別に玉座でふんぞり返っているわけじゃありません。

 夕食をミアラッハと摂ったら、食後の演奏の時間です。

 今日は歌曲をもう一曲くらい、練習しようかと思って楽譜とにらめっこしています。


「らーらーらー♪」


 割りとすんなりと一曲、通しで引けるようになりました。

 熟練度20倍、バンザイ!


 ミアラッハに「おやすみ」を告げてから、第三階層、の前にヨルガリアと井戸の設置をしに行きます。

 着々と住民が増えていますね。

 建設中の宿屋らしき建物と、酒場らしき建物を見て内心でニヤニヤしています。

 うん、民間で需要を満たしてもらえると嬉しいですね。


 木材や石材は外からの輸入に頼っています。

 この辺もなんとかしたいところですが、ちょっと解決方法を思いつきませんね。

 林業フロアとか作ってもいいですけど、採算が取れなさそうです。


 井戸の設置を終えたら、昼間の続きです。

 オーガ先生は剣理を習得してまた一段と強くなっています。

 戦技教導を受ける身としては、ありがたいことですが。


 剣にはとっくに慣れていますので、夜は殺し合いです。

 セイントの補正はかなり高く、重い剣を小枝のように振り回すことができます。


 殺伐とした時間を過ごし、明朝になる頃にはセイントのレベルは55に達していました。

 新しいスキルがふたつも増えます。

 結果は?

 【聖闘気】と【聖殻】です。

 前者の聖闘気は、真闘気法とは別に聖なるオーラで身体強化をするといもので、両者は重複します。

 後者の聖殻は、物理・魔法ともに耐性を得るという凄いスキルですよ。

 聖殻は常時展開されているのが嬉しいですね。


 転職を起動します。


《【転職】

 セイント(レベル55)

 ノーブル(レベル35)

 ファイター(レベル24)

 スカウト(レベル33)

 フェンサー(レベル52)

 ランサー(レベル52)

 グラップラー(レベル31)

 プリースト(レベル20)

 メイジ(レベル22)

 ブラックスミス(レベル50)

 アルケミスト(レベル26)

 マーチャント(レベル1)

 オフィシャル(レベル1)

 メイド(レベル1)

 トリックスター(レベル28)

 バード(レベル23)

 ダンサー(レベル1)

 テイマー(レベル1)

 ロード(レベル25)

 ウォーロード(レベル26)

 カースドナイト(レベル1)

 アサシン(レベル21)

 エクスカリバー(レベル49)

 グングニル(レベル36)

 チャンピオン(レベル20)

 ビショップ(レベル23)

 オラクル(レベル1)

 ウィザード(レベル22)

 セージ(レベル24)

 サモナー(レベル26)

 ネクロマンサー(レベル1)

 パペットマンサー(レベル20)

 パラディン(レベル30)

 モンク(レベル21)

 ルーンナイト(レベル22)

 バトルマスター(レベル28)

 ハーミット(レベル22)

 ダンジョンマスター(レベル21)

 エンペラー(レベル20)》


 うーん、どうしようかなあ。

 上級クラスで欲しいものは軒並み上げたような感じですね。

 カースドナイトに目が止まりましたが、呪い装備限定というのがちょっと引っかかります。

 ここは初心に帰ってメイジのレベル40を目指しましょう。


《名前 クライニア・イスエンド

 種族 人間 年齢 15 性別 女

 クラス メイジ レベル 22

 スキル 【日本語】【レクタリス地方語】【算術】【礼儀作法】【宮廷語】

     【全属性魔法】【闘気法】【真闘気法】【聖闘気】【練気】【仙術】

     【呪歌】【魔曲】【錬金術】【魔法付与】【鍛冶】【量産】

     【人形使役】【剣技】【剣術】【葬剣】【剣理】【槍技】【槍術】

     【葬槍】【鎚技】【二刀流】【多刀流】【武器伸長】【霊鎧】【聖殻】

     【素手格闘】【投げ】【関節技】【格闘術】【回避】【対人戦闘】

     【後の先】【魔法斬り】【鎧貫き】【気配察知】【罠感知】【罠設置】

     【魔力制御】【魔法範囲拡大】【魔力自動回復】【同時発動】

     【多重魔力腕】【消費魔力軽減】【魔法武器化】【魔力強化】【怪力】

     【俊足】【気品】【美声】【カリスマ】【威厳】【幸運】【不眠不休】

     【指揮】【鼓舞】【福音】【光翼】【創世神信仰】

     【シャルセアとの絆】【ルマニールとの絆】【ヨルガリアとの絆】

     【迷宮管理】【迷宮帰還】【経験値20倍】【熟練度20倍】【転職】》


 イフリート迷宮は第五十階層からのスタートです。

 いよいよ折り返しですね。

 第五十五階層にはヒドラが出るし、難易度は順調に高まっています。


 雑魚戦で〈マナジャベリン〉を撃ってビックリ。

 なぜか威力がかなり上昇しています。

 原因は?

