第60話


「あっちの2人は大丈夫だろうか」


エンゲルを撃破した俺は、次の生徒を探して森の中を練り歩いていた。


草木をかき分けて進みながら、システィとヴィクトリアのことを思う。


あの2人は、無事に生きているだろうか。


魔導祭に参加している生徒の大半が、2人よりも魔法に長けた上級生であるためかなり心配だ。


最終的な点数の集計は、撃破した生徒の数と、生き残ったチームメンバーの数で行われる。


チームメンバーが1人減るごとに、大幅な減点があるため、2人にはなんとしてでも生き残ってもらわなくては困る。


「…いや、うだうだ心配してても仕方がないな。信じよう。2人を信じて、俺はとにかく自分の役目をこなすだけだ」


俺は頭を振って、一旦2人のことをあたまから追い出す。


今はともかく自分に与えられた役目をこなすとしよう。


1人でも多くの生徒を撃破する。


それが俺にできる最大の貢献だ。


「む…?」


前方から戦闘の音。


誰かが戦っている。


「これは…」


漁夫の利を得られるかもしれない。


俺は戦闘音のする方に向かって足を早めるのだった。




「お…うさぎが一匹迷い込んできたな。ラッキー」


「こいつ1人か?」


「仲間はどうした?」


なるほど。


どうやらしてやられたらしい。


戦闘音のした方に来てみれば、そこでは一チーム三人の生徒が俺を万全の状態で待ち構えていた。


戦闘音は、戦っていると見せかけられるように彼らが意図的に作り出したものだったらしい。


俺は漁夫の利を得るためにここへきてまんまと炙り出されてしまったようだ。


「マジかぁ…」


罠に嵌められた俺はガックリと肩を落とす。


漁夫の利で最大六人の生徒を撃破できると思ったのに、これではたった三人しか狩ることが出来ないじゃないか。


「その制服、お前下級生だな」


「ははっ。お気の毒様。漁夫の利を得られると思ったか?」


「甘いぞ下級生。魔導祭は単に魔法の実力だけじゃなくて、オツムの出来も試されるのさ」


三人がニヤニヤ笑いながら魔法を放ってくる。


「手早くすませよう」


「「「なっ!?」」」


俺は三人の魔法を守護魔法で完璧に相殺し、戦いに身を投じていく…



「ったく…小賢しいことしやがって」


パンパンと服についた埃を払う。


「「「…」」」


俺を罠にかけやがった三人の上級生は……仲良く全員気絶して地面に寝転がっている。


「しかし…なるほどなぁ…こういうやり方もあるのか」


俺は彼らのとった戦略に少し感心していた。


全員が敵のバトルロワイヤル形式の魔導祭。


二チームの戦いに割り込む形で漁夫の利を狙う戦法が勝つための王道かと思ったのだが、しかし、それを逆に利用する事もできるのか。


戦闘中であると見せかけ、敵を誘い、待ち構えて撃破する。


漁夫の利を積極的に狙うチームに対してこの方法は非常に有効だろう。


「システィ、ヴィクトリア…マジで頼むぞ…」


こうなってくると本格的にあの2人が心配だ。


狡猾な上級生の罠にかからず、なんとか制限時間終了まで生き延びてくれればいいのだが…











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