#120 滅びの目覚め

 人を、人の意志を載せた赤い獣が鳴き叫ぶ。

 声は空間に反響し、地に吸い込まれていった。応えるように、地面が震動を始める。


 小さく、ひっかくようだった震動は瞬く間に規模を、強さを増してゆき。

 洞窟の地面を覆っていた蓋があちこちで開いてゆく。穴の奥から何ものかが一斉に這い出てくる。

 穢れの獣クレトヴァスティアだ。

 次々に、開いた穴から無数の獣が吐き出されてゆく。甲殻が擦れあう音が空間に満ちた。


 洞窟内が獣によって埋め尽くされるか思われた矢先、幻操獣騎ミスティックビーストが翅を開いて飛行を始めた。鳴き声は高さを変え、独特の調子を奏でる。


 幻操獣騎が外へとつながる洞窟へと向かうと、穢れの獣が続々と後に続いた。それらは完全に、幻操獣騎による支配下にある。


 獣が蠢く音に顔をしかめていたルーベル氏族の巨人たちは、ひととおり穢れの獣が出て行ったところで息をついた。


「フン、ようやくか。まったく時を無駄にしおって。王が待っている、我らもこれより急いでゆかねばならぬ。“獣”を止めるぞ、小王オベロン……」


 飛び立っていった穢れの獣を見送ったところで、彼はふと違和感を覚えた。

 詩が。音が続いているのだ。


 建物から流れてくる音は、穢れの獣が飛び去った後でも止まらず。どころかより音量を増していった。

 それはもはや空間を揺さぶり、圧力となって魔導師マーガを襲うほどだ。強烈な頭痛が彼を襲い思わず頭を押さえる。護衛の戦士たちもまともに立っていられず、ふらついていた。


「なにをしている、小王! 獣を……獣を早く、眠らせねば!!」


 詩は止むことなくひたすらに圧力を増し。もはや地響きを伴い始めるほどに達していた。

 いや、違う。実際に大地の揺れが混じっているのだ。巨人たちがついに膝をついた。


 血走った瞳で見上げる魔導師の目の前で、地面が裂けてゆく。建物はミシミシと音を立てて崩れ始め、大地が隆起を始めていた。

 ――洞窟そのものを破壊しながら、“何ものか”が浮き上がろうとしている。


「お、お前は……! 己が何を見ているか、わかっていようや!! このまま“獣”を、瞳開かせようというのか……!!」


 魔導師は愕然と、目の前で動き出しているものを見上げた。

 巨大な、あまりにも巨大な存在が動いている。舞い上がる土煙の中、数多くの眼が無感情に巨人たちを見下ろしていた。


 どこからともなく、小王の声が響いてくる。


「魔導師……いや、巨人族アストラガリよ。全ては手遅れなんだよねぇ。もはや“獣”の全ては、我が手中にある。貴様らの力など、どこにも必要なくなったのだ。いや残念!」


 心底からの恐怖が、魔導師の身体を這いあがっていった。目覚めてはならないものが、目覚めようとしている。それが何を引き起こすのか、彼はようく識っていた。


「なら……ぬ! “獣”を目覚めさせてはならぬ! 貴様、眼を違えたか! 奴の枷を解き放てば、小鬼族ゴブリンとて無事にはすまぬぞ!!」

「ははは! それはご心配痛み入る。だがなぁ、巨人よ。私がただお前たちの言うがままに従っていたと思うのかい? 確かにお前たちは我が父母の使い道を見つけ出した、うまくやっていたつもりだったのだろう。だがな、私は違うんだ。私は、使われるだけの存在ではない!!」


