第40話淡路島




今川の殿様の指示通りに、播磨から両艦を出航していった。


【駆逐艦はばな・ながしま】の両艦で、播磨からもっとも近い先端の淡路島へ到着。

そこから小型ボートで、何度も淡路島へと兵を運び込まれていた。


淡路島は、三好の勢力圏であった。

たしか淡路守護の細川尚春ほそかわひさはるは、三好の淡路進攻によって敗れ、和泉から堺に逃亡。

そして捕まり阿波で殺されたんだ。

名実ともに淡路守護細川家は断絶してしまった。


そしてここには、淡路水軍が存在していて、淡路周辺の海を勢力下に置いていた。

今川の殿様は、それをヨシとしなかった。

その為の、阿波国を攻める最初の仕事に、目障りな淡路水軍を攻略することから考えた。



最初に乗り込んだ我が土木隊が、木を伐採して柵を作り出していた。

その後ろでは、テントが張られ拠点作りに勤しんでいる。


「急げーー、三好がいつ攻めてくるか分からないぞーー」


「そこの柵は、もう少し右に寄せろ」


そんな光景を俺は見ていた。

後ろでは、竹中半兵衛が測量隊に指示を出していた。


ここが淡路島の地図作成の始まりだった。




そんな陸上での土木作業を見守る者がいた。

甲板から双眼鏡をのぞき見ていた船長は、キセルを取り出して火皿にタバコをつめて火をつけた。

海上に浮かぶ駆逐艦には紀伊と書かれていた。


「船長、タバコなんて吸っている暇もありませんよ。淡路水軍が来ましたよ」


「どれどれ、成る程な魚雷の用意をしろーー、1発だけでいいぞー」


「聞いたか、準備に掛かれーー」


「狙うのは、あの大きな船でいいだろう」


「魚雷準備完了!目標方向ヨシ!」


「撃て!!」


海面に魚雷が通った白い帯が見えていた。

外すこともなく大きな船に命中して爆発。木屑きくずが舞い上がっていた。


しばらくすると、淡路水軍の動きが止まった。

大きな船に付いて来た、大小の船は一斉に引き返してしまう。

多分あの船には、水軍を指揮していた武将でも乗っていたのだろう。



第2軍に朝比奈泰能が率いる軍勢が、淡路島に乗り込んだ。

陸上の防衛を任せれた軍勢だった。


そして防衛体制が整った時間に、三好勢が小高い丘に現れた。


「いいか、殿より守れと言いつかった。絶対に守り通すぞ」





「船長、どうします」


「ライフルの射程内だが、揺れる甲板からだと50%も命中率が落ちるだろう」


「だから、我々を陸に行かせて下さい」


「分かった。殿様を危険な目に合わせるなよ」


「分かってますよ」


小型ボートが下ろされて、20人が乗り込むと動き出した。

次の小型ボートも下ろす最中だった。



見張り台によじ登り、息を整えだした。


「今日は、どれ程倒せるか賭けをしないか?」


「お前の腕は知っている俺に聞くのか・・・止めとくよ」


「ちぇ!しけた奴だぜ。そろそろやるか?」


「あんな所にカモが居るぞ・・・凄い兜が、目立ち過ぎだろーー」


「こっちは、既に倒したぜ」


「お前が倒したのは雑魚だよ」「ダンッ」


顔面の右目を貫通。そのまま後方へと倒れた。

下手すると兜内を跳ね返ってひどいことになっているかも。


高い位置に寝転ぶライフル隊からも発射音が、絶え間なく鳴り響いていた。


ライフル隊によって、武将クラスは撃ち倒されていた。


そんな三好勢に、全体の指揮する者がすでに居なかった。

戦況が読める者は皆無かいむであった。



その戦況を見ていた朝比奈泰能は、防衛から攻撃モードに切り替えた。


「突撃開始!攻めて、攻めて、攻め倒せーー」


そんな中で両軍がぶつかり合った。

今川勢は気力と覇気はきが充分で戦いに統率とうそつが取れていた。

三好勢の中でも不利だと何人かは悟っていたが、誰からも命令が無いまま倒され続けた。


逃げ出す者が現れた時には、すでに勝敗は決まっていた。




そして、充分な軍勢が揃った時に、淡路島の三好勢に攻めかかった。


快進撃を繰り返して、攻め進んだ。

洲本城すもとじょうは既に包囲されて、アリの這い出るスキもなかった。


そして、朝比奈泰能と松平元康が攻める準備をしている。


「ああ!洲本城が燃えている。誰か火を放ったか?」


「殿、誰もそのような事は、しておりませぬ。自ら火を放ったのでは・・・」


「それなら、降伏すれば良いのに・・・」



焼け崩れた山城では、捜索が続けられていた。


「むごいありさまで、見ているだけで気が滅入りますな~」


「これが安宅冬康あたぎふゆやすだと言うのか?顔の判別が出来ないぞ」


「仕方ありませんな。判別不能と書きしるすしかないかと・・・」



海上では、駆逐艦3隻によって淡路水軍は壊滅。

水軍の船が、何隻も海の底へと沈んでいった。

岸にたどり着く者は、わずか数十人だけだった。


この世から、淡路水軍が消えた日であった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る