第153話 マンションを買わされる男
オレは自宅の電話を常時留守電にしている。
というのも、留守電にしないとたちまちマンションの勧誘電話がかかってくるからだ。
その昔。
医学部を卒業したばかりのオレに電話がかかってきた。
研修で勤務していた大学病院にだ。
当時ナイーブだったオレは真面目に対応した。
「大変申し訳ないのですが、今はまだマンション購入とか、そういう大それたことは考えておりませんので……」
そう言って受話器を置いたら
「ああいうのは、相手がしゃべっていても構わず切れ!」
それは人としてマズイんじゃないか、と思った。
が、実は上の先生が正しいことを悟ることになる。
その後、今までの人生でマンション勧誘の電話がかかったことは、数社合わせて1000回を超えているに違いない。
職場だけでなく、自宅にまでかかってくる。
だから、留守電にせざるを得なかった。
「こっちから連絡するからそちらの名前と電話番号を教えてもらえませんか」
そう言っても、相手は絶対に答えない。
「名前も知らない人間から何千万円もするものを買えというのでしょうか?」
そう尋ねると、「そうです」と言われた。
昼夜を問わず電話はかかって来る。
オレだけでなく、同僚全員が被害を受けた。
しまいには、実在する職員の名前をかたって電話をかけてくる。
もう無茶苦茶としか言いようがない。
この世の出来事とは思えないが、本当の話だ。
読者の中には病院に電話しても担当医に取り次いでもらえない経験をした人がいるかもしれない。
おそらく交換手がマンション業者と間違えてブロックしているのだろう。
それにしてもオレが卒業してウン十年。
業者の手口が全く変わっていないのには
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます