【写武者】 下
静まった夜の廊下に、カチンッと冠原さんが刀を鞘に収める音だけがヤケに響く。
「…………済まない、さっきは助かった。」
始終、ポカンと突っ立って傍観していた俺たちだったが、刀を抜く前の警告の事を言っているのだろう、急に声を掛けられて慌てて応えた。
「あ、いえ……冠原さんが、無事で良かった……です。」
そう、あのとき新谷先輩は。
肉声では、どんなに声を張り上げても届かないだろうからと。
なるべく近くまで移動しながら【釘子さん】の能力で俺の声をコピーし、音声増幅アプリを多用してスマホで出来る限界大音量で流したのだ。
(お陰で走ってる最中に耳がキーンッッ!!!!としたし、霧呼がビックリしてひっくり返ってしまったが。)
それでも届くか若干不安だったものの、無事に聞こえた様で安心する。
「けど、お前達が我々の脅威になりうるという疑惑はまだ晴れていない。
……教えてくれ【呪念の手記】
お前は何のために怪異を退治し、回収する?」
冠原さんの鋭い視線に、たじろぐ俺とは真逆で新谷先輩は余裕綽々な笑みを絶やさない。
『そうだね、じゃあ君の信用を得るためにも話しておくよ。』
今まで新谷先輩が手伝ってくれた理由。
俺も知らなかった新谷先輩の秘密が。
緊張し、固唾を飲み込みながらフワフワと浮かぶ新谷先輩の口元に注視する。
そして、新谷先輩は口を開いた。
『縲仙測蠢オ縺ョ謇玖ィ倥?代↓縺ッ謌舌j遶九■縺ョ譖ー縺上′辟。縺??ょヵ縺ョ逶ョ逧??諤ェ逡ー縺ョ險惹シ舌r騾壹@縺ヲ謌宣聞縺励◆闔臥事縺上s縺ォ縲∝ヵ縺ョ險俶?繧呈爾縺励※繧ゅi縺?コ九□繧医?や?ヲ窶ヲ闔臥事縺上s縺ッ迚ケ蛻・縺ェ閭ス蜉帷┌縺励↓縲∝濠蛻?→縺ッ縺?∴蜒輔?蜻ェ縺?r霍ウ縺ュ髯、縺代◆繧薙□縲ゅ″縺」縺ィ蠖シ縺ォ縺ッ諤ェ逡ー繧堤炊隗」縺吶k謇崎?縺後≠繧九s縺?縺ィ諤昴≧縲』
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なんて??
「……それは怪異を退治して回収する理由になっていない。」
いや、冠原さん。なんで新谷先輩の言っている事わかるの!?
『縺輔▲縺阪b險?縺」縺滄?壹j縲∝スシ縺ォ縺ッ諤ェ逡ー繧堤炊隗」縺吶k謇崎?縺後≠繧九?ゅ¢縺ゥ縲√∪縺?縺セ縺?譛ェ辭溘〒縺ュ縲ゅb縺」縺ィ豐「螻ア縺ョ諤ェ逡ー縺ォ髢「繧上▲縺ヲ縲∵燕閭ス繧堤」ィ縺?※繧ゅi縺?ソ?ヲ√′縺ゅk繧薙□縲
閭ス蜉帙?蝗槫庶縺ッ隴キ霄ォ逕ィ縺ィ縲√≠縺上∪縺ァ繧ゅが繝槭こ縲』
ちょっと!!当事者なのに俺を除け者にして話を進めないでよっ!!!
意味深な目線、やめて!!!!!!
『蜒暮#縺ョ蟄伜惠縺ッ縲∝菅縺溘■縺ォ繧よ怏逶翫□縺ィ諤昴≧繧薙□縺代←縺ェ縺?シ溪?ヲ窶ヲ闔臥事縺上s縺ョ謇崎?縺ッ譛ャ迚ゥ縺?縲ゅ◎繧後?莉翫∪縺ァ騾?豐サ縺励※縺阪◆諤ェ逡ー繧偵∩縺ヲ繧りィシ譏主?譚・繧九h縺ュ?』
「そういう理由なら確かに私達にも利がある。……彼を巻き込む理由には同意しかねるが、怪異に関わる事を有栖川本人が納得しているのなら私に口を出す権利は無い。お前の話が嘘かどうか判断する為にも、お前達を連れて行くのは一旦保留にしよう。」
俺は全く何も分からないんですけど。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「最後に聞く。お前を……お前たち怪異を最近、封印から解いたのは誰だ?」
1人だけ蚊帳の外にポイっと放り投げられ若干拗ねてた俺だが、最後に投げかけられた問には目を丸くする。
「……え?怪異って最近まで封印されていたの?」
てっきり俺が怪異に巻き込まれる事が増えたのは、新谷先輩の半憑になって「視える」ようになったからかと思っていたんだけど、違う、のか?
……でも、確かに霊感が無くても怪異に襲われている人は沢山居たのだ。新谷先輩に出会う前までの俺は、平和そのものだったし。
『それは、僕が聞きたいくらいかな。
いつの間にか目が覚めて、自由に動けるようになっていたんだ。』
先程までとは違い、新谷先輩は俺にも分かるように普通の声で話してくれた。
冠原さんも、そうか。と納得した様子で此方を見ている。
「まさか、誰かが封印されていた怪異を解放していってるんですか……?」
「多分な。そのせいか近頃は本当に怪異の被害が多くて、陰陽師も慌ただしい。
……だからと言って、この辺りの怪異を結果的に野放しにしていた事、本来守るべきだった、お前達を危険な目に遭わせ続けた事への言い訳にはならないけれど。」
本当に、すまなかった。と傷だらけの体で頭を下げる冠原さんを見ると、複雑な心境になる。
柏木の一件で、陰陽師は簡単に信用出来ない。
けど冠原さんの事を、悪い人だと一概に決めつけられないのも、また事実。……ちゃんと怪異を倒してくれたし、冠原さん自体は悪くないのに今までの事を謝ってくれた。
少なくとも、柏木よりかは誠実そうだとは分かる。
……だから。
「あの、頭を上げて下さい。……良かったら連絡先を交換しませんか?」
少しだけなら、歩み寄っても良いと思ったのだ。
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互いの連絡先を交換した後、俺は帰路に着いていた。
冠原さんが、
「学校があるんだろ、今日はもう帰っていいよ。片付けと学校側への説明は私がやっておくから。」
と言ってくれたからだ。
冠原さんいわく、陰陽師は戦いの被害を抑える為に片付けなどが出来る道具を常に持ち歩いているらしい。
ちなみに万が一に備えて、学校に入って直ぐに陰陽師権限を使用して警備員には既に帰って貰ったそうだ。
どうりで、あれだけ大きな音を出しても人が来ない訳である。
(【くしゃく様】の時、柏木も同じ事をしていたのかも知れない。)
しかし、いま俺の頭を占めるのはそんな事では無い。
『莉玖くん、いつまでいじけているつもり?』
「……。」
俺は先程の会話で除け者にされた事を、まだ根に持っていた。
冠原さんが居る時は流石に自重していたが、今は2人きりだ。もう我慢しない。
「何で俺を会話に混ぜてくれなかったのさ。……何言ってたか知らないけど、勝手に色々教えてたみたいだし。」
『莉玖くんだって、勝手に連絡先を教えていたじゃないか。戦闘面でも彼は頼りになりそうだし、相手の信用は得ておいて損はないだろ?』
カチンときた。
だったら尚更、なんで俺だけっ……!!
「そ、そうだね!!へなちょこな能力しか使えない弱い俺達とは違って刀を自由自在に操れて凄く強かったし、倒した怪異を吸収する所なんか本当カッコよ『莉玖くん、良い事を教えてあげよっか。』
俺の苛立ちに任せて捲し立てるような言葉を遮り、新谷先輩が顔を寄せてくる。
光の入らない深淵を切り抜いたような瞳が俺を映し、得体の知れなさにゾッとした。
新谷先輩が、わらっている。
……嗤っている。
『怪異を吸収なんて芸当、出来るのは怪異だけなんだぜ。』
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作者からのお願い。
新谷先輩の言語が分かっても、ネタバレなどは禁止です。
「俺は分かってるぜ」とニヤニヤしてドヤって下さい。(それもどうなんだ汗)
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