【くしゃく様】 上
なんだか、新谷先輩の様子が変だ。
学校でも家でも、どこか考え込んでいる様な、話かけても上の空で明らかにおかしい。
いつもの毒舌も、ここ最近はサッパリだし、身体の調子が悪いのだろうか?
「新谷先輩、最近おかしくない?
どうしたの?お腹壊した?」
とうとう我慢の限界が来て、直接聞いてしまった。
いじめられたい訳では決して無いが、新谷先輩が変だと、こっちまで調子が出ないし。
『……怪異はお腹壊さないよ。』
「じゃあ、どうしたの??」
煮え切らない態度に痺れを切らし俺が詰め寄ると、少しだけ言い淀んだのち新谷先輩が口を開いた。
『実は、莉玖くん宛に妙な内容のメールが届いていたんだ。』
そう言って、新谷先輩はパッとスマホのメール画面を表示させる。
そこには……
拝啓 有栖川 莉玖くん。
急にこんなメールが来て、驚かせちゃったかな?
実は君が怪異に……【呪念の手記】に取り憑かれていると知って、連絡をさせて頂きました。
ボク達、陰陽師には怪異を祓う力があるので、きっと君の力になることが出来ると思う。
もしボクを信じてくれるのであれば、夜8時に君の通う学校の視聴覚室で待っています。
陰陽師 柏木より
「何、このメール。」
メールの内容を見て、俺は絶句した。
一見すると俺にとっては利益しか無く、新谷先輩にとっては不利益そうな(それどころか存在に関わる)内容だが、何故夜の学校などという危険な場所に呼び出してくるのだろう?
「新谷先輩、なんでこのメールを俺に見せようと思ったの?本当に祓われちゃうかも知れないし、勝手に消す事も出来たでしょ?」
『下手に隠してバレた時に、莉玖くんとのいざこざに発展したら嫌だからね。』
「あー、うん。それはありそう。」
相手が本当に陰陽師なら、怪異が関わっている以上、今回無視しても遅かれ早かれ自分たちに接触してくる可能性がある。
だから自分にとって不利益かもしれない内容でも、悩んだ末に俺に見せてきたのだ。
『僕が莉玖くんに取り憑いている事を知っている相手……か。』
何より新谷先輩は純粋にメールの送り主……陰陽師を名乗る者の正体が気になっているのだろう。
自分を消すかも知れない相手の所に乗り込もうとするなんて、度胸があるのか単に好奇心が強いのか……。
話し合った結果、文章を見る限りだと少なくとも俺には敵意が無さそうであったので、新谷先輩がその気なら話だけでも聞いてみようという事になった。
「で?約束の日は?」
『7月28日。』
「今日かよっ!?!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます