ほほう、教育特化ですね。

 冒険者ギルドにまた大量の素材を売却してから、師匠のところで蒸留器を回収します。

 蒸留器は九十台になりました。

 あと少しで百台ですね。


 保管庫の樽が減っています。

 どうやら大口の取引があったらしく、ブランデーが大量に売れたらしいですよ?

 相手はキウス王国の王都にある大店と、ミステイン王国のブライナー辺境伯領の大店ですって。

 樽をDPで出しておきます。

 商売が順調なようでなによりですね。


 夕食を摂ったら、リュートの練習です。

 最近は熟練度20倍のおかげか初見の譜面も難なく引けるようになっています。

 呪歌と魔曲、鼓舞が美声や気品などでブーストされてミアラッハの駒作りが加速しています。

 これ戦闘中もアカペラで呪歌を歌ったりしたら、ミアラッハを強化できそうですね。

 集中力が削がれそうですからやりませんけども。


 夜になったら、ミアラッハに「おやすみなさい」を言ってオーガ先生のもとへ。

 ハーミットのレベルを上げましょう。

 せっかく格闘に補正もあることですし、素手でオーガ先生と戦います。

 闘気法、真闘気法、聖闘気をまとい、〈エンチャントウェポン〉と〈ヘイスト〉をかけていざ勝負。

 手刀でオーガ先生の首をはねることができました。

 効率は剣に劣りますが、戦闘は刺激的になりましたね。

 これで格闘系スキルの熟練度も上がるので、このまま戦いたいと思います。

 〈縮地〉で槍の間合いの内側に入って手刀で心臓を貫いたり、投げで地面に叩きつけて首を折ったり、関節技で腕や足を折ったりと色々試しながらオーガ先生を倒していきます。


 気がつけば日が昇っていました。

 ハーミットのレベルは?

 86になりましたね。

 スキルがひとつ増えます。

 新しいスキルは……【未来視】です。

 その名の通り、対象の場所や人物の未来を視ることのできるスキルですね。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス ハーミット レベル 86

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【ルテイニア地方語】【算術】

     【礼儀作法】【宮廷語】【全属性魔法】【闘気法】【真闘気法】

     【聖闘気】【練気】【仙術】【呪歌】【魔曲】【舞踏】【馬術】

     【騎乗】【人馬一体】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】

     【人形使役】【剣技】【剣術】【葬剣】【剣理】【槍技】【槍術】

     【葬槍】【鎚技】【二刀流】【多刀流】【武器伸長】【霊鎧】【聖殻】

     【素手格闘】【投げ】【関節技】【格闘術】【回避】【対人戦闘】

     【先の先】【後の先】【魔法斬り】【鎧貫き】【突撃】【気配察知】

     【罠感知】【罠設置】【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔法収束】

     【魔力自動回復】【同時発動】【多重魔力腕】【消費魔力軽減】

     【多重詠唱】【無詠唱】【魔法武器化】【魔力強化】【耐性貫通】

     【怪力】【宗匠】【俊足】【跳躍】【魅力】【気品】【美声】

     【カリスマ】【威厳】【獅子心】【幸運】【夜目】【鷹の目】

     【過去視】【未来視】【夜の王】【毒無効】【不眠不休】【誘惑】

     【威圧】【畏怖】【指揮】【鼓舞】【士気高揚】【戦技教導】【福音】

     【変身】【光輪】【光翼】【飛翔】【絶対命令】【魔法創造】

     【剣術創造】【創世神信仰】【神託】【シャルセアとの絆】

     【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】【アルマルドとの絆】

     【小型召喚】【騎獣強化】【迷宮管理】【迷宮帰還】【迷宮の申し子】

     【迷宮外設置】【迷宮介入】【迷宮破壊】【経験値20倍】

     【熟練度20倍】【転職】》


 さあ今日は第五十階層からのスタートです。

 迷宮都市キャストルリアーヌに転移して、大迷宮に入りますよ。


 ……と思ったら、神殿の前でハーティアに呼び止められました。

 また神託でもあったのかな?


「クライニア皇帝陛下。少しお時間を頂けますか?」


「いいですよ。何の用でしょう?」


「実は昨日行われた成人の儀式を受けた子が、ステータスバグなのです。どうか彼女のステータスを見て頂けないでしょうか?」


「なるほど……」


 見ればハーティアの横で悲壮感を漂わせている少女がひとりいます。

 この子がステータスバグにあった子でしょう。


「分かりました。必ず読めるとは言えませんが、見るだけなら構いませんよ」


「ありがとうございます。ほらリンさん、ステータスを」


「は、はい。〈ステータスオープン〉」


 あ、これ日本語ですね。

 問題なく読めます。


《名前 リン

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス マーチャント レベル 9

 スキル 【レクタリス地方語】【算術】【基本魔法】【教育】【絶対記憶】

     【技能神信仰】【開花の導き】》


 ほほう、教育特化ですね。

 技能神とは、成人の儀式のときに祈る神で、ステータスを司ると言われています。


 そういえば貴族院に相当する教育機関が我が帝国にはまだありません。

 この子を一人前の教師に仕立て上げて、高等教育機関を設立しましょう。


「読めました。ステータスを読み上げるのでメモを取ってください」


「……! ありがとうございます、皇帝陛下!」


「え、本当に? ありがとうございます、陛下!!」


 ハーティアとリンが感極まった様子で喜び合っています。

 読み上げたステータスのメモを何度も熱心に見つめるリンが「この【開花の導き】というスキルはなんでしょう?」と首を傾げます。

 多分、彼女のチートスキルなのでしょうけれど、私にも分かりません。

 ふと思いついて未来視を起動してリンを視てみます。


 大勢の人間の人生を良い方向へと導いていくイメージが鮮烈に視えました。


 やっぱり教育者に育て上げるべきですね。

 そのための教師が必要ですが、ここはDPを惜しむところではないでしょう。


「リンさん。あなたは教師としての才能があります。城に教育係を用意しますので、そこで学んで一人前の教師になってもらえませんか?」


「私が教師に……。はい、皇帝陛下の仰るままに!!」


 クラスチェンジも済ませた方がいいということで、神殿の中に入ります。

 リンがモノリスに触れると、幾つかの候補が表示されました。


《【クラスチェンジ】

 プリースト(レベル1)

 マーチャント(レベル9)

 ティーチャー(レベル1)》


 教育スキルが前提のティーチャーがありますね。

 リンにはうってつけでしょう。


 みっつの候補を告げると、リンは迷わずティーチャーを選びました。


「それでは明日から城に来てください。あなたの教師を用意しておきます」


「はい。本当に、ありがとうございます皇帝陛下!!」


 涙を溜めているリンの目元を拭ってやり、私とミアラッハは迷宮都市へと向かうのでした。

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