【執美の骨棺】 上

 寝起きで頭がポヤポヤする。


 欠伸を噛み殺しながら布団から這い出てリビングに行くと、母さんが仕事に行く準備をしている所だった。


「おはよう。

朝からバタバタして悪いけど、今から仕事に行ってくるわ!!

あ、そうそう。莉玖宛に手紙が届いてたから!!机の上に置いてあるからね。」


「あ、うん。有難う!行ってらっしゃい!」


 たっぷり惰眠を貪り跳ねた頭のままで、簡単な朝ご飯の準備をしながら慌ただしく出かける母親を見送った。


 今日、俺は学校が休みなので忙しい彼女には悪いが、ゆっくりとさせてもらう予定なのだ。


 麦茶をコップに注ぎながら、テレビのスイッチを点ける。


 ご飯を食べながらテレビを見るのは行儀が悪いと怒られそうだが、今家には新谷先輩と俺しか居ないので問題ない。


 目玉焼きを乗っけたトーストをサクサクと齧りながら、テレビを流し見していると、物騒なニュースが流れてきた。

 

 {次のニュースです。

美術館で修学旅行中に行方不明になっていた男子生徒の白骨化した遺体を発見}


{遺体は美術館内の展示物の内部に隠されており、現場では調査と共に美術館の職員達に話を……}


 どうやら、前から話題になっていた男子生徒行方不明事件に進展があったようだ。

 美術館を訪れていた高校生達の中で彼だけが誰にも気が付かれないまま、ひっそりと姿を消してしまったらしい。

 その男子生徒は学生でありながらモデル業もやっていたぐらい容姿端麗らしく、かなり世間でも騒がれていたし俺自身も美術館で大変な思いをした経験があるからヤケに印象に残っていた。


 朝に見たくないニュースを見ちゃったな……。


 そんな事を呑気に思いながら食事を進める俺を尻目に、新谷先輩はフワフワと宙に浮きながら勝手宜しく手紙を拾い上げ中身を読み始めた。


 俺宛の手紙らしいから、一言断ってほしいなぁ。別にいいけど。


『どれどれ……手紙の差出人は【大西栄美術館】の人みたいだね。』


 麦茶吹き出した。

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