猫又(四)
『
「変えられないことだからって柚莉に押しつけるなんて……。オレは何度も転生していろんなネコの一生を経験した。でも柚莉は一度きりしか生きられないんだろう? それなのに『代替え』の『
きつい言葉を言っても言い返してこない。オオカミも本当は嫌なんだ。定められたことでも言わずにはいられない! 死ぬ運命なんて止めたい!
「オレは柚莉に出会えたことで充実した一生を送れた。ネコとして十分すぎるくらい生きた。転生できる
「器は人間にしかなれない。そして選ばれた者しか役目をこなせない」
無情な事実を突きつけられて、悔しくて食いしばったけど、現状は何も変わらない。どうすればいい。どうすれば……。
「おまえはもう上へ昇れ。まだ転生できる。早く行け」
「嫌だ!」
変えることができないから『
オレにできることはないか考えていたら、オオカミが言っていたことを思い出して賭けにでることにした。
「あなたはさっき器を守ると言った。そして
「器を守ることに専念できれば少しだけ時間は延ばせる。だが……自分が何を言っているのかわかっているのか?
「『生』に未練はない! オレは柚莉に少しでも長く生きてほしいんだ!」
「おまえの想いはわかるが賛成できん。時間を延ばせたとしても代替えはいずれ実行される。それに
オオカミの言っていることはもっともだ。オレは何度も転生してきたからわかっている。現実は厳しいものだ。楽しいことだけじゃない。つらいこともある。独りだと心が折れそうになることもある。でも――助けてくれる者もいる!
「
オオカミの返事を待たずに、決意したことを実行する。やり方は本能でわかっている。ただ欲すればいい。そう――
強く願ったことで体の中が変化したのがわかった。どろっとした黒いモノがわいてきて意識を侵食していく。欲しいと願えば
みしりみしりと内側から変化していく。体が大きくなるとともに
見える景色に赤が乗る。赤は血の色。
血――……。
ああ――……
血が……肉が食べたい。
戦って血を浴びたい……狩りがしたい。
うまそうな匂いがする……。
人間だ……。
無防備に寝ている。食べたい――
「おまえは……柚莉を食うために
静かな声が響いて、人間に向けていた爪がなぜか止まった。
目の前にいる人間をじっと見てみる。
匂いがする……。
心地のいい香りだ……。
そう……だ。柚莉の匂いだ!
赤く映っていた景色がゆがんで赤色が薄くなる。色彩がでてきて元の世界に戻った。はっきりした意識で己を見てみる。
爪を見れば硬く鋭いものに変わっている。体を見れば大きくたくましい姿だ。尾を振ると二つに分かれた異形のモノとなっている。でも
弱い
「私が柚莉を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます