第223話 得点するたびに咆える男
10年以上前、オレは日本で行われた世界卓球選手権に参加した。
もちろん、選手としてではなく医務室のドクターとして、だ。
そこで驚いた事は、選手の人種構成だ。
欧米代表に中国人が多かった。
特にアメリカとかオーストリアなど、目立たない国は代表が
幸い、皆、英語を話すので診療は可能だった。
おそらく中国代表になれなかった選手が他国に流れたのだろう。
だから、世界選手権はメインランド・チャイナと帰化中国人の戦いだ。
これに日本や韓国、ドイツなど、元々強い国がからむ。
さて、中国の
日本男子チームは準決勝で中国とあたった。
日本のメンバーは
このうち張本智和は、父親が日本チームのコーチをしていた中国人。
母親も元中国代表の卓球選手だ。
張本自身は日本で生まれ育ち、11歳の時に日本国籍に帰化している。
さて、日本対中国の団体戦準決勝。
1チーム3人で5試合を戦い、先に3勝した方が勝ちになる。
結果は残念ながら、3対2で日本は負けてしまった。
2勝はいずれも張本が取ったもので、戸上も及川も歯が立たなかった。
見ていて思ったのは、日中にはほとんど技術差がない、ということだ。
しかし、中国選手の根性の方が1枚
「抜けた!」と思った球に追いつき、何とか返す。
相手に得点されても表情を崩さない。
世界選手権よりも過酷な国内戦に勝って代表入りした自信。
その自信が自らのプレーを支える。
その境地に到達できるのは
日本人選手はどうしても喜怒哀楽が顔に出てしまう。
同じ国の人間なので表情が読めてしまうのかもしれない。
では、日中ハイブリッドの張本智和はどうだろうか?
彼はもう感情全開だ。
1点取るごとに
そして後ろに
フィギュアの荒川静香のイナバウワーをもじって命名された。
張本独特のポーズだ。
彼の凄いところは後ろに下がらないところだ。
卓球の場合、ラリーで押されると下がりがちになる。
が、張本は前で踏ん張る。
相手の強打をカウンターで
誰よりも多くの練習を積んだ者だけがなしえる技だ。
日本が準決勝で負けたため、決勝はドイツ対中国になった。
これはもう3対0で中国の圧勝だった。
だがドイツチームにもチュウ・ダンという中国系の選手がいた。
中国系2世がそれぞれの国で活躍する、もうそんな時代になったのか。
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