第7話 賢者アースラ
チャプチャプと耳元で水がゆれる音が聞こえる。新太が目を覚ますと、雲ひとつない青空が視界いっぱいに広がっていた。上体を起こすと、自分が砂浜の波打ち際で寝転んでいたことがわかる。
「どこだ、ここ?」
新太は辺りを見回した。砂浜は左右どちらも数メートル先で岩礁に突き当たり途絶えている。後ろを見れば、鬱蒼とした森が広がっていた。
新太は急に不安になる。これは夢の続きか、自分は夢から脱出できなかったのかと心配になった。新太は立ちあがり、
「お、おいっ、喜一! みんな、どこかにいるのなら、返事くれ!」
「なあに、アラタ」
木々の合間から、喜一が現れた。背中に男の子をおぶっている。
「喜一!」
新太は急いでかけよった。
「大丈夫か、ケガないか、ふたりとも」
「うん。大丈夫。この子も眠っているだけだから」
「そうか、よかった……」
新太はほっと息をついた。新太は男の子の寝顔をのぞきこみながら、
「なあ、喜一、おれたち脱出できたんだよな。夢の牢獄から抜けだせたんだよな」
「うん。できるに決まっているでしょ。ぼくとアラタ、ふたりで力を合わせたんだし」
「そうだよな。本当、そうだ……」
「うん! それに、こうしてみんなともまた、会えたしね」
喜一は男の子の体を軽くゆさぶった。男の子はよく眠っているようで、軽い寝息を立てている。
「そっか……よかった」
新太はほっとした。夢の牢獄から脱出できた喜びがじわじわと胸を占める。
「そうだ、他の子たちは? みんなはどうなった?」
喜一は森を指さし、
「大丈夫! みんないるから。森の奥、少し行くと浜辺になってるの。そこにみんな寝ているよ。ぼく、往復して、みんなをここに連れてくるから。待っていて」
そう言うと、喜一は男の子を新太に託して、森の奥へと消えた。そうして、女の子をふたり抱えてくると、地面に横たえた。
「みんな、よく寝ているな」
「うん! 気持ちよさそう!」
「みんなが起きるまで待つか」
子どもたちを浜辺に寝かせ、ふたりはその場に腰を下ろした。うららかな春のような日差しに、穏やかな海が目の前に広がる。海からは潮の香りはしない。海水というより別の何かなのかもしれないと新太はぼんやりと思う。静かに寄せては返す波を見つめながら、新太はぽつりとつぶやいた。
「なあ、喜一、ここどこかわかるか? ここもアンタカラの一部なのか?」
「うーん、わかんない。でも、アンタカラだと思うよ」
ホラと言って、喜一は斜め右手を指さした。新太は今、初めて気づいたが、水平線の向こうにぼんやりと雲で覆われた銀の塔が見える。アンタカラの海に沈む前に、アヴィンサが飛んでいった塔だ。
「あそこに、アヴィンサがいるよ」
そう言って、喜一は瞳をギラギラと輝かせた。
「そうか。アンタカラから抜けだせたわけじゃないんだな」
新太はわずかに失望する。だが、夢から抜けだせただけマシだ。新太は次を考える。
「どうすっか。みんなが起きたらこの辺、探索するか」
「あ、ぼくね、歩いたよ。ここ島なの。だいたい三十分くらいで周れるよ」
「マジで? お前いつ周ったの?」
「ぼくね、起きた時、アラタが隣で寝ていたの。起こしたけど起きなくて、だから、ぼく、ひとりで探索にでかけたの。みんないないかなって思って。それで、あっちうろうろこっちうろうろして、だいたい三十分!」
「へー、すごいじゃん、お前」
「本当? やった!」
喜一は鼻が高そうに顔を上にあげた。
「そういえば、お家あったよ。だいたい島の真ん中辺に。木造の小さなお家」
「お家?」
「そう。アラタが起きるかもと思って、よく見てこなかったけど、お家あったよ」
「……家か。あとで行ってみるか」
「うん!」
喜一の隣で眠っている男の子がごろりと寝返りを打った。
「う~ん……」
