第21話雀の子と北山の姫君


ひでー現実を聞いた日から、度々、元後涼殿こうろでんの更衣は父帝の元の通っていた。

いっその事、元後涼殿こうろでんの更衣を父帝の元の返して、別の、というか、本物の女房と交換した方がいいかも……と思っていた頃に事件が起こった。



「ちゅうきょう、しょれなんなん?(訳:中将、それはなに?)」


「はっ!雀の子でございます」


いや!それは見たらわかる。

なんでお前の肩に乗ってるのかという事だよ。

しかもめっちゃ寛いでないか?この雀。


「ちゃんでちゅれしぇるの?ちょこにいちゃの?(訳:なんで連れてるの?どこにいたの?)」


「この辺りは僧坊そうぼうと聞いていましたのですが、何故か女人が数多いることが気になりまして、様子を伺っていた処、木から雀の子が落ちてきたのです。かなり弱っていたので、水を食料をやったところ、このように傍にいるようになりまして…まあ、邪魔になる訳ではありませんからそのままにしているのです」


なるほど。

偶々か。な~~~~んだ、ってそんな訳あるか!

雀っていうのはな、中々人間に懐かねぇんだよ!


「ちょれ、ちゃいちゅじゅめちゃない?(訳:それ、飼い雀じゃない?)」


「女人たちが飼っていた雀だと仰るのですか?」


「ちょう!ちゃがちゅでるかも(訳:探してるかも)」


「そうですね。人懐っこい雀ですから。今から返してまいります」


「ぼちゅもゆく!(訳:僕も行く!)」








――僧坊そうぼう――




僧坊の周りでは確かに女性の声が聞こえてくる。

別の女人禁制では無いからおかしくは無いけど。

でも、尼さんは修行出来ない事になってなかった?ここ。


「徳の高い僧都そうず殿に限って、女人を手元におくなど考えられませんが……人というのは、どれほど徳が高くても人ですからね…『欲望』からは逃れられなかったのでしょう…」


蔵人の中将!

僧都に失礼だよ!

うちの両親のせいで情緒不安定になってんのかも。すまん。


「みーちのもんかも(訳:身内の者かも)」


「あ!確かに、そうかもしれませぬ。早速、しら…「曲者!!!」…」


「なにようでココに参った!庵室あんしつに住まう化生の一味か!」


長刀持った勇ましい少女が蔵人の中将の喉元に刃を突き付けた。

でも…化生って。


「あ…いや、私は…」


「昼夜問わず化生の淫らな声が聞こえてきておる!遂に、我が家の女人にも目を付けたか!」


「いや。そんな」


「見苦しい!言い訳は聞きとうない!神妙にせよ!」


随分勇ましい美少女だ。

女武将かな?

蔵人の中将もタジタジだよ。

でも、どうしよ。

説明できない。身内なのは事実だし。う~~~~~~ん。



「なにをしておる!こちらおわすお方をどなたと心得る!畏れ多くも今上帝の御子!尊き身分の皇子ぞ!!!」


僧都の一喝で場はシ~~~~ンと静まり返った。


水戸黄門か!

僕は黄門様か?

印籠は何処に?


何はともあれ事態は収まった。









◇◇◇◇◇


僧坊:僧尼が居住する寺院付属の坊舎。

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