最終話

私はこたつに下半身をつっこんで、座椅子にもたれかかっていた。

スマートフォンを片手に、子供の育て方やら、嫌われない父親やら、色んなことを調べている。


とても有意義な時間だ。ハナちゃんは晩御飯を食べて、現在台所の椅子で眠っている。


次は何を作ってあげようかな。何を買ってきてあげようかな。

甘いものをあげたらめちゃくちゃ喜ぶから、クリスマスはケーキ、正月はおしることか作ってあげてもいいな。


話せるようになってきたら角崎と一緒にパーティーとかしても良さそうだ。

まあ、にゃんにゃん言ってるハナちゃんを見れなくなるのは寂しい気もするが。


これからの未来を想像しながら、うとうとする。

そのうち両親にも話す時がくるのだろう。


高校は、大学は、戸籍はどうする。

あんなに美人なんだ。いつかはいい相手を見つけてくることもあるはずだ。その時私は、相手に打ち明けることができるだろうか。


ガラッ。


「なーん」


だんだん思考が不穏になってきたところで、リビングの扉が開き、ハナちゃんの声が聞こえる。


「なーん」


どうやら俺を探しているらしい。俺からも見えないが、キョロキョロ辺りを見渡している気配を感じる。


私はスマホを地面に落とし、両腕を使って体を起こす。


「ハナちゃーん」


ハナちゃんは俺に気づき、勢いよくおちらに走ってくる。


あっやばい。


「ハナちゃんちょっと待っ」


猫の時の勢いのまま、ハナちゃんは思いっきり机に飛び乗る。

机の上の物を蹴散らかしておいて、ハナちゃんは、その音に驚いている。


ゴトッ、ガタッ、ガシャン、様々な音が聞こえてくるなかで、私は懐かしさを感じていた。

ハナちゃんは、私の目の前で女の子座りをして私を見下ろしている。


「にゃーん」


少しテンション低めの声、本当に懐かしい。

猫の時も机に飛び乗って、座る俺の腹に乗ってお腹が空いたと食べ物をねだってきたものだ。


「にゃん」


あー可愛いー。


私は頭を撫でると、ハナちゃんはふにゃふにゃ言いながら気持ちよさそうに手を舐める。


私は再度椅子にもたれかかり、太ももをポンポンと叩くと、ハナちゃんは前足、というか腕を太ももに乗せる。


「にゃーん」


猫の時より感じる重みや、手のひらの感覚が違う、それでも挙動やハナちゃんの表情が、あの頃を思い出させる。

私は両手でハナちゃんのほっぺたを包み込んで、撫でる。


可愛いなー。


「にゃーん」


ハナちゃんはそっと右に体をずらして、私の体から、床へと降りる。

その時に思いっきり足を踏んずけて行くのが、実にハナちゃんらしくて微笑ましい。


ハナちゃんは、今度は私の左どなりに座っている。

前から横に移動したことで、吐息がかかるくらいに、ハナちゃんの顔が近くになる。


「にゃーん」


ハナちゃんは、こたつの中をちらちらと覗いている。


「こたつ入りたいの?」


「にゃーん」


私の左頬のすぐそばで、なくハナちゃん。


「かーわいーなー」


私はニヤニヤしながらこたつの布団を高く持ち上げる。

別に私がやらなくても入れるのに、わざわざ机に乗ってねだってくるのがめちゃくちゃ可愛い。


そろそろとこたつの中に足を踏み入れるハナちゃん、私は昔を思い出して、足を少し大きく開ける。


するとハナちゃんは、私の膝からすね辺りを枕にして寝た。


あああああああああああああ。

可愛いいいいいい。


顔はこっちに向けて、脱力したように眠りこける。その柔らかいほっぺの感触が直に伝わって、猫の時よりもムズムズが凄い。


猫系女子として男子に人気がでるやもしれんな。


私はこたつの布団を閉じた。

ハナちゃんが暑がるといけないから、少し温度を下げておく。


ハナちゃんの髪が足に当たってこそばゆいったらありゃしない。

こんな状態じゃ寝ることすらままならない。


私は床からスマホを拾い上げた。

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家に帰ったら猫が美少女になってた話 文虫 @sannashi

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