 大地を切り裂き、巨大な“肢”が現れる。

 それだけで巨人族を上回る大きさを持つ肢が、戦士の体をあっさりと叩き潰した。


「“獣”は我が手中にあるといった、その意味をまだ理解していないのかい!?」


 魔導師が立ち上がる。絶対なる存在を前にして、それでも抗うように魔法マギアをつむぎ。


「ならぬ、ならぬぅ! させぬぞぉっ!!」


 叫び、炎を放つ。だがそれは、振り回された肢によって簡単に消し散らされた。


「なぁに安心したまえよ、巨人。食らいつくされるのはお前たちだけ。お前たちはこれから餌となる。その様を、じっくりと眺めさせてもらうよ。遠慮はいらないさ。これまでのお礼、ほんの気持ちというヤツだからね」

「小王……! 貴様が見るは過ちだ。いずれその報いを受けることになろう……! “獣”は、お前ごときに操れるものでは……ッ!!」


 叫び声を遮って、魔導師を肢の一振りがあっさりと叩き潰した。

 あまりにも圧倒的すぎる。“獣”は巨人など歯牙にもかけず、さらに上昇を続けていた。洞窟の崩壊は加速してゆき、ついに巨体が天井を突き崩す。

 空間の全てが、降り注ぐ土の中に埋もれていった。


「ははははは……それも知っている。ようく知っているさ。だが関係ない」


 大地を引き裂く破壊の渦の中に、小王の哄笑が響く。


「その程度で私は止められない。時は訪れた、もはや沈黙に価値などなし! 私は、私は……全てを取り戻すのだ!!」


 ――上街。

 壁に囲まれた小鬼族の街はいま、崩壊のただなかにあった。大地は軋み道が割れ砕けてゆく。建物は次々に崩れ、幻獣騎士ミスティックナイトを整備するための工房までも土煙の中に飲まれていった。

 街の中央にあってもっとも背の高かった城もまた、呆気なく崩れてゆく。全てが瓦礫と粉塵へと化してゆき――。


 もうもうと立ち込める土煙の中に、長大な肢が突き出した。

 分厚い土煙の覆いを貫いて、蠢くものが在る。虹色の輝きが明滅し、“獣”は浮上を続けていた。

 瓦礫と土砂が際限なく零れ落ち、轟音を周囲に響かせ続けている。


 街の存在と引き換えに、大地という殻を割って“獣”は地上へと生まれ出でた。

 主の生誕を寿ぐように、空に蟠っていた穢れの獣が周囲に集まってくる。


 滝のように流れ落ちる土砂の圧壊音に合わさって、奇妙な詩は未だ鳴り響き続けている。鳴き声とも悲鳴ともつかぬ狂気の旋律。さらに穢れの獣たちの羽音が加わって、聞く者の正気を捻じ曲げるような曲が生み出される。


 やがて、土煙をたなびかせながら“獣”はゆっくりと空を進み始めた。目指すは西。巨人たちが問いを繰り広げる、決戦の地へと。


「ちょうど良いことにルーベル氏族と諸氏族、巨人どもがそろいもそろって殺し合っているんだ。問いなどと言っても所詮は野蛮の所業、ここは私たちが手を貸してあげねばなぁ。そうだ、死に絶えるまで問い続けるがいいさ!」


 “獣”の動きに従って、穢れの獣が一斉に移動をはじめる。滅びを呼ぶもの、穢れ撒くもの、死の顕現。腐食の魔獣たちが森の空を征く。


 空を蝕む獣の進軍を見送る者たちがいた。

 かつて上街と呼ばれていた場所から少し離れた場所、小高い丘の上に人々が集まっている。彼らは、上街に暮らしていた小鬼族だ。周囲には護衛についていると思しき、幻獣騎士の姿もあった。