「お? みんなそろそろ起きるか?」
のったりと男の子が起きあがると、つられるように、女の子ふたりも起きてくる。
「お前ら、いつまで寝てんだよ。っていうか、よく起きたな」
寝ぼけ眼の三人に、新太は嬉しそうに微笑みを向けるのだった。
目の前をさえぎる小枝を新太は危ないからと手折った。後ろには子ども達三人と最後に喜一が続く。鬱蒼とした森の中を新太たちは列をなして進んでいた。
新太は後ろにいる喜一に目をやり、
「喜一、本当にこっちであっているのか?」
「うん! 大丈夫だよ、まかせて!」
「そうか……」
新太は前を見つめた。目の前は木々が生い茂り、行く手を阻むように、細い枝があちらこちらから伸びている。地面を見ると、唯一、獣道なのか、下草がなく枯れ葉が積み重なった地面が見えた。新太は枝をよけたり手折ったりしながら進むも、徐々に不安になる。
子どもたちが起きた後、みんなで話し合いとなった。まずは、この島から脱出しようと、イカダとなる材料を探しに行くこととなる。そこで真っ先に、喜一が話した木造の家に行くことにした。なにかイカダに使える工具や材料があるかもしれないからだ。
男の子が頭の後ろで手を組みながら、
「それにしても、ビックリしたよなあ。あの夢のなかの星が、アラタくんとキイチくんが打ち上げたものなんてさ」
「本当だよね。昼間に星が上がったと思ったら、真っ白になっちゃって、気がついたら目が覚めていた」
「もっとねてたかったなあ」
小さな女の子がそう言うと、死んでもいいのかよ、バカと男の子からツッコミが入る。新太はそれを横目で見ながら、微笑ましく思った。なんにせよ、みんなが無事でこうしていられるのがありがたい。
と同時に、仁はどうしているだろうと不安がよぎる。星を見て、目覚めた子どもたちのなかにはいなかった。喜一が、アヴィンサのところにいるのかもしれないと言っていた。今は、その言葉にすがるしかない。
木々の生い茂る獣道を十五分ほど進むと、目の前が開けた。木立の中、たしかに、三角屋根の簡素な木造の家がある。パッと見て、人がいる様子はない。新太たちは近づいてみることにした。
山小屋のような家のひとつしかない窓にそっと近づき、中をのぞく。白いレースのカーテンがわずかに開いており、そこから木製のイスとテーブルが置かれているのが見て取れた。他にも何かありそうだ。
新太たちは話し合い、家の中に入ってみることにした。鉄さびの浮いた古びたドアノブを回すと、あっさりと回る。どうやら鍵はかかっていないようだ。
「おじゃましまっす」
新太は小声でそういうと、恐る恐る扉を開けた。蝶番もサビているのか、ギイっという鈍い音をたてて扉が開く。なかは窓から光が入るだけあって、室内を充分見てとれるくらいには明るい。部屋の中心には二脚のイスとテーブルが置かれており、新太から見て、左奥の壁には、クローゼットがある。右側の入り口近くの壁にはチェストが置かれていた。どれも使われていないのか、うっすらとホコリが積もっている。よく見ると、あちらこちらに蜘蛛の巣がかかっていた。
「うげっ。カビくせぇ」
かび臭い空気に新太は思わず鼻をつまむ。真っ先に、左の窓際に近づいた。新太が室内に入ると、子ども達もつられるように入ってくる。みなそれぞれ、興味深そうにあたりを見回した。
新太が窓を開けると、新鮮な空気が入ってくる。新太は深呼吸して、その空気を肺に満たした。
「どうだ? なにか見つかったか?」
新太は振り向き、子ども達を見た。だが、子ども達は硬直したように、新太を見ている。
「?」
なんだろうと新太は首を傾げた。見れば、子ども達は新太の左後ろ側の空間を見ているような気がする。
「どうしたんだよ、お前ら……」
「アラタ、左、左……っ」
喜一が女の子の影に隠れながら、左を指さす。
