第379話 ニートになる男

3月は別れの季節。

当院の医局会でも去り行く人たちが挨拶した。

その中の1人は定年退職する先生だが、何とニートになるそうだ!


他の定年退職者たちが勤務延長とか別の医療機関とかで働き続けるのに。


実際にはこの先生は週2回ぐらい非常勤で来るそうだ。

だから完全なニートではない。

でも凄いことだと思う。


人生の多くの時間を自分のために使えるなんて。

オレなんか1週間のうち3日間は外来、2日間は手術でどうにもならない。

土日はほとんど家でくたばっている。


保険会社や弁護士にアポを求められても時間が取れないのが現状だ。


月曜日の16時か、火曜日の10時か、金曜日の13時か。

どれかから選んでください、などと言われても無理というもの。

逆に、木曜と金曜の16時なら時間を取れます、と返事したらそれっきり連絡が来なくなってしまった。



だからオレはフリーターにあこがれる。

時間があったら、もっと小説を書きたい。

英語の勉強もしたい。

そして部屋の掃除をしたり書類の整理も必要だ。

さもなくば毎月いくら誰に支払っているのかすら把握できていない。


だからフリーターだ!

退職したら暇をもてあますってのは信じられない。


でも週2回ぐらい病院に行くのもいいな。

小説ネタを拾うためだけど。


ちなみにフリーター先生の趣味は昆虫採取とバンドと空手なのだそうだ。

きっと、そちらに注力するのだろうと思う。


今度顔を見たら訊いてみよう。


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