第134話 ギアス荒地
(フェイ視点)
【ギアス荒地】
(これは中々大変だな……)
ギアス荒地に足を踏み入れて一時間。俺はこの場所の異常さを実感していた。
(気候の影響がここまで大きいとは……)
勿論、気候が自分達の体調に重大な影響を及ぼすことは分かっている。そして、それに対する対策が重要なことも。暑さや寒さを舐めているようでは長生き出来るわけがない。
(だが、高いパラメーターを得たことで少し調子に乗っていたかもしれないな)
心の何処かでは“まあ、大丈夫だろう”と思っていたのだと思う。だが、ギアス荒地の暑さは予想以上に俺の体力を削っていた。
“流石マスターです。普通はこんな気候では前へ進むことさえできません”
そうなのか?
(クロードさんはともかく、リィナやレイアも問題ないように見えるけど)
“皆そろそろ限界でしょう。この辺りで休憩にしましょう”
(分かった)
と応えて号令をかける。が、歩いても座っても暑さは同じ。あまり休まらないんじゃ……
(マスター、〔サランウォール〕をお願いします)
〔サランウォール〕? 敵か!?
(違うぞ、マスター! 〔サランウォール〕で屋根と床を作るのじゃ。そうすれば少しは暑さもマシじゃろうて)
なるほど!
「〔サランウォール〕!」
俺がスキルを発動して即席の屋根と床を作り出した。
「ふう……助かったわ、フェイ!」
「ありがとう、フェイ兄!」
二人の顔を見るにやはり限界が近かったようだ。
(ミアの見立ては凄いな……)
“そんな……光栄です”
(ミアの言葉がなかったら休もうと思えなかったし、助かったよ)
いや、自分のことしか考えてなかったな。マジで。
“ほら、マスターもこう言っとるじゃろ。もう少し自信を持て”
あ、ネアか。何か最近フツーに念話に入ってくるな。
“そんな! こんな程度ではまだまだ……”
いやいや、そんなに思いつめなくても……
“そんな風に自分を追い詰めてどうするんじゃ。自分を責めても良いことは一つもないぞ”
おっ、良いこと言うな、ネア!
“ううう……悪魔の甘言”
“誰が悪魔じゃ! そなたの力で悪魔で無くなったのじゃろうが!”
あ、そうなんだ。
(というか、ネアは今、どういう存在なんだ?)
悪魔でなくても、人間ではない。ましてや魔物でもないとなると………
「あの、フェイ……」
レイアか。
「どうかしたか?」
「この天井と床、嬉しいんだけど、目立たないかしら。ここはほとんど遮るものがない荒地だし、色も」
ああ、確かに。でも……
「大丈夫ですよ、レイアさん。この天井と床には魔を寄せ付けない聖なる力を感じます。多分魔物は近づこうともしないはずです」
リィナの言う通りなのだ。聖獣メルヴィルから授かったこのスキルは浄化の力を持つ塩で壁を作る力。最も意外と形の自由度は高い──ただし、形をいじるには集中が必要──からこうやって即席の休憩所を作ったりもできる。
(メルヴィルさんが海を守っていることを考えたらこの力にも納得できるような気がするな)
まあ、全然関係ないかもだけど……
「聖獣メルヴィルか……凄い力を持った方なのだろうな。一度お会いしたいものだな」
「機会があれば紹介しますよ」
実はクロードさんはメルヴィルさんと言葉は交わしている。海のあるところならメルヴィルさんの魔力で交信が出来るのだ。
(これもメルヴィルさんからスキルを貰ったら出来ることらしいんだけど)
まあ、詳しいことは分からないが……
「もう少し休憩したら出発しようと思うんだけど、大丈夫か?」
「うん、大丈夫!」
「勿論よ!」
「ああ、そうしよう」
良かった。あ、水分補給も忘れないようにしないとな。
※
ドッゴォォーン!
ミアが察知した居場所に遠距離攻撃を叩き込むと、地中から怒った魔物から飛び出してきた。
(何度見ても気持ち悪いな)
地中から現れたのはワームと言われるこのギアス荒地特有の魔物。見た目は蛇に似ているが、目はないし、体にも鱗はない。
(だが、油断しないようにしないと!)
見た目は気持ち悪いが、戦闘力は確かなもの。何せ、バカでかい口でキャラバンを丸ごと飲み込むことだってあるんだからな。でも……
「〔七光壁〕!」
ガツン!
ワームの突進をリィナの光壁が止めて……
「〔高速連撃〕!」
「〔龍撃剣〕!」
レイアとクロードさんのスキルは攻撃が急所を斬り伏せればもう虫の息。
“マスター、止めを!”
よし! じゃあ……
「〔サランストリーム〕!」
ザバーン!
聖なる水流がワームの体を流し、溶かす。ワームは水が苦手らしく、聖属性と水属性を持つ〔サランストリーム〕は効果抜群なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます