52.協力関係?
最初に攻撃を仕掛けてきたのはボーンヘッドギルドのギルメンたちだった。
幹部でもない、単なるギルメンの実力はそこまで高くないようで、動きも緩慢だし俺にとってはスローモーションに見えてしまう。
回避しては短剣を振り抜きダメージを与えているのだが、まさか弱点に命中させて一撃で死んでしまうとは思わなかった。
それを繰り返しているとボーンヘッドギルドの数は段々と少なくなっていき、気づけばデスハンドと幹部が数人残るだけになっていた。
「おいおい、こんなに弱かったのか、お前たちは?」
「……て、てめぇ! いつの間にそんな強くなりやがった!」
「おれは普通にレベル上げをしていただけだよ。……いや、色々とクエストをこなしてはいたか?」
ガルフでの自動生成クエストは予想外だったし、あそこで手に入れた暗黒竜鱗の仮面がこれだけの実力差をつけるに至ったことは間違いない。
だからといってこいつらに教えてやる義理はないし、そもそも自動生成クエストだから同じクエストが発生することはないので伝えても意味はないんだけどな。
「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか」
「なんだと?」
「お前たちだけでもいいぜ? 俺と手を組むか、否か。もしも拒否するなら、お前たちも死んでいった奴らと同じ運命をたどることになるけどな」
「……ちっ! 選択肢なんてねぇじゃねぇか」
「そうか? 二択だと思ったんだがなぁ」
「うるせえっ! それで、俺たちは何をしたらいいんだ?」
「そんな! ギルマス!」
俺の予想外にデスハンドはあっさりと手を組むことを認めてくれた。
これにはコープスたち幹部全員が異を唱えており、こんな状態で役に立つのかと思わなくはない。
「なら聞くぞ、てめぇら。こいつを出し抜いてこの場から逃げることができると思っているのか?」
「そ、それは……」
「俺たちはすでに大半のギルメンを失っている。このまま普通にイベントを続けても上位入賞は不可能だ。それなら、多少でも可能性がある方に身を振るのが当たり前じゃねぇのか? 今日までの時間を無駄にしたいのか? あぁん?」
今回のイベントは上位1万位までに入れば多少なり報酬を手にすることができる。
せっかく参加するのであれば何かしら得るものが欲しい、ということだろう。
「お前たちは中間発表の時には何位だったんだ?」
「……3万位台だ」
「なんだ、まだまだじゃないか」
「う、うるせぇな! それもてめぇのせいだからな!」
「俺のせいだって?」
「てめぇが変な動画をアップしたせいで、多くのギルメンが脱退したんだよ! そうじゃなかったら1万位以内も余裕だったんだ!」
んなこと言われても、絶対に自分たちの行いが悪かったせいだろうに。
「それなら聞くが、てめぇは何位なんだよ! ってか、ギルメンはどうした!」
「俺は一人ギルドだよ。中間の時は8万台だったか」
「はっ! てめぇの方が格下じゃねぇかよ!」
「その時はな。今のポイントを聞かせろよ? お前たちより上な自信はあるぜ?」
一回目の中間発表の時までは上位を狙うつもりなんてさらさらなかったが、今は違う。
ゴールドギルドを1000位以内から落とすだけではなく、俺が1位をかっさらうつもりでいるんだからな。
「聞いて驚くんじゃねぇぞ? 俺たちのポイントは――6万5700ポイントだ!」
「……なんだ、そんなもんか」
「なんだと!? だったらてめぇは何ポイントなんだよ!」
「俺か? ちょっと待ってろよ」
そういえば、深緑の騎士を狩るのに集中し過ぎてポイントの確認をすっかり忘れていたな。
俺はイベントページを開いてDRギルドのポイントを確認する。
「……なんだ、目標達成しているじゃないか」
「おい、さっさと教えやがれ! 何ポイントなんだ!」
「俺のギルドは――13万越えだな」
「……はあ?」
「だから、13万越えだって」
……何も言えなくなりやがったな、こいつ。
「恐らくだが、今回のイベントでは10万以上のポイントを稼ぐことができれば1万位以内には入れるだろう。お前らならそれもできると思うが……ギルメン、減っちまったからなぁ?」
「……く、クソがっ!」
「おいおい、お前たちから仕掛けてきたんだから自業自得だろう? どうだ、俺と手を組めばモンスターを弱らせてお前たちに狩らせることもできるぞ? だが、俺の目的を達成してからになるけどな」
「……なら、さっさと言いやがれ。目的ってのは何なんだ?」
今度は誰からも文句はなく、無言で俺に視線を向けてきている。
しかし、他のギルドの目もあるこの場所で口にするのは憚られるか。
「場所を移すぞ。ついてこい」
こうして俺は、一時的にボーンヘッドギルドと手を組むことになった。
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