トップランカーになったセカンドキャラ ～奪われたアカウントを乗っ取り野郎と合わせてぶっ潰す！～

１２４．直接対決

「それがお前本来のアカウントなんだろう？」

　俺がそう言い放つと、百弥は何も言わずに武器を手に取った。

「……そうか。やろうってんだな？」

「俺が負けるはずがない！　そうだ、さっきのだって俺がやっていれば！」

「なら、やろうか。いいぜ？　俺はこれでもさっきのゴールドとやって弱っているが、お前相手ならいいハンデだ」

「き、貴様ああああっ！」

「いいや、ハンデにもならないか。なんなら武器だけの装備にして防具は外してやろうか？」

「こ、殺してやる！」

　百弥は走りながら槍を突き出してきたが、なんの変哲もないただの突きで、スキルが使われている形跡もなし。

「こんなものが当たるわけないだろう。お前、ワンアースを舐めているのか？」

「はっ！　こんなもの、ただのゲームだろうが！」

「……なんだと？」

「それなのにそこまでムキになるとか、バカのやることだろう！」

「それならどうしてゴールドのアカウントを乗っ取った？　バカのやるゲームをお前がやる必要はないんじゃないか？」

「俺ならゴールドをより効率よく運用することができたんだ！　それを貴様が邪魔したんだろう！」

　……効率よく、運用だと？

「お前は、ワンアースをなんだと思っているんだ？」

「そんなもの決まっているだろうが！　世界中にあるゲームの中のたった一つ、それ以上でも以下でもない！　それなのに貴様は無駄にしがみつきやがって！　俺は天童寺百弥！　天童寺財閥の御曹司なんだ――ぐはっ!?」

　あまりにイライラしてしまい、俺は気づけば全力で百弥の顔面に拳をめり込ませていた。

　そこまで鍛えていないはずの筋力でも吹き飛ぶほど、百弥の操作技術は拙いものだった。

「うぐぐ……き、貴様ああああっ！」

「口で言うのは簡単だよなあ、百弥！　ただ、今のお前は実力があるということも示さなきゃならない！　天童寺財閥の御曹司様が、どこの誰とも知れない一般人に負けるなんざあ、恥も恥だからなあ！」

「絶対にぶっ殺す！　俺が勝てばお前は消えろ！　もうここに現れるな！　何を言ったところで、俺がゴールドなんだ！」

　運営が乗っ取りを認めたというのに、こいつは何を言っているのか。

　それとも現実が見えていないのか、自分なら何をしても許されると思っているのか。それともまだ運営を動かせると思い込んでいるのか。

　とはいえ――これで全ての準備が整った。

『――アカウント、レヴォからは了承をもらっていたアカウント削除を懸けた決闘を、アカウント、フェゴールが了承しました。これより、レヴォＶＳフェゴールのアカウント削除を懸けた決闘を始めます』

「な、なんだと！　待て、そんなものは聞いていないぞ！」

「何を言っているんだ？　言ったじゃないか、俺が勝てばお前は消えろと。それが決闘の合図になったんだよ」

　こいつがどれだけのお金をフェゴールに掛けたかは分からない。もしかすると運営に携わっていた時に社員を使って不正に強くなっただけかもしれない。

　だが、それならそれで構わない。俺が達成したいもの、それは天童寺百弥を大勢の目の前で叩き潰すこと、ただそれだけなのだから。

「くそがっ！　いいぜ、やってやる！　てめぇのそのアカウントを、俺の勝利で削除してやるよ！」

「簡単に死んでくれるなよ？　俺もお前をいたぶるのを楽しみたいからな」

「たかがレベル１２０がいい気になるなよ？　このアカウントはレベル２００！　貴様なんぞ圧倒してやる！」

　おいおい。こいつ、さっきまでの試合を何も見ていなかったのか？

「言っておくぞ？　俺はレベル２５０オーバーのゴールドを倒したんだ。それが意味すること、分かって言っているのか？」

「それは代行の腕が悪かったからだろう？　だが、俺は違う！　俺は誰よりも強い人間なんだ！」

　何やら言っているが、その間にもカウントダウンは進んでいる。

　それに気づいているのかいないのか、百弥は武器を構えているものの隙ばかりが目立っている。

　誘っているのか、それとも本物のバカなのか。

　……まあ、攻撃してみたら分かるか。

「そもそも貴様のような人間が俺に立てつこうだなんて、その時点で間違い――だ？」

　……おいおい、ただのバカかよ。

　フェゴールの首がゲームとはいえ、宙を舞ってしまった。