第84話 修練を欠かさぬ男、アバロン
【リーマス冒険者ギルド 玄関】
今日もいつも通り掃除。だが、やる気は格段に違う。何故なら自分の鍛錬を行う場になったからだ。
(紐状にしたオーラで雑巾絞り……出来るか?)
部屋に帰った後に色々試した結果、オーラの形を変化させることは比較的簡単に出来た。まあ、俺にとって簡単だっただけで、凡人にとっては困難だったかもしれんが。だが……
(何かをしながらイメージを保つのが難しいな)
オーラの形を変えるためにはイメージが重要。そして、形を保ち続けるにはそれを維持し続けなきゃいけない。これ自体は問題ないのたが、何かをしながらとなれば話は別だ。二つのものに意識を向け続けることはかなり難しい。
(だが、戦闘にオーラを使おうとすれば、これが出来なきゃな……)
だから、掃除も訓練の場となり得るわけだ。おかげで、妄想内でジーナにお仕置きする時間もない。
「おい、見ろよ。今日もあいつ……」
「やめろよ、聞こえるぞ」
新人か。本当に下らないな……
「あなた達、最近ギルドに登録した『三本の剣』ね。入り口で立ち止まっていると気の荒い冒険者に捕まるわよ」
「ジ、ジーナさん!」
俺を見て得意げにピーチクパーチク言っていた奴らは急に姿勢を正すと、ジーナに謝りながらクエストボードへと向かった。
「いい仕事ぶりですね、アバロンさん」
俺が掃除した場所をジーナが満足そうに点検する。珍しいな、こいつが俺を褒めるなんて。
「真面目にやってくれたら良いんですよ、アバロンさん。分かって貰えて嬉しいです」
そう言うとジーナはにっこりと微笑み、カウンターへと向かっていった。
(まあ掃除がついでなのに変わりはないが……)
オーラ操作を練習しついでにしていたら、綺麗になっただけだ。今までも筋トレ代わりに重りをつけてやってたしな。
(それにしてもジーナは人気だな)
俺に向けて見せた笑顔に未だに見惚れている奴がちらほらいる。
(まあ、ジーナが美人なのは認めるが……)
正直、笑顔よりも泣き顔がみたいな。あのクールな仮面を無理矢理引っ剥がしてやりたい……
“ア、アバロンさん……”
またもやミスをしたジーナ。仕方ない。お仕置きをせざるをえないのだが、早くも半泣きなのだ。
(この間のお仕置きがよっぽど堪えたか……)
水鉄砲で下着を濡らした程度じゃないか。まあ、着替えは禁じたからあれから不快な思いはしたかもしれないが。
(考えるとまあ、確かにちょっと俺もテンションが上がっちまったかな)
デリケートゾーンに軽く突っ込んで発射……はやりすぎたか? まあ、次の日も泣き腫らした顔をしてたな。
(勿論、そう言う時は用がなくても何度も呼び出すんだが……)
数日間、屈辱に歪むジーナの表情をたっぷり楽しませて貰ったぜ! グフフ!
“心配するな。今日は軽めにしてやる”
“ホ、ホントですか!?”
見るからにホッとした顔になるジーナ。グフフ、ここからの絶望に歪んでいく落差がたまらないな。
“今日はこれだ!”
俺は机の間にロープを張り、それを跨ぐようにジーナに命じた。
“あの……アバロンさん?”
不安そうな顔で俺の方を向くジーナ。よしよし、良いぞ!
“簡単だ。その状態で腰を前後に動かすだけだ”
“そんな! アバロンさん話が違──っ!”
俺が引き出しからあの鉄砲を出すと、ジーナは恐怖に顔を引きつらせた。
“嫌なら──”
“やります! やりますから!”
ジーナは恐る恐る腰を動かし始めた……
“ウッ………アァッ”
敏感な場所に当たらないように慎重に腰を動かすジーナだが、ロープには滑る液体が塗ってあるから滑ってしまい……クククッ、いいざまだ。
(けど、刺激が足りないな……)
その時、俺は良いことを思いついた。俺はジーナのスカートにそっと水鉄砲を差し入れ──
「なあ、おい。みたか」
近くの冒険者が二人立ち話をしている。装備からしていいとこD級ってとこか。
「ああ、『紅獅子』が初めてクエストに出発したとこだろ」
『紅蜥蜴』と『金獅子』の生き残りで結成されたパーティーが『紅獅子』だ。何でも最近高ランク任務をこなしていた冒険者がいなくなったため、ギルドの要請で急遽結成されたらしい。
「だけど、この状態で緊急の高ランククエストが出たらやばいな。今、ギルドにはCランクの冒険者パーティーが一組しかいないしな」
クククッ、まあプレートがないだけで俺はCランクの力を持っているがな。
(アーチ、エスメラルダ、バルザスはD級で、Cランクパーティー、『白銀の翼』として行動していたからC級として扱われていただけだが、俺は違う)
それにしても……高ランクパーティーが一度にクエストに出ているなんてな。知らなかったぜ。
「おいおい、この間緊急クエストがあったばかりだぜ? 厄介なことが次々に起こるわけがないじゃないか」
まあ、確かにな。
だが、数日後、俺はそれがただの願望でしかないことを思い知るのだった……
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