第54話


「ではまず、魔導祭のルールを説明しますわ」


俺とシスティ、ヴィクトリアの三人で魔導祭に出ることになった日の放課後。


俺たちは学院の敷地内にある訓練場へと集まって作戦会議を開いていた。


まずは、ヴィクトリアが魔導祭のルールを俺とシスティに説明する。


「魔導祭は三人一組で挑む魔法戦で、バトルロワイヤル形式で行われるんですわ。出場資格は全学年の全生徒に与えられる。そして下級生だからといってハンデなどはない。つまり、本来は上級生が圧倒的に有利な催しなのですわ」


ヴィクトリア曰く、これまで行われてきた魔導祭のほとんどで上級生の組が優勝しており、まだ魔法戦の実力に乏しい下級生が優勝することなどほとんどないらしい。


「参加者は、帝都の端にある森林地帯にあつめられます。そしてそこで魔法戦を行い、他の組を撃破していく。1番多くの生徒を撃破したチームが勝ちとなりますわ」


「なるほど…」


「む、難しそうだね…混戦とかになると…」


視界が悪い森林地帯でのバトルロワイヤル。


面白そうだが、しかしかなり難しい戦いを強いられることも事実だ。


目の前のチームと戦ってきたら、漁夫の利の如く横槍が入る可能性なども考慮しなければならないからだ。


「とまぁ、ルールはこんなところですかね。あと付け加えるのでしたら……当日は森のいたるところに監視の魔道具が配置されており、戦いの映像が帝都で中継されること。それから森の各地に負傷者治療のための人員が配置されていること。本番に、魔道具や魔剣などのアイテムは持ち込めないこと、など覚えておいて欲しいですわ」


「ありがとう、ヴィクトリア」


簡潔にルールを説明してくれたヴィクトリアに俺は礼を言う。


魔導祭。


少し予想していた催しとは違うようだが……面白そうだ。


バトルロワイヤル形式なら、強い魔法使いと戦える機会も圧倒的に増えるだろうし。


「ルールは大体わかった。後は当日の作戦じゃないか?どうする?正攻法で挑むか?」


ヴィクトリアのおかげで俺もシスティも概要は把握できた。


次は当日にどのようにして戦うのか、作戦を立てる必要があるだろう。


「正攻法…三人で固まって行動するってことだよね…?わ、私たち…アリウスくんの足手まといにならないかな…」


システィが心配そうにそういった。


「実はすでに作戦も考えてありますの」


ヴィクトリアが自信ありげにそういった。


「へぇ、どんなのだ?」


「それはですね…」


ヴィクトリアがちょっと勿体ぶったようにいう。


「簡単に言うと、二手に分かれるのですわ」


「え、二手に…?バラバラで行動するってこと?」


聞き返すシスティにヴィクトリアが頷いた。


「アリウスは一人で、そして私とシスティは二人固まって行動するのですわ」


「え、えっと…それはどうして…?」


「はっきり申し上げて、私たち二人はアリウスにとって足枷でしかありませんわ。それなら別々に行動した方がいいと思うのですわ」


「いや…足枷とかでは…」


「同情なんていらないですわ。私は事実を言っているだけですの」


ヴィクトリアの言葉を否定しようとしたが、ピシャリと言い返されてしまう。


「た、確かに…そうかもね…」


システィがどこか遠い目をしながらヴィクトリアに同意する。


「アリウスははっきり言って私たちとは格が違う魔法使いですわ。上級生を数人同時に相手取っても簡単に勝ててしまうと思いますの。だから、アリウスには一人で行動してなるべく多くの生徒を仕留めてほしいのですわ」


「…」


俺はヴィクトリアの作戦を否定しようとしたが、しかし材料が見つからない。


確かにヴィクトリアの言い分は理にかなっていた。 

「その方が明らかに効率的ですわ。私たち三人で行動すると、アリウスは私とシスティを守らなくては行けなくなりますわ」


「確かに…そうだよね…私たちが近くにいると全力を出せないよね…あのダンジョンの時みたいな…」


システィが小声でボソッと何かを言った。


声が小さすぎて聞き取れない。


「制限時間内、私とシスティは二人で行動してとにかく撹乱と逃げに徹するのですわ。直接戦闘はなるべく避けて生き残る。生徒の討伐はアリウスに任せる。これが私が考えた作戦ですわ。何か異論は?」


「「…」」


俺からも、そしてシスティからも特に反論はなかった。


ヴィクトリアの作戦というのは、確かに優勝を第一目標としておいたときに最も合理的なものに思えたからだ。


「異論がないようでしたら、本番はこれで行きたいのですけれど…」


「わ、私は賛成…!問題は…」


二人がこちらを見る。


「アリウス。あなたの意見を聞かせてほしいですわ。この作戦はあなた一人に極端な負担をかけてしまうもの、嫌なら今からでも別の作戦を考えますわ」


「いや、大丈夫だ。この作戦で行こう」


俺ははっきりとそう言った。


「俺にとってこの作戦はわかりやすい。とにかく俺は、できる限りの生徒を撃破すればいいんだよな?」


「ええ、そうですわ」


「お、お願いね…アリウスくん!」


期待の眼差しを向けてくる二人に、俺は胸を張る。

「任せろ。魔導祭。必ず三人で生き残って優勝しよう」




〜あとがき〜


新作のラブコメ連載始めました!!!


タイトルは、


『デブで陰キャな俺が彼女を寝取られたことをきっかけにダイエットして自分磨きした結果→学校一のモテ男になったんだが』


です。


そちらの方も是非よろしくお願いします。











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