第29話 Indigo Waltz
3人は青島食堂での食事を終えて寮に戻った。
渡部は俺たちの部屋に来て、工藤と一緒にパソコンでいろいろ検索している。
俺は、スマホの動画を見ながら、ヘッドホンをつけてギターの練習をはじめた。
工藤と渡部の会話は聞こえない。
工藤「うーん、この名前をサイニィ(CiNii、NII学術情報ナビゲータ)に入れると出てくるよな。」
渡部「あとこのGitHubのアカウントをしらべたらいろいろ出てくるわ。本業とは別なんじゃないか。でも趣味の領域を超越してるな。シングルボードコンピュータのコードとか。ドローンにラズパイ(Raspberry Pi:シングルボードコンピュータ)を乗せた時に参考にしたこと思い出した。このアカウントだわ」
工藤「あいつの親父は何者なんだ?」
渡部「作業着を着て、なんか髪も薄くなってきたオジサンにしか見えないんだよな。別人か?」
工藤「サイニィに載ってるこの論文・・そういえば・・・」
工藤は、俺の所に来て、耳につけているヘッドホンを取ってこういった。
「おい、橘、お前はロサンゼルスに住んでいたことがあると言っていたな。いつだ?」
なんだ?突然。
「たしか小学校中ごろから中学校の真ん中へんだな」(橘)
「住んでた街の名前を憶えているか?」(工藤)
「よく覚えてないんだよな。」(橘)
「近くにデカいサッカー場みたいなのなかったか?」(工藤)
「ああ。たしか近くにあったな」(橘)
「ロサンゼルスのパサディナという町じゃなかったか?」(工藤)
「ああ?確かにそんな名前だったような」(橘)
「おまえ、彼女のことばっか考えて、トイレでシコシコやってばっかりいるだろ。
脳みそが溶けるって都市伝説だと思ってたが、お前はホントに溶けて流れてるんじゃね?」
なにを言いやがるんだ、工藤め。
「親父さんのこと、ほんとに聞いてないのか。出た大学の名前とか」(工藤)
「長岡技術科学大学卒としか聞いてないけど」(橘)
「院を出て、就職しているみたいだけど、そのあと留学とかしてるんじゃないか?
」(工藤)
「ロサンゼルスに居た時は、いつも普段着で研究所みたいな場所にいくような素振りだったけど。てっきり会社関係の研究所だと思ってたけど」(橘)
「うーん、つける薬がないな、お前は」(工藤)
なにいいやがるんだ、コイツは。
そこで渡部が来てこういった。
「カルテックとか言ってなかったか?」(渡部)
「なんかそんなこと言ってたな。カルシウムの飲み物みたいなもんだと思ってたけど。なんだそれ?」(橘)
「ほんとつける薬がないな・笑」(工藤)
「カリフォルニア工科大学のことだよ。マサチューセッツ工科大学とならんで、世界トップの工科大学。超エリート。東大なんてもんじゃない」(渡部)
え?知らない・・
「親父さんの名前の論文がたくさん出てくるし」(工藤)
はい?!よく覚えていませんが、俺。
「高校時代に女の子と遊びほうけて、東大にいく『のーみそ』なんて無かった。と言ってたけど」(橘)
「たしかにアメリカの大学は日本の大学にくらべれば入試とかは難しくないとか言われるけど、研究成果とか考えると、相当なもんだな。特に半導体製造関係の論文がたくさんある」(渡部)
「ぜんぜん、そんな素振りなんて微塵もないし。俺のかあさんは上越市の病院の看護師で、かあさんの方が給料が良くて、親父はいつも小遣いが少なくて、尻に敷かれてるみたいだもんな」(橘)
「ホントに何も聞いてないのか?」(工藤)
「何にも」(橘)
「ホントに頭のいい奴は隠してるんだな」(渡部)
「星さんとの関係はなんかあるのか?」(橘)
「論文検索サイトにでてくるわけねーだろ、ボケナス」(工藤)
失敬なやつだな。
でもなんで親父は言わなかったんだろね、カリフォルニア工科大学か。
「それにな、GitHubのアカウントから見ても、なかなかのモノだな。コードの投稿数も多いし。それに、お前は親父のアカウントすらも知らんのかよ」(渡部)
「ラインくらいしか知らん」(橘)
「ホントにコキすぎて脳みそが溶けてるな、こいつ。お前ももっと勉強しろよ。それに早くプログラムを書け。彼女にフラれない程度に勉強しろと」(工藤、渡部)
それはそうとして、星さんの母の星夏美さんとの関係は何があったんだろ。
「プログラムはなんとか仕上げるけど、彼女とのギター練習はいいだろ」(橘)
「モテない奴に彼女が出来たんだから、邪魔するつもりもないけどな」(工藤)
一言余計だな、いつもお前は。
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