B-12

「…ん…っ…んんっ…///」


 な、慣れてないくせに…必死に俺の唇を…な、何度も何度も…自分の唇で、駆け巡らせていく紡…。

 そして唇が離れた瞬間の俺の顔は、絶対に紡にしか見せられないほど火照っていた。


「先輩…僕、我慢できなかった…だ、大好き過ぎて…ううっ、嬉しすぎて…身体が先輩を求めてしまって…///」


 紡も顔が真っ赤で恥ずかしいはずなのに、一生懸命、言葉を紡いでいく…。


「つむ…ぐ…」


「後は…先輩、お願い…この後は、僕にどうしていいのか、わ、分からないよぉっ…///」


 きっと、初めて理性を失ったんだ…。でも自分の感情を頑張って、俺にぶつけてくれて…。

 そんな紡を俺は、体勢を整え直しギュッと抱き締め返した。


「ああ、分かったよ…?でも、帰ってからなっ…?///」


「う、うん…///」


 そのまま俺たちは、誰もいない社殿の階段でもう一度だけゆっくりとキスをしたんだ…。


 ◇ ◇


 ―少しして


 階段で2人で景色を眺めていると


 ピコン!


 紡のLINEが鳴って


《みんな〜っ!楽しんでる~??》

《灯里といるぞ~!めっちゃ可愛い!!》

《え!いいな~!どっかで会わない?!》

《お!いいねぇ!どこにする??》


 そのやり取りに目を向けて笑顔の紡は、そっと俺にもLINEの内容を見せてくれて、少しモジモジしだしたんだ。


「先輩…どーしよ?」


「みんなに会いたいだろ?」


「うん…!」


「俺もみんなに会いたい」


 ふたりの時間を大切にしたいけど、友達との時間も大切にしたい…。そう、紡の俺に対しての気遣いは、こういうところでピカピカと光り輝くんだ。


 ふたりの時間は1度終わりしよう…大丈夫、その後はまた2人きりになるんだからさ…?


「神社で待ってるって送ってやりな?」そう俺は紡に伝えると、紡も嬉しそうに微笑んでみんなにLINEを返していたんだ。

 ほんと紡は、優しさの塊のようだよな…。


「そうだ…紡?」


「…うん?」


 みんなが来る前に…とそっと俺は、携帯を取り出し紡の肩に手を回して…


「ええっ…///」


「ほら、撮るよ…?」


「うんっ…!!!」


 カシャッ!


 無邪気に笑う浴衣姿の俺たちを、携帯に刻み込んでおきたかったんだ…。


 ◇ ◇


「おぉ〜!紡ぅ〜っ!!!」

「…あっ!!洸だっ!!!」


 少しして、奥から洸の声が聞こえて俺らの前に洸に灯里、そして途中で落ち合ったのか深結と陽翔の姿があった。


 洸たちのところへ駆け寄っていく紡を俺は、階段でそっと見守っていた。


「おお?!紡!浴衣じゃん!!!」


「え〜っ!紡、似合ってるし、可愛いよ!」


「あらっ!?ネックレスも似合ってる!!」


「えへへっ、せ、先輩が色々用意してくれてて…///」


 紡の言葉に灯里も深結もキャッキャっとなんだか楽しそうで…ちょっと恥ずかしかった。


 そんなことを思っていると陽翔が俺の横に座って「凌空ぅ〜?お前さ、案外ロマンチストだよなぁ!」なんて茶化してきやがった。


「羨ましかったら、深結にやってやれ」


「ちぇっ…でもさ、お前…変わったな」


「ん?なんでだ?」


「今のお前、すごく楽しそうだ…」


「ああ、そうかもしれないな…」


「それでいいんだよ、これが本当のなんじゃないか?」


「ああ…あいつのおかげだよな…。そしてさ、心から愛して、守ってやりたいと思うひとをやっと見つけられたんだと思う…。」


「良かったな、凌空…?」


「ああ、陽翔…いつも支えてくれて本当にありがとな?」


「ふふっ!今日は、なんか痒くないわっ…!」


 俺も笑いながら返したけれど、親友として俺をいつでも支えてくれたのは陽翔、コイツ以外にいなかったから…。感謝してもしきれないよ…?いつもありがとな…。そう心で改めてお礼を告げたんだ。


 会話の後は「先輩〜!皆で写真撮りましょ〜!!」と深結の元気な声が聞こえてきて


「おう!今、行くっ!」


 陽翔と俺は階段から腰を上げて、4人のもとへ駆け寄って行ったんだ。

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