実くんに聞いた。
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