「左?」
新太は左後ろを振り返った。そこには、身長が二メートル程あるだろうか、青紫色をした、モップを頭からかぶったような毛足の長い怪物が立っている。
「!」
新太は驚きの余り、声を失った。腰から力が抜け、その場にストンと座りこむ。
「アラタ!」
「新太くん!」
新太はその場から逃れようと、上体を支える両腕に力を込めた。お尻をズリズリと後ろに動かして、なんとか移動しようとする。
テーブルごしに、子ども達が声をあげた。
「新太くん、逃げて!」
「アラタ!」
逃げられるものなら、逃げている。だが、腰が抜けて立てないんだと、内心悪態をつけながら、新太はなおも腕を動かす。だが、移動できたのはごくわずかだ。怪物が動けば一瞬で捕まってしまうだろう。
怪物はゆらゆらとその場で毛足を揺らしながら、たたずんでいる。新太は怪物を注視する。何かあった時、対処できるようにするためだ。だが、焦りと緊張で、手足がうまく動かない。汗で右手が滑り、新太は肘でなんとか上体を支えた。と同時に、怪物がぐわっと体を大きく伸ばして新太に迫る。
「!」
食べられる! と思い新太は目を閉じ身構えた。すると、怪物から笑い声が聞こえた。
「すまない。人の子よ。悪ふざけがすぎたな」
「……へ?」
新太が呆然と見上げると、怪物は直立し、体をゆらゆらと揺らした。すると、ストーンとモップのような毛並みの体が床に落ち、タンクトップに短パンを着たスラリとした女性の体が現れる。新太が床に落ちた怪物の体の一部を見ると、どうやら木のカゴに毛束が結びつけてあるようだ。
子ども達が唖然と見守るなか、その女性は頭の被り物も取って見せた。中から黒髪を腰まで伸ばした、きりっとした目元が印象的な精悍な女性が現れる。肌は浅黒く、顔のホリの深さから中東アジア人を想像させた。
新太たちはあっと驚いた。まさか、こんな島に、自分達以外の人間がいるなんて思いもしなかったからだ。
だが、ふと、新太は思いなおす。女性が溶け残ったアンタカラの住人である可能性が高いからだ。
新太は一歩距離を置き、警戒しながら、
「っていうか、お前誰だよ。アンタカラの住人か? おれたちをハメようとしているのかよ」
「……」
黒髪の女性は涼やかな眼差しで、新太をじっと見て、笑みをこぼした。ついで、大爆笑する。
「アンタカラの住人ね。この私がアヴィンサの、アンタカラの住人に成り下がるものか。三千年ぶりに面白い冗談をきいたわ」
「は? ……じゃあ、誰なんだ、お前」
女性は言葉をかみしめるように、静かに笑い、ついで爆笑した。右手を伸ばし、左手を胸に当て、
「誰と聞かれたら答えよう。私はアースラ。東方の三賢者がひとり、賢者アースラなるぞ」
「は? 賢者?」
「え? 東方の三賢者って、トップスターの由来にでてくる人?」
喜一がテーブルから身を乗りだして、興奮気味に言う。新太は驚いたように喜一を見た。
「あ、ぼくね、百々花と一緒に色々なクリスマスの絵本読んだの。その中にトップスターの話があったんだよ。東方の三賢者がひときわ大きく輝く星を目指して旅したら、赤ちゃんのキリストに出会うの。そのひときわ大きく輝く星、キリストの誕生を知らせる星、それがキリストの星。クリスマスツリーの天辺に飾るトップスターの別名だよ」
「へー、さっすが、ツリーマニア」
「まかせて!」
「うむ。よく知っておる。知に従うは正解だ」
へへっと喜一は照れ笑いし、ふと気づいたように顔をあげた。
「あれ? でも、東方の三賢者って三人でしょ。みんな、男性だったような……」
「ほう。よく知っておる。だがな、それは通説だ。本来は集団だったのさ。男女それぞれからなる賢者の集団。私はそのうちのひとりだ」
「そうなんだ!」
