第16話
「今年の学園祭は、例を見ない盛り上がりだったな!」
生徒会室のソファでふんぞり返って王太子が大声で言います。
各クラスの催し物を精査し、許可を出すのは生徒会の仕事です。
今年は許可を出す際に、更に良くなるように一言添えたのです。
裏技ですが、この当時にはまだ無名だった歌手や奏者をさり気なく推薦したり、隣国と伝手を持っている商会を教えたり。
対外的には王太子の功績ですが、内部には私の能力だと知れ渡っております。
在校生の家族も知っていると思って良いでしょう。
開会の挨拶と閉会の挨拶しかしていないのに、学園祭が自分の功績になっている事に何の疑問も持たないのですね。
王宮での教育はどうなっているのでしょう?
私とサンドラとカレーリナ、そして学園祭を機に増えた侯爵家嫡男のタイラーと伯爵家次男のネイサンが応接室で休憩をしています。
応接室は広いので、ソファやテーブルの配置を変えて、サロンのように分断した空間にしました。
壁代わりの植物の間から、向こう側の様子は見えるのですけどね。
しかも声もよく聞こえるので、自慢気に大声で話す王太子の声と、甲高く響くフローラの声はこちらに筒抜けです。
「なぜ
ネイサンが呆れたように呟きます。
彼は王太子の側近であるハロルドの弟なのです。
双子ではありません。
本来ハロルドは一つ上の学年なのですが、王太子に合わせて今年入学したのです。
本来ならあり得ない事ですが、王太子の為だと王家がかなり無理矢理に事を進めたようですね。
前回は私が常に一緒に居たからでしょうか?ハロルドは側近ではありませんでした。
護衛の中にいたかもしれませんが、正直、記憶にありません。
生徒会役員を決める面接でネイサンは「兄はずっと王太子様に
次男が家を継ぐのに
そして、口だけではない彼は、とても優秀です。
カレーリナの家の領地と近いらしく、よく二人で雑談と言うか領地を繁栄させる夢を話しています。
確かあの地方は、将来ダイヤモンド鉱山が見つかるはずです。
おそらくネイサンなら自力で見つけるでしょうから、下手なアドバイスはしないでおきましょう。
カレーリナが一緒なら、前回よりも早く見つけるかもしれませんね。
あぁ、そうなるとハロルドは邪魔ですわね。
絶対に王太子の側近から外されないようにしなくてはいけません。
彼にも何か手柄を……あら嫌ですわ。
無能過ぎて、何も作戦が思い付きません。
困りましたわね。
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