B-44

 大先生の質問に紡は直ぐに口を開いた…。


「…も、ものすごく…幸せです!2度と…離れて欲しくないんです…凌空とこの先も歩んでいきたい…そして、もう2度と…凌空の事を1人にしたくない…」


「…紡…」


 俺も…思いの丈を吐き出す…


「俺は…ずっと1人で生きていくんだと思っていました…母さんに弟がいる…とだけ言われて…なんの証拠も根拠も見つからないまま…時だけが過ぎていって…」


「そんな時に…紡に出会って、俺の全てが…紡で彩られていきました…父さんが居なくなった事を紡から聞いた時も…こいつだけは…2度と傷付けたくない、守ってやりたい、側にいてやりたい…」


「もう2度と紡を1人にしない…紡の幸せが俺の幸せになったんです…だから俺も…今、凄く幸せなんです…」


 震える俺らの思いを…うんうんと優しく聞き入れてくれる大先生…。


 両親が居なくなった俺たちを大先生は、労いながら…俺たちの愛を励ましてくれて…


「2人とも…今まで良く頑張ってきたわね…紡、凌空くん…?2人とも、もう1人じゃないわ…2人は、2人で手を取って生きていけるわよね…?…私は、それを考えるだけで嬉しいわっ…大輔くんと夏希ちゃんの分まで…しっかり2人で歩んで行ってね…?」


 その言葉に…俺と紡は涙が溢れ出てしまい…今まで苦しかった事や辛かったことが身体や心から全て…すごい勢いで流れ出てくるような感じがしたんだ…。


「大先生…本当にありがとう…」


「紡のことは…俺に任せてください…」


「2人ならきっと大丈夫よ…?♪」


 また1つ…俺たちはカセットテープに大先生の温もりと優しさ、大切な思いを…しっかりと録音していったんだ…。


 ◇ ◇


 兄弟である真実を伝えた後、大先生は紡にある小包を差し出してきて…


「…紡?あなたに返す時が来たんだと思う…いいえ、今のあなたに返すべきだと思ってる…」


 それは2L判ぐらいの小さな小包で…中身は全く見えないけれど…


 『大きくなった紡へ』

 小包にはそれだけが書かれていたんだ…。


「…大先生…これって…」


 動揺する紡に大先生は…


「…ずっと黙っててごめんなさい…あなたを引き取る時に…家の整理をお手伝いさせてもらって…そこで見つけたものだったの…」


「10歳のあなたに…まだ見せるものじゃないのかもしれない…ちゃんとここで成長した時に…渡すべきのものなのかも…そう思いながら温めてきた物なの…」


 と涙ながらに事実を述べてくれて…大先生は、今までずっと…紡と小包を守ってきてくれていたんだ…。


 父さんから…紡に宛てられた小さな小包…

 もう1つの…真実が…今、紐解かれようとしていたんだ…。

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