 奇怪な旋律が遠ざかってゆくのを感じながら、彼らは口々に呟いていた。


「街が……なくなってしまった」

「ああ、これから我らはどのように生きてゆけばいいのか。本当にあれを動かす必要が、あったのだろうか」

「だが、このまま巨人に従っているわけにもいかない。小王様があれを飼いならしてくれねば、いずれ私たちが食われていたのだ」

「それに小王様は戦いに向かわれた。きっと“船”とともに戻ってきてくださる。それまでの辛抱だ……」


 期待があり不安がある。彼らはただ、小鬼族の未来を変えるという小王の言葉を信じることしかできなかった。


「あれは、なんだ……!?」


 それからしばらくして、彼らは気付いた。自らの頭上を越えてゆこうとする、何ものかがあることに。

 巨大な影が落ちる。影を生み出しているのは、風の音を響かせながら悠然と空を進む――船。


「おお! あれも、小王様の軍なのか」

「共に巨人族を倒しに向かうのか。いずれ我らもあれにのり、我らの世界に帰るのだ」


 彼らが見守る中、船は獣たちの進路を追って飛び去ってゆく。人々はいつまでも、西の空へと向けて祈り続けていたのだった。




 白色の死が満ち、巨人が血を吐き倒れる。

 ルーベル氏族と諸氏族連合軍による賢人の問いは、始まりの時とはまったく異なる様相を呈していた。今おこなわれているのは問いなどではない、穢れの獣による虐殺だ。


 体液弾が地上に降り注ぎ、炸裂する。揮発し拡散した瘴気が巨人たちを飲み込むたびに、転がる死骸が増えていった。

 極度の混乱のただなかに、声が響く。


「同胞たちよ! 我が言葉を見よ!!」

「……おお、王よ!」


 五眼位の偽王だ。彼が声を上げれば、ルーベル氏族の戦士たちはにわかに秩序を取り戻していた。

 偽王は生き残った巨人たちを見回し、目つきを歪める。諸氏族連合軍と同等以上の数がいた巨人たちは、すでに大きく数を減らしていた。


「聞け、同胞よ。小王めが、“獣”を動かしている。何を血迷ったか知れぬが、奴はあれを動かす術を覚えたということだ」

「なんということ。それでは王よ、まさか穢れの獣が我らを襲いしは!?」

「瞳に映るままである」


 怒りの声が上がるが、しかし事態は改善しない。

 偽王は空を飛び交う穢れの獣を、その背後にいる巨大な存在を睨んだ。


「小王め、うまく獣を従えているつもりなのだろう。しかしそんなものはまやかしだ。いずれ獣は完全なる目覚めを迎え、お前の支配から脱しよう。さすれば……大敵は目覚める。我らは再び苦難の時を見よう」

「何と愚かな……」


 呻きを上げた巨人たちは、ふと陽ざしが陰ったことに気付いて空を見上げた。

 あれほどやかましく暴れまわっていた穢れの獣たちは遠ざかり、彼らの頭上にはただ一体の存在がある。


「“獣”よ……」


 街そのものに匹敵するほどの、あまりにも巨大な躯体。楕円形の円盤状をしたそれは、ただ空にあるだけで圧倒的な存在感を醸し出していた。巨体に比べて小さな眼が、無機質に巨人を見下ろしている。