「で、その賢者がどうしてこんなところにいるんだ。あんた、なに? アヴィンサとどんな関係なの?」
「そうだな。久しぶりに人間に出会ったのだ。一興にアヴィンサとの関係を話すのもよかろう」
アースラはどこにあったのだろう、古めかしい木製のイスを取りだし、片膝をたて、腰かけた。昨日のことのようにはっきりとした口調で、
「私たちの集団は中東にあり、主に占星術や天文学、占いなどを生業にしていた。そのなかで、自然科学や神学、哲学など、実に様々な学問を研究していたよ。いわば、学者集団だな。私は魔術を研究していた」
「へー、魔術」
「そうだ。魔術とは科学だ。科学ゆえに、自然の法則にのっとって物事を解明、変化、変質、変容、再現を行う。ただ、自然科学などの一部を扱うだけではないぞ。私たちの肉体のある物質界だけでなく、霊的な――神や天使、精霊、悪魔、人の魂、そういった世界も扱うのだ。いわば魔術とは宇宙全体の法則を解き明かし、制御しようとする科学なのだよ」
「へー、そうなんだ」
「すごい、すごい! 魔法すごい!」
「魔法ではない。魔術だ。魔法とはそもそも……」
「あ、そこの説明いいんで、次、お願いします。アヴィンサとの出会いの話をひとつ」
「そうか……ふむ」
アースラは残念そうに、アゴをひとなでした。記憶をたどるように、
「アヴィンサとの出会いは、いつだったか、気がつけばあやつは私たちの集団にいたのだ。なんでも願いが叶う『巻物』として」
「巻物?」
「そうだ。最初は巻物だった。あれは時代とともに媒体を変える魔人だ。なんでも願いを叶えるかわりに、人の魂を喰らう。だが、古代は神だったとも聞く。子どもを守護する神だと」
「へー。神さまがなんで、人の魂を食べる魔人になったんだ?」
「これは私の推測だが、アヴィンサは愚かだったのだ。元来、アヴィンサは人に喜びを与え、そこで得た喜びのエネルギーをほんのわずかに摂取し、自らの力としていたのだろう。だが、人の子に訪れるのは、喜びばかりではない。怒り、憎しみ、悲しみ、絶望……そのようなものは、日々、人の子の身の上に起こる。アヴィンサはそれに深く嘆き、同情したのだ」
アースラは、得心したように頷いた。
「アヴィンサはある日思いついたのだろう。人の子に不幸が起こるなら、何も不幸が起こらない楽園を作ろうと。それが、『奇跡の町アンタカラ』だ。あやつを魔人たらしめている根本だ。ある意味、あやつの希望とも言える。だがな、私にしてみれば、あやつは間違えたのだ。愛と情けを」
段々複雑化してくる話に、新太はもはやついていけない。喜一だけが、興味深そうにうなずきながら聞いている。
「愛とは人を信じ育てることだ。だが、情けとは自分の中にある『可哀そうな自分』を持ちだして、他者に映しだして見ることだ。そうすることによって、相手を『可哀そうな人間』と見る。あやつは自分の中のいじけ、ひがみ、すねる、そんな『可哀そうな自分』を人の子のうえに投影したのだ。悲しい、辛い出来事があったら、誰かになんとかしてもらわない限りはそこから歩めないと思っておる。だがな、本当は、『可哀そうな存在』はどこにもいない。しいていえば、自分の中にしかいないのだ」
アースラは、冷めた目で、
「だから、『情け』でつくった『アンタカラ』に入った者はでてこられない。『情け』に引っ張られて集ったのだ。みな、自分が可哀そうな子どもだと思っている。被害者意識を持っている。そういう子どもは自分で人生を選べると思っていないので、でてこられない。それが、あやつを魔人たらしめ、被害者意識を持つ子ども達との永遠のループになっている。だがな、お前たちはちがう」
アースラは力強い眼差しで新太や喜一、子ども達を見た。ハッキリした声で、
