第4話 封印の石
ブラックはアクアとスピネルと共に岩山に移動する事にした。
シウン大将率いる精鋭部隊はすでに向かっていた。
ただ、岩山の近くはいつも強風が吹いており、人間には近づくことが難しかった。
その為、風の鉱石で作られた盾と同じような武具を用いて、前に進んでいたのだ。
しかし、麓は噴石が多数落下したようで、大小様々な岩が道に転がっており、歩くのも困難であったのだ。
ある程度進むと、岩陰で強風の影響を受けない場所があり、部隊はそこを拠点として岩山を調査する事にしたのだ。
実は今まで人間が近づく事がほとんどない場所のため、その場所から上に進むための道と言うべきものが無かったのだ。
シウン大将は見上げると、足場になるような所がほとんどない岩肌が、目の前にそびえていたのだ。
ここから上は自分達だけでは困難である事がすぐにわかったのだ。
シウン大将は部下に指示を出すと、ブラック達の到着を待った。
少しすると、シウン大将の場所がわかっていたようで、ブラック達が現れたのだ。
そして、シウン大将はブラック達と一緒に向かうため一瞬で麓から消えたのだった。
周りにいたシウン大将の部下達は魔人の凄さを分かってはいたが、その者達に認められている自分達の大将も凄い人なのだと実感したのだ。
そして、残された精鋭部隊はシウン大将の指示通り、麓の調査を始めたのだ。
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「ブラックここだぞ。」
アクアは岩山の中腹に故郷へとつながる洞窟を見つけた。
もう何百年も使われず地震の影響もあり、入り口の先は塞がれている状況だった。
しかし、ブラックが左手を洞窟に向けると、塞いでいた岩達が一瞬で黒い煙と化したのだ。
実は上からアクアに乗って飛んで行く事も出来たのだが、強風である事や中の状況が不明のため、なるべく目立たないように向かう事にしたのだ。
そのため、この洞窟を抜ける事としたのだ。
アクアもこの里に来るのは700年ぶりだった。
里が焼けてしまった後に一度来たが、生存する者がいない事がわかってからは、足を踏み入れる事は無かったのだ。
洞窟を少し進むと明るい光が見えてきたのだ。
アクアは緊張した面持ちで、前に進んだのだ。
普段ふざけた態度の多いアクアではあったが、今回ばかりは違っていたのだ。
洞窟を抜けるとそこは開けた平地が広がっていた。
青々と草木が育ち、まるで草原のような場所が現れたのだ。
落石の影響はあったものの、ほとんどはもっと遠くに飛ばされたようで、この場所にはそれほど多くの岩は落ちてなかった。
それに、この場所は先程と違い穏やかな風が吹いているだけであったのだ。
「ここは強い風も吹いてないのですね。
このような場所があるなんて、初めて知りましたよ。
連れてきていただいてありがたいです。」
シウン大将は鋭く細い目を見開いて、驚きを隠せなかった。
洞窟の外とは別世界のようであったのだ。
「里の面影が全くないな。
まあ、全て燃えた後、700年も経っているのだからな。」
アクアは懐かしい目をして話したのだ。
「アクア、祭壇に向かう場所は分かりますか?」
ブラックがアクアに確認すると、真っ直ぐに指を刺したのだ。
「あの中を進むと祭壇がある。
そこに封印されているはずだぞ。
すでに目覚めの兆候があることから、簡単には進めないがな。
まあ、我らなら問題ないだろう。
ただその前に新しい封印の石をとりに行かなければならない。
それのが問題なのだぞ。」
つまりは封印されている石を破壊し復活しそうなので、新しい石に移し替えると言うことなのだ。
その移し替えが、ドラゴンの民であるアクアしか出来ないことだったのだ。
だが、その作業よりその封印する石をとりに行くことの方が何倍も大変のようなのだ。
そもそも、その石をとりに行く役目は里の長老達の役目で、心穏やかで欲や邪心のない者でないと、自分自身がその石に封印されてしまうと言われていたのだ。
アクアはその点が心配だったのだ。
もちろん、アクアは善人である事は明らかであるが、俗世界を捨てるほどの境地には縁遠かったのだ。
まだまだ自分がやりたい事は多かったし、欲を抑える事が出来る年齢でも無かったのだ。
だが、ドラゴンの民は自分しかいないと言う、強い責任感だけはあったのだ。
今は異世界に住んでいるが、放っておく事は出来なかった。
きっと自分の心が何も考えず、無になれば問題はないのだろうと思ったのだ。
「その石は右手の洞窟の奥だ。
石を持つところまでは問題ないのだが、その領域から持ち出す時が問題なのだぞ。」
「アクア、私達がついてます。
落ち着いてやれば大丈夫ですよ。」
ブラックはそう言うと、アクアの肩に手を置いたのだ。
アクアは頷き、その洞窟に入ったのだ。
ブラックはシウン大将には洞窟の入り口で待機するように伝えた。
そしてアクアに続きブラックとスピネルは洞窟に入ったのだが、その途端二人とも以前訪れた事があるような空間に感じたのだった。
それはアクアも同じであったのだ。
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