第111話 魔将星

(イベル視点)


 魔将星による定例の報告回。いつもつまらないものだが、今回は今まで以上につまらない。何故なら……


「イベル、どうしたんだ? 立て続けに失敗だなんてお前らしくないな」


 くそっ……ユベルか。馬鹿にしやがって!


「どうした? 何か面白い話でもあるのか?」


 他の奴らも騒ぎ出したな……くそったれが!


「いや、おかしいことじゃないけどな。最近、イビルの計画が失敗続きだからな。不調なのかと心配になってるだけだ」


 何が心配だ! テメーはただおちょくりたいだけだろ!


「確かにそれは心配だな……しかし、我ら魔将星の邪魔になるような存在でもいるというのか?」


 コールめ……馬鹿な。魔王様から既存の種を超越した力を与えられた俺達の邪魔を出来る存在なんているわけがないだろうが! 相変わらず嫌味ったらしい奴だ!


「いや……ちょっと歯車が狂っただけだ」


 そうだ。たまたま歯車が狂っただけ。計画に支障はない。


「だが、少し計画が遅れているのは事実だな。まあ、大した差ではないが」


 くっ……確かに。計画ではガイザルック王国とサンマーア王国が戦争をしてなきゃいけないし、オルタシュは滅んでなきゃいけないのだが、そのどちらも達成出来てはないない……


(……アリステッド男爵め!)


 大した力もないくせに目障りな野郎だ!


(今のうちに潰しておくか……)


 ただ、目立つことは避けなければならないからな……どうするか


(……アレを使うか)




(フェイ視点)


【水上都市オルタシュ 冒険者ギルド】



「お手柄だったね、フェイくん」


 定時連絡の際に大王烏賊(クラーケン)の討伐について報告すると、ルーカスさんはそう言って褒めてくれた。


「いや、皆の力です。リィナとレイアが船を守ってくれなければ勝てなかったと思います」


「勿論、二人も凄い働きだとも。大王烏賊(クラーケン)の攻撃を防ぐなんてなかなか出来ることじゃない。だが、だからといって君の働きを過小評価することは出来ないな」


「そうだよ、フェイ兄! 大王烏賊(クラーケン)に近づいて足を次々に落としていくとことか凄かったよ!」


「私は大王烏賊(クラーケン)に接近していくときが見事だったと思うわ。ミアの力で足場を作れるとは言え、よくあのスピードで出来たわね……」


 うーん、どっちもミアのおかげなんだが……


“マスターだからこそ出来たことですよ。それに私の力はマスターの力です”


 そう言われると返す言葉がないが、何かチヤホヤされすぎじゃないかなあ、俺は。


「ふふふ……謙虚なのね」


 クラウディアさんまで……


「まあ、それはひとまず置いておこうか。まだまだ話したいことがあるが、話せる時間は限られてるからね」


 この魔道具は距離に応じて魔力を消費する。俺も協力しているとはいえ、長くは保たないのだ。


「ネアの仲間の行き先だが……以前聞いた場所から移動していないのかな?」


 ボンッ!


 聖剣フェリドゥーンが人化し、ミアの姿が現れる。が、中身はネアだ。


「ああ。妾の同胞は移動しておらん。言われた通りここのギルド長から地図を貰って場所を探ってみたが、おそらく大地の裂け目という場所じゃろうな」


「大地の裂け目か……厄介な場所だな」


 ルーカスさんが顔をしかめる。いつも柔和な雰囲気を崩さないルーカスさんがこんな顔をするなんてよほど厄介な場所なんだろうな……


「お父さん、大地の裂け目ってどんな場所なの?」


 リィナがそう聞くと、ルーカスさんは説明してくれるのだが……言いにくそうだな。


「大地の裂け目は瘴気が渦巻く厄介な場所だ。しかも、強い魔物がいる上に起伏がないから身を隠すのが難しいギアス荒地の中心にあるんだ」


 なっ……


「加えて、ギアス荒地は広大な上に街がない。まあ、フェイくんには〔アイテムボックス+〕があるからまだ対処しやすいかもしれないが、休む場所がないというのはな……」


 まあ、そんな場所じゃ誰も住んでないか。


「じゃあ、人はいないってこと?」


「いや、岩塩を取って暮らしている遊牧民がいる。土中の塩分濃度の高さ故に農地に向かないのもギアス荒地の特色だ」


 う〜む。厄介な場所だな。


「まあ、対策はこちらで考えておくから心配はいらない。まずはとにかくゆっくり休んでくれ」

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