 なすすべなく見上げるルーベル氏族の巨人たちの耳に、聞き覚えのある声が届いた。


「ああ。そこにいたのかい、我が親愛なるルーベル氏族の王よ。お前にだけは、ちゃんと別れを言わないとと思っていたところだよ」

「小王……。“獣”を、目覚めさせるがどのような目を見るか。わかっていようや」


 “獣”が不気味に鳴動する。偽王の言葉はしっかりと届いたらしい。


「くはははは。ご心配に与りまこと重畳。だがね、結局のところ巨人族おまえたちは何も理解してはいないんだ。私たちは滅びなどしないさ、倒れるのは巨人だけ」


 その時、“獣”から奇怪な旋律が溢れだした。それは赤い獣を経由して周囲に広がる。すぐに、騒々しい蟲の羽音が周囲を満たした。

 空を汚すおぞましい魔獣の群れが、ルーベル氏族を取り囲んでいる。


「さぁ、お別れの時が来たよ。我がおおいなる友よ。もだえ苦しみながら、死ぬがいい」


 宣告と共に、穢れの獣がいっせいに巨人たちへと襲い掛かる。体液弾が雨のごとく降り注ぎ、地上を白い霧が包み込んでいった。


「ふぅ~。んん~~ん。素晴らしい、とても晴れやかな気分だ!」


 ルーベル氏族の巨人たちがいた場所は、霧にかすんで何も見えなくなっている。小王の伸びやかな声に続いて、穢れの獣が移動を始めた。


「さぁて、それでは本題だ」


 空の色を変える、獣たちの群れ。全てを蝕む死の行軍の前に、進み出るものが在る。


 巨大な帆を広げ、空を進む船。翼を広げた銀の鳳の紋章を掲げる、銀鳳騎士団旗艦“イズモ”だ。


 イズモが速度を緩めると、応じるように穢れの獣も動きを止めた。空の上で、船と獣が睨みあう。


「……小王オベロン。そこにいるのは、あなたなのですね」


 イズモより、声が響き渡る。

 船の先に在るのは、蟠る獣の群ればかり。しかし声は、そこに“人”の存在を確信しているようだった。

 果たして、獣の群れの最後方より答えが返ってくる。


「やぁ、これはこれはエルネスティ・エチェバルリア。ずいぶんと待たせてしまった、ようやく追いついたよ」


 イズモの船橋では、溜め息のような驚きが広がっていた。船員たちは何というべきか迷い、ためらっている。

 その中でただ一人、エルネスティは厳しい表情のまま空の向こうを睨み続けていた。


「本当に、あの魔獣どもを人が従えてるってのか!」


 親方ダーヴィドが呻くのも無理はない。フレメヴィーラ王国の人間にとって、魔獣とは戦うべき敵でしかない。それも穢れの獣ほど凶悪な魔獣を従えているなど、まるで悪夢のような事実であった。


「なるほど、彼は穢れの獣を押さえておくと言いました。それにはこのようなカラクリがあったわけですか」

「それで一体どうすんだよ、坊主!」

「さて。相手は人です。でしたらこれからの話し合い次第でしょう……」


 エルは小さく息を吐き。再び伝声管を手に取る。外部に向けた大型拡声器が起動した。


「まさか穢れの獣を従えてくるとは。正直に言って驚きました」

「ふふふ……幻繰獣騎ミスティックビースト、さ。小鬼族と呼ばれた我が父母が作り上げ、受け継いだもの。幻獣騎士などただの馬に過ぎない、これこそが私たちを森に生かした“力”なのだよ」


 エルは微かに目を細める。硝子窓の向こうから強烈な自負が吹きつけて来るようだ。巨人族に従いつつも腹で背いてきた、小鬼族のあり方が形を成している。

 彼が言葉に迷っている間に、獣たちはざわめきだしていた。


「ふうむ。まだそこに、巨人族が残っているじゃあないか。邪魔だなぁ、殺しつくしてしまおう。そして共に、西へ向かうんだ。我が父母の生まれし地へ。私たちが手を組めば、容易いことだ」

「……なるほど、事情は分かりました」


 地上には、諸氏族連合軍が残っている。第二中隊と、カエルレウス氏族もその中にいた。

 船橋の視線を受けながら、エルが考えていたのは僅かなこと。


「約束を守ります。小鬼族を、分かたれた同胞を。フレメヴィーラ王国へとご招待しましょう」

「ははは! うんうん、さすが。話が分かるじゃあないか!」


 船橋の中は、静まり返っていた。誰も、何も口を挟まない。その中でエルネスティは決然と、伝声管を握る手に力を込めた。


「しかしながら。穢れの獣を、そのように危険な存在を僕の故郷に招くわけにはいきません」

「…………なに?」


 空気が、変質する。


「僕にできうる限りの飛空船を用意し、皆を運びます。ですからその危険な獣は、ここで滅ぼしてしまいましょう」

「戯言はよしたまえ、エルネスティ君。これは、我が父母が遺した力。巨人族も、小鬼族も関係ない。全てを従える最高の力なのだよ」

「それがあなた方をここまで支えてきた。その事実は分かります……でも、それは魔獣。部品のひとつまで自らの手で生み出した機械ではありません。未来永劫、従っているという保証はないのですよ」


