第66話 魔王軍諜報部隊
「魔王様。敵の眷族召喚、250体に到達しました」
「そうか、ご苦労。全ての眷族が呼びかけに答えられるようになったか?」
「はっ!確認済みです。我らの部隊は全員、戦列へ復帰可能です」
「よし、なら、後はあいつらを処理するだけだな」
「御意」
「俺のレベルがまだ低いからな…全部隊の復帰はまだ先になると思う。すまんな」
「全ては御心のままに」
「では呼ぼう…アルファゼロからゼータナインまで、纏めて召喚だ」
俺の側に控えるドルフの前に60もの魔法陣が現れる。
そこから出てくるのは皆、真っ黒な毛並みが艶めかしい影狼の群れだ。
影狼の群れを代表して、アルファゼロが俺に挨拶をする。
「我ら魔王軍諜報部隊、魔王様のお呼びにより、馳せ参じましてございます!」
「久しいな、お前達。早速だが、レオンに群がっている影狼達の処理を頼む」
「はっ!かしこまりました。散っ!」
その号令と共に、60体の影狼達が目の前から消える。
60体もの魔物の同時召喚をした俺のことを、まるで信じられないものを見たとばかりに、神崎会長が駆け寄ってくる。
「お、お主…今のは一体…」
「あれが、俺が率いる諜報部隊の一部です」
「そういうことを聞いておるのではない!あれだけの数を召喚して魔力は何ともないのか?」
「俺の場合は、魔物と特殊な契約をしているみたいでして、召喚や召喚維持コストはほとんどかからないんですよ」
「そんなことが…いや、お主が規格外なのは今更じゃな」
俺について、深く考えるのはやめた。ということだろうか?
まぁ、こればっかりは、自分が特殊なのは自覚しているし、あれこれ追究されるよりはマシだな。
と、神崎会長の呆れも混じった態度を受け入れるのだった。
暫くすると、レオンカイザーに群がっていた影狼の数が目に見えて減り始めた。
どうやら、俺の呼んだ影狼たちが、影の空間に引きずり込んで、倒しているらしい。
「明璃も咲希も、見てるだけでいいのか?」
「え?」
「敵の
「あ…」
「ああ、ちなみにレオンカイザーにも影狼達にも、
当たっても問題ない奴と当たらない奴らだからな。
「うん!わかった!」
どうやらやる気になったようだな。
咲希は、覚えたばかりの闘気を開放し、影狼の隙を狙っている。
明璃は気配察知と魔力感知を試しているようだな。
里奈も、そんな二人に向けて、
「お主はやらんのか?」
神崎会長が俺に話しかけてきた。
「俺は召喚士ですからね。魔物を戦わせているこの状況が最大効率ですよ」
「なるほどのぅ」
…
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…少しだけど、コツが掴めてきた気がするな」
「う〜…頭ん中、ぐちゃぐちゃになりそうだよ〜」
「わ、私もこの数の群れを相手にしたことはなかったです…」
三人共、随分と疲労しているようだな。里奈の回復の舞があっても、疲労の度合いのほうが上回ってるんだろう。まぁ、レベル的に格上の群れだったしな。
「もうそろそろか…」
レオンカイザーに群がる影狼の数も残すところ数匹という感じだ。
そんなことを考えていると、最後の1匹が影の中へ消えた。
「魔王様、こちらを…」
シュタっと、俺の側へ戻ってきたドルフから、黒い魔石…
「うむ。ご苦労」
「はっ!」
ドルフを労っていると、その眷族の影狼達も続々と集結してくる。俺の目の前には、影狼が落としたと思われる魔石が積み上げられた。
このことから、迷宮核を持たない魔物でも、俺の仲間と同種なら
「マオー様〜。ボクも頑張ったんだよ!褒めて褒めて〜」
少女姿のアルスも、俺の元へと駆け寄って抱きついてきた。
「よしよし。アルスもドルフのサポートお疲れさん!」
「えへへ〜」
そんな微笑ましい光景を見てか、戦いが、終わったことを感じた、咲希と明璃、里奈に神崎会長の4人も俺のいる場所へと集まってきた。
「これは…壮観じゃな」
「うん…こんなにたくさんの魔物が集まるなんて…」
「みんなおにぃの仲間なんでしょ?」
「ほんとですね…スライムと戦うのがやっとだったのが、つい先日の事だなんて、これを見たら誰も信じないと思いますよ」
4人がそんな感想を抱くのも仕方ないだろう。
今、俺の側にはドルフが控え、傍らにはアルスが抱きついている。
俺の眼前には60体の影狼たちが整列し、行儀よく座っている。尻尾がブンブンと振れているのは、久しぶりに主である俺の命令を果たせたことが嬉しいのだろう。そして、それらを見下ろすように最後尾には腕を組んだレオンカイザーが佇んでいる。
みんなはこの数の魔物を従えていることに驚いているようだが、この程度は魔王軍のほんの一角に過ぎないのにな…いつか全軍揃った魔王軍を見せてやりたいものだ。
俺は、今日戦ってくれた仲間達を労いながら、順に送還していく。
勢ぞろいしていた魔物達が消えたことを確認し、宣言する。
「さて、これでこのダンジョンは活動を停止したはずだ」
「おぉ!そうか…そうか!」
俺の言葉を聞いて、神崎会長は念願叶ったと言わんばかりに、感極まったのか、涙を流している。
「レベル70を超える、魔物の群れ、数百匹の討伐を果たしたんだ。レベルアップも期待していいぞ。」
「あ、そうか。そうだね!」
「うん。後でゆっくり、確認してみるよ」
「わ、私も、なんだか皆さんのおこぼれをもらったみたいで申し訳ないですけど…」
「里奈、パーティー組んでるんだから、そういうのは気にしなくていいよ。俺が最初に手伝ってもらったときだって、みんなのおこぼれを貰ってたようなもんだしな」
「ありがとうございます!なら、素直にレベルアップを喜ばせてもらいますね!」
申し訳そうな顔から一転して、いい笑顔を見せてくれた。
あれ?そういえば…
「あの…神崎会長…俺たちはこのダンジョンの表ボスを倒してないんですけど、これって試験通りますかね?」
「何を言っておるか!それ以上の成果を叩き出しておるくせに!これで試験が通らないなどと言われたら、この国にAランク冒険者など一人もおらんわ!」
すごい剣幕の神崎会長にたじろいだが、どうやら試験的には問題なさそうなので、安心した。
「そうじゃ、あの迷宮核を儂に預からせて貰えんか?」
「どうしてですか?」
「このAランクダンジョンが活動を停止したことは、すぐにギルドの調査でわかるじゃろう。その時に、お主の功績であることを発表する。その証拠として、迷宮核を使おうと思ってな…」
「そういうことですか…一つだけ約束してください。この迷宮核に関しては、まだ分かっていないことの方が多いんです。破壊したり、利用したり、公開する以外のことには絶対に使わないでください」
「わかった…約束しよう」
正直、どこまで約束を守ってもらえるかはわからないが。人は欲深い生き物だからな…魔力の運用に関して他の追随を許さないルーファスがいてくれたら、もっと詳しいことがわかると思うんだが…
まぁ、そこは会長を信じるしかないな。
さて、それじゃ、ステータスを確認するとしますか。
「ステータスオープン」
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