第86話フェリペ2世との交渉




フェリペ2世側は、3人の男が守るようにひかえていた。

こちら側は、木下藤吉郎と、忍者の猪野丸いのまるがいた。


「この北アメリカ大陸を西と東に分けてたいのか?」


「すでに西側と中央の一部は手に入れてます。そしてパナマ運河の通行も出来るのはどうですか?」


パナマ運河を知らなくて、何度も質問のやり取りが行なわれた。

そして、地図を見せてパナマ運河の規模を具体的に話した。

驚愕きょうがくが顔にあらわれて、話しやすい奴だと思ってしまう。

向こう側は、こそこそと話し合っている最中だ。


「我が艦隊を沈没させた武器が欲しい」


急にそんな話をするとは、いささか困った奴だ。

ここは、けん制した話から入るのがベストなのに・・・

それだけ気にしていた大問題なのだろう。


やはりそうきたかと思ってしまう。

ちゃんと事前に打ち合わせたように話を進めよう。


「魚雷と言う武器だが、50発でどうだ」


又も質問攻めだ。何度も質問に答えたのに理解が出来ていない。


「どうだろうか、1度使っているのを見る事ができないのか、そうでなければこっちもその条件をのめない」


藤吉郎も条件をのんでくれるなら、見せるのも容易いと思った。

結局、見せる羽目になった。





南蛮船に、魚雷装置を無理やり載せた船だった。

その船に、大勢のスペイン軍人が乗り込んでいた。

フェリペ2世は乗り込んでいない。用心深い男だからだ。


フェリペ2世が用意した的まで出航した。


「最新の船に乗せないのか? それにこの船は、我が国の船であろう・・・一部が改造されているが、間違いない」


「あなた方は、武器と言った。武器で我慢してもらうしかないと思うが・・・それともやめるか?・・・分かったこの船ごと引き渡そう。それでいいだろう」


この船を渡すことは決まっていたが、恩を売った形でいいだろう。


「それならば・・・いいだろう」




撃破げきはする目標は向こう側が用意していた。

なんとちっぽけな船なんだろう。

藤吉郎は、あんな船に当たるのかと心配してしまう。


「船長、大丈夫か? あんなに小さいぞ」


「大丈夫ですよ。うちの発射担当者を信用して下さい」


魚雷発射装置にたむろする軍人にも困った者だ。

発射担当者が「触るな!!」と必死にとめている。

それでもやめないで、スキを付いては触ろうとする。


「なんて奴だ。起動していたら発射してたぞーー」


発射担当者が怒鳴りだした。


船長もたまらず「他の者は、応援に行け!!」

10人が向かってガードに専念させて、ようやく諦めだした。


「準備に取り掛かれーー」


魚雷をセットするにも時間が掛かった。


「あれを動かした時は、何の反応をしなかったのに、なぜ動くんだ」


「そのボタンの意味は何なんだ」


あれこれ質問攻めが続くからだ。


「船長、セット完了」


「発射!」


「パシュウ」と発射された。



爆発が起きて、水飛沫みずしぶきが広がり瓦礫がれきだけが残っていた。




自前の船から見ていたフェリペ2世は「凄いな・・・あれに負けたのか・・・」


「水中を凄い速さで行くとは、思いもしませんでした。そして爆発するなんて・・・1発が当たれば沈没するのも当り前です」


「そうだな、知っていても急にはかわせまい」


「どうしますか? アメリカを諦めますか?」


「半分があるのだ。それでいいではないか・・・50発かもっと欲しいな」



そして何度も交渉して、後50発は買うことになった。




「それでお前たちの意見はどうだ。あの魚雷は使えるか?」


「使えます。すぐにも戦争してもよいぐらいです」


「それを聞いて安心した。それで何処を狙うかだ・・・」


「すでに決まってます。その積もりで交渉したのでは・・・」


スペイン側は、目障りなイングランド海軍とオスマン帝国海軍に使うことを考えていた。

スペイン海軍内でも、その話で持ち切りだった。いつ海戦すると息巻いていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る