 恐らくセイントのレベルアップでしょうね。

 なぜか近接戦闘系のクラスではありますが、前提を考えると魔法の威力も上がるのだと思うのです。

 レベル20でスキルを取り終えた魔法系のクラス、鍛え直していくのは良い案だったらしいですよ?


 ウキウキ気分で、第五十五階層のヒドラ戦です。

 こんなに弱かったっけ、コイツ?

 それが感想です。

 ミアラッハとふたりで接近戦を挑み、魔法のアダマンタイトの剣で首をバンバン落としていきます。

 再生する体力がなくなったのは、あっという間でした。


「今日は調子いいみたいだね。修行の成果?」


「そうですね。かなり鍛えてますから」


 ミアラッハの探るような目に、曖昧に答えておきます。


「なんか闘気法、光ってたのは、あれなに?」


「ああ、聖闘気ですね。セイントのスキルです」


「セイント? ビショップとウィザードの上級クラスの? ……そりゃ強いわけだわ」


 呆れ半分に肩をすくめるミアラッハ。

 さあお宝を開けて、第六十階層まで進みますよ!


 第六十階層の中ボスは、フェイスレスとガネーシャ五体です。

 フェイスレスはいわゆるのっぺらぼうの魔法使いですね。

 多彩な魔法を操る、敵にすると厄介な後衛です。

 一方のガネーシャは象の頭部をもつ魔法剣士です。


 開幕は派手に魔法を撃ち合うことになりました。

 中ボス組は〈フレイムランス〉を、こちらは私ひとりで瞬殺コンボを見舞います。

 ミアラッハは落ち着いて魔法斬り。

 その後、空歩と縮地で一気にガネーシャを飛び越えてフェイスレスを仕留めました。

 そうなったら、後は取り巻きの処分だけです。

 ガンガン瞬殺コンボを放って、射殺しました。


 宝箱を回収した後、手を繋いで転移魔法陣に乗ります。

 無事に第六十階層も突破できましたね。

 迷宮帰還で帝国に戻りました。


 城に戻ると、執事のセバスチャンから「お客さまがお見えになっております」と言われました。

 どうやらキウス王国から外交使節団が派遣されてきているらしいです。

 王冠を被って、玉座の間で謁見です。


 初老の男性が、使節団のリーダーのようです。

 跪きながらうやうやしく挨拶を述べました。


「お初にお目にかかります。キウス王国外務卿のライアン・サザランドと申します」


「私はクライニア帝国皇帝、クライニアです。キウス王国の外務卿自ら、何の用でしょうか?」


「……和平交渉に参りました。先日の騎士団派遣をお詫びし、我が国と友好を結んでいただきたい」


「友好ですか……」


「具体的には双方の平和条約への締結。そして我が国から先の騎士団派遣への謝罪として、金貨1000枚を用意しております」


「謝罪? 賠償金を用意しているということは、キウス王国の非を認めるということですか」


「はい。貴国の戦力を拝見しましたところ、我が国では太刀打ちできないと判断しました」


「そうでしょうね。騎士団も私と召喚獣二体で全滅させましたから」


「……は? 皇帝自ら戦場に立ったのですか?」


「私は別に玉座でふんぞり返っているわけじゃありません。冒険者として日々、迷宮攻略に邁進していますよ。今はイフリート迷宮に潜っています」


「い、イフリート迷宮ですと」


「ええ。何か?」


「いえ。我が国でも随一の難易度を誇る迷宮ですので、驚きました」


 金ランクを派遣しているくらいだもんね。

 確かに難易度は高いでしょうよ。


「話をもとに戻します。和平のために平和条約に調印するのはやぶさかではありません。貴国の領内に、勝手に国を築いたのはこちらでもありますからね」


「皇帝陛下の寛仁な判断に、敬意を表します」


 ライアン外務卿によると、正式な平和条約の調印はキウス王城で行うことが条件らしいです。

 まあ、ここにキウス王を呼びつけるほど鬼ではないので、条件を飲みました。


 その後は夕食会となります。

 ミアラッハとともに急遽DPを消費して用意したドレスに着替えて、参席します。


 料理の美味しさに外交使節団は驚きを隠せないでいるようでした。

 また蒸留酒も好評でしたね。

 本来ならば樽で寝かせなければ味も素っ気もない蒸留酒ですが、そこは混ぜものをして味を調整しています。

 もちろんちゃんと保管庫もあって、樽で寝かせる分も用意していますが。


 蒸留酒は量産して樽で大商店と食事処に卸しています。

 行商人が帰りの荷に酒樽を乗せていくのはもはや風物詩といえましょう。


 食後のデザートは城の料理人たちが作るフルーツのタルトです。

 第二階層では新鮮なフルーツが収穫できるため、非常に美味です。


 ライアン外務卿は「非常に美味でした」と満足感を隠そうともせずに料理を褒めちぎりました。


 夕食の時間は終始なごやかに進み、何事もなく彼らは客間へと下がります。


「それにしても、平和条約の締結のためにわざわざクライニアを呼び出すかなあ?」


「……まあ一服盛られるくらいは覚悟して行きますよ」


「気をつけてよね?」


「もちろんです」


 毒殺対策はしておいた方がいいでしょうね。

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