第158話 注釈「頭を使わずに~」

今朝「頭を使わずに済ませる男」を公開してから少し反省いたしました。

読者にとっては、本文中の専門用語が難しかったかもしれません。

そこで、業界内の基礎知識を説明しておこうと思います。


整形外科医

・いわゆる美容整形とは別

・骨や関節などの運動器疾患を対象とする

・町の整形外科医は打撲や腰痛を治療する

・病院の整形外科医は脊椎せきついや骨折などの手術をする

・爽やかスポーツマンが多いものの頭を使う人は少ない


脳神経外科医

・脳を治療対象としているが、自分自身の脳はあまり使わない

・昼夜を問わず救急が来るのでメンタル、フィジカルともにタフな人が多い

・呼称から受けるイメージに反してインテリジェンスは今一つ


内科医

・小難しい話が好き

・ありふれた疾患も稀少疾患きしょうしっかんも同じように並べて鑑別かんべつ対象にする


コンサルテーション

・俗にコンサルという

・ある診療科に入院している患者であっても、専門外の症状については他の診療科に相談する事

・例えば、糖尿病で入院した患者の視力障害を眼科にコンサルする、など


ナトリウム

・食塩が塩化ナトリウムなので、ナトリウムは塩分と考えて差支えない

・正常値は135~145mEq/Lメックだが、110以下や160以上になったら生命の危機


SIADH

・Syndrome of Inappropriate AntiDiuretic Hormone secretion の略

・日本語では抗利尿こうりにょうホルモン不適切分泌症候群ふてきせつぶんぴつしょうこうぐんとなる

・抗利尿ホルモンの過剰分泌により尿が出なくなり、水分が体内に貯留した結果、血清ナトリウム濃度が低下する

・治療は水分制限


CSWS

・Central Salt Wasting Syndrome の略

・日本語では中枢性塩類喪失症候群ちゅうすうせいえんるいそうしつしょうこうぐんとなる

・ナトリウム利尿ペプチドの過剰分泌により尿から大量のナトリウムが排出されてナトリウム濃度が低下する

・治療は鉱質こうしつコルチコイド


RSWSとMRHA

・難しいのでパス。質問も不可。


畜尿ちくにょう

・尿は1日のうちでも濃くなったり薄くなったりする

・そこで尿を24時間ためておき、その中の電解質などを測定する


利尿薬りにょうやく

・尿量を増やす薬。排尿を促すのではなく、尿量そのものを多くする

・主にナトリウムを排泄するタイプと水分を排泄するタイプがある

・前者は血清ナトリウム濃度の低下、後者は血清ナトリウム濃度の上昇を招く


3号輸液、外液がいえき、生理食塩水

・点滴の大雑把おおざっぱなカテゴリー

・3号輸液のナトリウム濃度は35mEq/Lメック程度と薄いので、使い続けると低ナトリウム血症を起こす

・外液とは細胞外液のこと。130mEq/L程度のナトリウム濃度なので、135~145mEq/L程度の血清ナトリウム値と同程度

・生理食塩水は154mEq/L程度のナトリウム濃度なので、血清ナトリウム値よりも濃い目である


心因性多飲症しんいんせいたいんしょう

・病気ではなく、習慣的に水を多量に飲むこと

・結果として低ナトリウム血症になりがち


橋中心髄鞘崩壊症候群きょうちゅうしんずいしょうほうかいしょうこうぐん

・たとえばナトリウム濃度が110程度の場合にあわてて補正して、翌日に125、翌々日に140など、急速に正常化した時に発生する

脳幹部のうかんぶに障害が起こって手足に力が入らなくなる病態

・死亡に至ることが多いので、110 → 115 → 120 などと、ゆっくりナトリウム濃度を上げていかなくてはならない


クライアントのニーズ

・今回のクライアントは整形外科の担当医

・ニーズは、なるべく難しい事を考えずに無難にやり過ごしたい、というもの


本文の理解に役立てていただければ幸いです。


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