 羽音は変わらず空に広がっている。だが両者の間には、異様な沈黙が横たわっていた。

 十分な沈黙を挟んで、小王が答える。


「……いけないよ、エルネスティ君。遠き同胞たちと、私は手を取り合いたいと言っているというのに。君の態度はとてもよくない」

「それは申し訳ない。ですが何しろ僕たちは魔獣退治を専門にする騎士団。どうにも、それは受け付けられないのです」


 イズモの船橋では、船員たちが無言のまま配置についていた。いつでも動けるように準備を整えている。


「それは、それは仕方がない。分かり合えないとは大変に悲しいことだ。だからまぁ、仕方がないのだよ」


 “獣”から、音が流れ出す。あらゆる生命を穢すかのような、ねじくれた旋律が。


「少しばかり減らしてみれば、理解も素早くなることだろうね!? なぁに、滅ぼしはしない。船も、道案内も必要だ!!」


 小王の叫びが終わる前に、幻繰獣騎が動き出す。叫びに応じ、数多の穢れの獣が前進を再開した。


「銀鳳騎士団、迎撃を!!」

「イズモぉ! 全速で回頭しろぉ!!」


 エルが叫び、親方が続く。すでにイズモは帆翼ウイングセイルを畳み終えている、直後に最後尾に装備されたマギジェットスラスタが火を噴いた。推進器の出力に任せ、イズモの巨体が旋回してゆく。

 腹をみせたイズモへ向けて、穢れの獣が殺到した。


法撃戦仕様機ウィザードスタイル!! 全機、法撃始めてくださいっ!!」


 イズモの側面に並んだ法撃戦仕様機が、いっせいに魔導兵装シルエットアームズを構える。船が淡い発光に包まれ、直後に光の槍が伸びた。


 幻繰獣騎が、飛翔しながら叫び声を上げる。穢れの獣がそろって肢を曲げ、必殺の体液弾を浴びせかけ――。


 放たれた体液弾は、豪雨のごとき法弾によって迎え撃たれた。死と炎が飛び交い、衝突する。空にまだらな爆発が咲き乱れた。


「法撃はそのまま継続、全火力で穢れの獣を押し込みます!」


 イズモはゆっくりと前進しながら、魔力の大半をつぎ込んで法撃を続けた。単体で穢れの獣の群れに対抗しうる、その火力はかなり馬鹿げたものだ。


 しかし相手にも人の知恵がある。正面から押し込めないとみるや、穢れの獣は動きを変えた。いくらかの集団に分かれると、法弾幕を回り込み始めたのである。

 赤い幻繰獣騎が指示を叫ぶ。穢れの獣が追随し、小さな部隊を組んだ。そのまま法撃の炎を迂回して進み。


 突如、高速で飛来した槍によって撃ち貫かれた。


「おっとぉ! 船は狙わせねぇぜ!!」


 飛翔騎士である。銀鳳騎士団の戦力は飛空船だけではない。彼らは空を縦横に翔け、穢れの獣の動きを封じていた。




 空に広がる戦いを、巨人族が地上から見上げていた。

 咲き乱れる爆発が空を染め上げ、すぐに酸の雲が混ざってゆく。飛空船による強烈な法撃は未だ途切れず火線を描き続けていた。


「あれが、小鬼族同士の戦いなのか」

「なんという……。あれでは、我らとて……」


 未だかつて目にしたことのない、熾烈な戦い――戦争。

 相手が穢れの獣であるなど歯牙にもかけぬ。天翔ける騎士と船の姿が、数多ある瞳に焼き付けられる。


「目にしたか、皆」


 衝撃に震える巨人族のなか、一人の少女が動き出す。小魔導師は振り返り、口を開いた。


「……この問いは、我ら全ての未来を変えるだろう。百眼アルゴスがお示しになったのだ。皆、まなこを開いて見定めよ!」

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