第64話海外に向けて




今の日本は、好景気だった。

日本の道も整備されて、陸の物流も頻繁ひんぱんに往来している。


海の物流は、本郷海運が支配したようなものだった。

運搬船を大量に造船して、日本中の海を運航されている。



そして、本郷農法が日本中を駆け巡り、米や農産物が大量に収穫されるようになった。


天候不順で不作が続いた場合も考えている。

もしもの飢餓対策きがたいさくに、各地には緊急食料庫も建築済みだ。

不作地域に一気に食料を運ぶ手はずにもなっている。

それでもダメな場合は、俺がためていた食料を使えばいい。



そして近場の外国にも、貿易が始まっていた。



「殿、本当に行かれるのですか?」


「これも、男のロマンだよ。この時代には、南蛮人にオーストラリアが発見されていない絶好のチャンスなんだ。それに俺以外だと中々発見が出来ない気がするんだ」


俺は発見出来る事を確信しているので、向こうで移住する住民も大勢を船に乗せている。

全国から募った農家の次男や三男。

ながらく続いた戦で未亡人になった女性までも、応募に集まっていた。


「静香ーー、早く帰ってくるからな~」


「ご無事にお帰り下さいませー」


目の涙を浮かべて、手をふっている。

そんな静香の近くでは、黒田官兵衛の家族が同じように泣いていた。


「官兵衛も最後の別れをしないのか?」


「すでに別れを済ましています」


なんか男気をみせている。


この船は、旅客船用タイプに造船したので快適だった。

移住者は、初めてのベッドで戸惑っていたが、今では慣れてぐっすりと寝るようになった。



そして中央の広い部屋では演奏が始まっている。

乗っている移住者は、和楽器の演奏に酔いしれて聴いている。

琴や尺八に琵琶びわのもの悲しい音色が響いていた。


少しして、次の演奏が始まった。

琵琶の伴奏に合わせて『平家物語』を歌っている。


祇園精舎ぎおんしょうじゃの鐘の声、諸行無常しょぎょうむじょうの響きあり・・・・・・」



食事も豪華なバイキング方式で、好きな物を好きなだけ食べれる方式だ。

この船旅で、肥満になるのではと思う程、食っている者を見かけてしまう。

なので、酒類は禁止にしていて助かった。

下手すると甲板から海へ落ちる可能性もあるからだ。


それに船旅の序盤は、船酔いする者が続出して、俺の回復魔法で治療するしかなかった。


「ありがとう御座います」を何度も聞く羽目にもなった。





「殿、あれがオーストラリアですか?」


「違う、ソロモン諸島だよ。あんな小さなものじゃーないよ」


途中のソロモン諸島は無視だ。





「ようやく見えて来たな」


「あれがオーストラリアですか?なんと言うでかさなのだ」


「まあ、日本が何個も入るぐらい大きいぞ。ただし原住民はいるけど、いざこざだけは起こさないでくれ」


「分かっています。明智光秀殿からも聞き及んでいます。それにしても日本より大きいとは・・・」




そしてオーストラリアへ上陸。

キョロキョロと見て回っているのをよそに、俺は一団から離れた。

皆が見ていない事を確認して、一気に岩で出来た洋式の家を建ててゆく。

すでに慣れたもので、次々に頑丈な家が建ってゆく。

地中には、手頃な材料が揃っていて建築も順調だ。


しばらくして、案内すると驚いていたがスルーする。


「さあ、人数分はあるから代官の指示に従い家を決めなさい」


その途端に黒田官兵衛の前に、長い行列が出来てしまった。

官兵衛は、帳簿を見ながらてきぱきと仕分けをしている。



俺は、巨大な倉庫に米や穀物類を置いて、一息を付いていた。

これなら1年間は、食いっぱぐれることはないだろう。


そして周りに注意して探ってみた。

案の定、石炭の埋蔵量が半端ない程あるポイントを特定。

フリーハンドで描いた地図に書き込んでゆく。

それに、ここから南西には鉄鉱石を発見。

それも書き込んでゆく。


どうやらこの辺には、原住民は居ないようだ。


「おい、見ろよ。サルの太った奴が木の葉を食っているぞ」


「ほんとうだ、とぼけた顔をした奴だな」


家臣に何人かは、コアラを見つけて笑っていた。

そうか、コアラ以外にもカンガルーも居るんだ。



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