第13話 フローラ視点 ※胸クソ注意

 



「何で侯爵家が私の制服を用意してないわけ?ここに住んでんだから、用意しなさいよね」

 制服のスカートを切りながら、文句を言う。

 1ヶ月前から先輩の侍女見習いがやたらと「制服は大丈夫?」と聞いてきたけど、まさか学園の制服が実家持ちだとは思わなかったわ。




 サンドラの制服が届いた時、私の制服も一緒に届くと思っていた。

 6枚あったから3枚は私のだと思ったのに、全部サンドラの物だと言う。

 仮縫いした時より成長したとかで、胸とスカート丈が直される事になった。

「入学式には間に合いますから大丈夫ですよ」

 店の人間が言ったそんな言葉に、サンドラが良かったと笑う。


 ねぇ、なんで自分の心配しかしないの?

 そこで私に「フローラの制服は?」とか普通聞くでしょ?

 なんて自分勝手な女なの!?


 こんな女なんて、学園に行けなくなれば良いんだわ。




 学園入学式当日の夜中。

 サンドラの制服のスカート丈を、全部私に合うように直してやった。

 私より背の高いサンドラがこれを着たら、短か過ぎて恥を掻くことになる。

 生地を切って直したから、元の長さにはもう戻せない。

 この制服は、私にくれるしか使い道がなくなるわ。


 入学式には間に合わないわね!

 ざまあみろ!!


 直した制服を着てみる。

 胸元とか緩いし、袖もちょっと長いけど許容範囲よね。

 それにしてもさすが貴族が通う学園の制服ね。生地も良いし、着心地も良いわ。

 私の私物のワンピースよりも高級かもしれないわ。




 入学式の朝。

 制服の事がバレる前に屋敷を出た。

 本当はサンドラと一緒の馬車で行かなきゃいけないんだけど、出入りの商人を掴まえて学園まで乗せてもらった。

 野菜の納品をしている男だ。

「お嬢様が私と一緒の馬車は嫌だって言い出して……」

 涙を浮かべて言えば、すんなり騙された。


 私は自分の価値を知っている。


 ちょっと気弱そうに見える美少女。

 同年代より少し華奢な体。

 全体的に色素が薄いのは、母方の血筋だろう。

 父も母も下位貴族の血しか入ってないんだけど、母方は色素が薄く、父方は美形が生まれやすい家系のようだ。

 私は奇跡の良いとこ取りしたのよ。


 入学式の席は、下位貴族が集まってる場所に座った。

 夜中に制服を直してたから眠い。

 式が始まるまで、ちょっと寝よう。




 式が始まる鐘の音で目が覚めた。

 偉そうな人が何人も挨拶してるし、また眠くなる。

 また誰か挨拶するみたい。

 周りの生徒がザワザワしてる。特に女達が黄色い声を上げている。

「王太子」と言う声があちこちから聞こえた。

 遠くてよく見えないけど、カッコイイ雰囲気は伝わってきた。


 偉い人で、カッコイイ、女生徒の憧れ……か。


 このまま侯爵家に帰ったら間違いなく怒られるし、この王太子を味方に付ければ良いんじゃない?

 涙を浮かべてして、今まで叶わなかった事はないからね。



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