「この世界にいて数多の月日が流れた。そのなかで、お前たちだけが唯一、この『アンタカラの海』を超えてきた。お前たちだけが唯一、自分の意思、希望を取り戻して還ってきた。これはかつてないことだ。素晴らしいことだ。お前たちなら、この世界から元の世界に戻ることができるかもしれん」
新太は内心、疑いながら、
「そうなのか?」
「ああ。アンタカラの海を越えてきたのはお前たちだけだ。私はずうっとお前たちが現れるのを待っていたのだ。今こそ、この世界から脱出する時なのだ」
「アースラさんは、自分の力で逃げられないの?」
「私は無理だ。私はアヴィンサによってこの島に閉じこめられている。私がこの世界からでられるのは唯一、アヴィンサが消滅した時だ。そして、私はもはや人ではない」
「じゃあ、なんだっていうんだよ」
「私はもう死んでいるのだ。アヴィンサを封じこめようとした時にな。仲間に裏切られ、失敗したのだ。いわば、ここにいる私は魂だけのようなもの。だが、ここに長い時間過ごすうちに、精霊のようなものになってしまった。アンタカラから脱出できる力を持つのは、強い意思を持つ人の子、おぬしらだけだ」
新太と喜一は互いに目を見合わせた。脱出できるのは人間だけといわれてもピンとこない。他の子ども達も飽きてきたのか、そっぽを向いたり、鼻歌を歌ったりしている。そんな子ども達を見て、アースラは、咳払いをした。
「いいか。よく聴くがいい。人の子よ。アヴィンサが言っていただろう。この世界の物を持ち出せるのは、人間の強い意思の入ったものだけと。それが、あやつがこの世界を作った時のルールだ。それには人間の体と魂も含まれる……ゆえに、それが、あやつの本当の願いだ」
「本当の願い?」
「そうだ。魔人となった今でもあやつの心の底は聖性なのだろう。人の子がいつか、自分を突破して、アンタカラから脱出するのを待っておるような気が私にはするのだ。なんでも願いが叶う楽園から人の子が辛きことが多い世に戻るとき、その時こそが、あやつの本当に望む、人が希望に生きる姿なのかもしれん」
まあ、全て私の憶測に過ぎないがな……とアースラはポツリとつぶやく。窓から差しこむ光がアースラのすこし寂しげな顔を浮かび上がらせた。
新太は、両腕を頭の後ろで組み、
「ふーん、まあ、なんでもいいや。ようは、おれたちが脱出すればいいって話だろう」
「そうだな」
「うん! 大丈夫! 行こう行こう! アースラさんの願いも、アヴィンサの希望も、全部ひとまとめにして、僕たちが叶えるよ!」
「お前、いいとこ持ってくな、喜一!」
新太はにやけたように笑う喜一の肩を組み、頭をなでた。
「……それでこそ、だな」
アースラはふっと笑うと、窓を開けた。草木が茂る森の中、わずかに草の丈が短い場所がある。そこを指さし、
「あの獣道を行け。その先には海岸がある。海岸の岩陰に、私が魔術をかけた船がある。いつか来る日に備え、おぬしらのような子どもたちが乗るように作った船だ。白銀の塔に向かえ。その塔の最上階、そこにアヴィンサはいる」
「そうか。いよいよだな」
「うん! 楽しみ! アヴィンサ、どんな顔するかな」
他の子ども達も足をバタバタさせたり、緊張を抑えきれない様子だ。
アースラは軽く笑い、
「そうはやるな。慎重に行け。油断すればアヴィンサに足元をすくわれるぞ」
「わかっているって。気を引き締めて行こうぜ!」
「うん! アンタカラから脱出だね!」
新太たちはアースラから船の説明を受けた。お礼を言い、扉からでていく。アースラはその希望に満ちた背中を見送る。ポツリとつぶやいた。
「人の子らよ、その思いの強さ、しかと見届けさせてもらおう」
扉が閉まるとともに、アースラも目を閉じる。そうして、姿を消してしまった。
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