【業食の晩餐】 上
「……という事件があったので、みんな十分に気をつけるように。
おーい、有栖川!! ボーッとしてるぞ? 大丈夫か!?」
帰りの会、先生が何か言っていたけど俺は新谷先輩に以前言われた言葉が気になりすぎて、ちっとも頭に入って来なかった。
【怪異を吸収なんて芸当、出来るのは怪異だけ。】
じゃあ冠原さんの、あの技は?
もしかして、あの人は怪異なのか?
いや、そんな、まさか。
冠原さんの事や陰陽師の事について云々と考えていたら、いつの間にか教室には俺一人になっていた。置いていかれたらしい。
『何一人で呻いているのさ。』
お前のせいだ!!!
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何だか悩む事に頭を使いすぎた所為で、お腹が空いてきた。
早く帰ってオヤツでも食べよう、と急いで教室を出て、日が長くなり暗くなった夜道で足を早めると。
くんくん。
「あれ? 何か……すごく良い匂いがする。」
なんだろう?ハンバーグの匂い??
くんくんと霧呼みたいに匂いを辿って行くと、洋風の建物にたどり着いた。匂いは此処からするし、メニュー表があるからレストランだろうか?
しかし、こんな所に店なんてあった覚えがない。
通学路で良く通る道なんだけどなぁ。
そんな疑問を掻き消すように、ぐぅ〜〜と盛大に腹の虫が鳴り出す。
まぁいいや、今日は食べて帰ろう。
幸いにも忘れ物をした時などに使う財布がある。中身は俺の小遣いだから、使っても問題ない。
「ねぇ! 新谷先輩!! 今日は此処で食べてから帰ろうよ! 俺、お腹空いちゃって……。」
『あぁ、いいんじゃない? でも食べて行くなら親御さんに、ちゃんと連絡を入れるんだよ?』
「大丈夫、いまメッセージを送ったから!! さっ! 入ろっ!!」
兎に角、お腹減った。何か食べたい。
意気揚々と鈍く光る真鍮のドアノブを捻り、分厚い扉を開いた。
「すみませーん、一名でお願……っ!?!?」
扉の先には外観通り品の良い内装と、シンプルだけどお洒落なベストとソムリエエプロンを身につけた、長身のウェイターさんが複数人居た。
ただ、頭部だけは……。
『あ、言い忘れてた。
…………この店、怪異だから。』
頭部だけは、鋭利な大きいフォークやナイフだったが。
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