第88話第2回花火大会
今日は待ちに待った第2回花火大会の日だ。
普段の京の
気の早い者は、1週間前から京入りをしている。
それ程に、日本国内でも有名になっていた。
今川城から武家屋敷の大通りには、屋台が昼からオープンして賑わっていた。
水風船屋。
焼きとうもろこし屋。
お好み焼き屋。
たこ焼き屋。
綿菓子屋。
輪投げ屋。
おみくじ屋。
かき氷屋。
冷やし飴屋。
など様々な店が並んで、道行く人は買ったり食ったりして夜になるのを待って居た。
「おじちゃん、そのキラキラ光ってるのなーに」
「お譲ちゃん、これは氷だよ。冷たくて甘い飲み物の冷やし飴だから美味しいよ」
「お母さん、買って」
「しょうがない子だね」
あっちこっちの川沿いには、大勢が詰めかけて白浜屋の方向に向けて陣取っていた。
親子なのだろう。持って来たゴザをひいて、座りながら方向を確認している。
「いい場所が取れたぞ。ここならよく見えるだろう」
「おとう、花火はまだかな」
「まだまだ夜までは、かかるな~ぁ、お前が早く行こうと言うからだぞ」
「みちゃん、ここだよここ。ここから花火がよく見えるって」
「ありがとう、たかちゃん。これが握ったばかりのおにぎりよ」
「みっちゃん、助かるよ。たかの奴がせかすもんだから・・・」
「どうせ夕方には、おっかあとおっとうにおばさんも来るもん」
ああ、何故なんだ。
いくら花火がいいポイントで見れるからって、俺の屋敷に集まるんだ。
3階建ての屋上から、真正面で白浜屋が見えるからって・・・
天皇自身が公家を引き連れて20人が来ていて、屋上で昼からビールを飲んで騒いでいる。
「今夜は無礼講だ、さあビールを持ってまいれ」
あああ、1人の公家がもう出来上がっているぞ。
そんな騒ぐ者をおいて、白浜屋で花火の準備でも済まそうと急いでいると、静香が我が子あやしながらやって来た。
その後ろには2歳になった坊が、ばあやの手を握って付いて来ていた。
「殿、わたしを置いてゆくのですか?」
「花火の準備があるから」
静香も付いて行きたそうな顔で俺を見てくる。しかし、くずる我が子を見て諦めたようだ。
「ばあや、坊は寝たかえ・・・」
「はい、寝たようです。ほんに可愛い寝顔で御座います」
2階のベランダで風に当たりながら、丸まった坊がすやすやと寝息を立てている。
「なにやら騒がしいと思ったら、公家衆でないか?」
「これは将軍様!」
「ああ山田だ、だったかな・・・
「花火の準備をしております」
「そうか、準備なら仕方ないな、夜までここで待とう。それにしてもあれは何を飲んでいるのだ」
「冷えたビールで御座います。おい三郎、冷えたビールを持って来い」
ジョッキに泡が溢れるビールが、テーブルの上に置かれて摘みの枝豆も置かれた。
「これがビールか?この泡はなんじゃ」
「ビールの炭酸が抜けないように泡でふたをしてます」
「泡? ・・・ぐびぐび、ぷはーぁ」
「どうでしょうか?」
「凄い飲み物じゃ、
「枝豆で御座います。このように指先でぷちっとすると豆が出て、大変においしいものです」
「もぐもぐ・・・おおビール後にはいいな、もぐもぐ」
夜になると、今か今かと夜空を大勢が見ていた。
「バン、ヒュ~ドン」
夜空に花火が咲くと、方々から歓声が沸き上がっている。
「バン、ヒュ~ドン」
迫力ある打上げ音と、華やかな光のコラボが広がってゆく。
「みっちゃんきれいだね」
「そうね、たかちゃん」
「やはり御所からみるより、ここが1番いい・・・これ!誰かこやつを帰らせろ・・・ほんに酔うほど飲みよって」
「勇はまだ来ぬのか?」
「遅いですね・・・」
我ら夫婦は、2階のベランダから子供を見守りながら、花火を楽しんでいた。
「今から300連発が見られるぞ」
「あら本当に連続に花火が上がっているます。なんと凄いのでしょう」
「あれが終われば、最後に3尺玉が打ち上がるだろう」
「バン、ヒュ~ドン」と大きく音がして見事な花火が夜空一杯に咲いた。
「ああ、あれが花火と言うものなのか・・・生きながらえて、きれいなものが見られた。これも
「何を言われますか・・・京に名医と言われる方がいらっしやいます。そこに行けば足の痺れも治りましょう」
「前の将軍様には、恩 があるのだ・・・」
「その将軍が身を寄せている方だそうです」
「何、そこに居るのか・・・」
「居ると聞きました」
その夜空に向かって、人々は思い思いの願いを願っていた。
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