第118話 協力と危機

「実は私達とは別の方向から魔物達を倒している集団があるのが分かったの」


「そうなのか!?」


 一体どうやって……冒険者はほとんどギルドに集まってるのに。


「一人の冒険者が市民から志願者を募って指揮してるみたい。それが誰なのかはわからないけど……」


 一体誰が?


「ただ、あのイーサンって人じゃないみたい。逆に馬車馬みたいに働かされてるって」


 あのイーサンを従える!? 只者じゃないな。

 

「だから、作戦を変えれば思ったよりも大部分早く何とかなるかも。例えば……」


 俺はリィナの指示を聞くと、ミアと合流し、指示された場所にいる幻と位置を交換した!


「やっぱり、アリステッド男爵だ!」


 ん? 近くに誰かいるのか?


「やっぱり噂は本当だったんだな!」


「ああ! アリステッド男爵がオルタシュを守るために戦ってるって!」


 住民っぽいな。まあ、これだけ幻を展開していれば、噂にもなるか。


「勿論だ。それよりこの辺りには魔物がある。今片付けるから安全なところに!」


 そう言うと、俺はリィナから聞いたポイントへ行くと、スキルで魔物を殲滅した。


「おおっ! 流石アリステッド男爵!」

「俺達もやれることをしないと!」


 気持ちは嬉しいが、危険じゃないか?


(いや、待てよ……)


 俺は一度冒険者ギルドにいる幻と位置を入れ替え、リィナに確認してから彼らに話しかけた。


「魔物と戦うのは私達冒険者の仕事だ。だが、君達には我々のサポートをして欲しいんだが……」


「おお、是非!」 


「何でも言ってください!」


 俺はリィナから聞いた通りのことを住民達に話し始めた。





(イベル視点)



(小賢しい真似を……)


 当初は数の暴力で押していたのだが、奴らバリケードを作ってこちらの行動を制限し始めやがった!


(こんな組織的な戦い方を指示できる奴……何者だ?)


 バリケードのせいで幻体達は次第に包囲されつつある。包囲されてしまうと外縁にいる奴しか戦うことが出来ず、数を活かせないのだ。何せ知能が低いからな……


(せめて幻体に遠距離攻撃をする力があればな……)


 くそ……そもそも組織だった動きを考える暇もないくらい速攻で壊滅させるつもりだったのだが、アリステッド男爵め……


(一体どうやって幻体をあんなスピードで倒してるんだよ!)


 奴は索敵や移動にほとんど時間をかけずにひらすら幻体を潰しているのだ。ありえないだろ、そんなこと!


(しかも指揮官を倒せば部下が消えるという欠点がばれるのが早過ぎる……)


 最初に指揮官がやられた場所では何者かが集団で戦い始めた上、次第にその数を増している。この動きも非常に厄介だ。


(何か手を打たないと……)


 くそっ……どうしたら。俺の部下を幻体を生み出している魔導具から出して戦わせたいが、俺の痕跡を残すわけにはいかないし……


(いや待てよ。皆殺しにしてしまえば証拠なんて残らないな)


 一晩で壊滅したと知られれば人目を引くだろうが、オルタシュは水上都市。水に沈めてしまえば後で調べようもない。


(フッ……我ながら冴えてるぜ)


 フフフ、奴がアリステッド男爵の仮面を剥がすのが楽しみだぜ。


(さて、奴に指示を出さないないとな……)


 ここで使い潰すことになるとは思わなかったが、まあいい。代わりはいくらでもいる。




(アリステッド男爵<フェイ>視点)



(……上手く行ってるみたいだな)


 どんどん戦いが楽になっていく。リィナの作戦勝ちだな。


(それにイーサンに指揮を出してる冒険者だ。こっちの言うことは聞いてくれないが、レイアが上手く誘導してくれたから利用できた)


 利用というと聞こえが悪いが、奴らもこの妙な魔物を倒したいんだろうから勘弁してもらおう。


(後は油断せずに数を減らしていくだけ……)


 奴らは今、オルタシュの中心にある広場とそこにつながる道に押し込められつつある。勿論、広場につながる道は多数あるのだが、余計な道は住民のみんながバリケードで塞いでくれている。


(みんなの協力のおかげだな)


 そんなことを考えつつも幻と位置を入れ替えながら戦っていたのだが……


 フッ!


 今まで戦っていた魔物達が急に姿を消した!


「え?」「何だ?」


 戦っていた冒険者達が驚いた声を上げる。当たり前だ。急に敵が消えたのだから。


「もしかして……勝ったのか!?」


 誰かがそう言ったその時、急に地面が揺れ始めた!


「何だ!?」 「地震か?」


 オルタシュで地震? そんな馬鹿な!


(ん? あれは……!?)


 俺の視界に映ったのは……

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