*第13話 Dr.モロの島

「暗いから良く判らないですねぇ。」

手提げのオイルランプの灯りでは足元くらいしか照らせない。


『アカルイパショナル~』

ハニーが照明魔法の呪文を唱えた!

すると通路の照明具が反応して発光した。

良かった!まだ使える!


「うわっ!何ですかあれは!」

「ん?どれ~?」

「あの光ってるのですよ!」

「あぁ~照明具だよ~」


「ショーメイグ?」

「うん、魔法で光ってるの~」

「魔法・・・あれが・・・」


手提げランプなど比較にならない明るさの照明具が幾つも通路に並んでいる。

暗がりに馴れた目に痛い。


精霊の加護を失い人は魔法の発動が出来なくなった。

しかし道具に固定した魔法は保持されている。

例えば照明具がそうだ。


単なる平べったい白磁の円盤に呪文が刻まれている。

『パショナルデンキ』

電気じゃないけれど・・・


「あっ!これ知ってる!うちの遺跡からも出て来るやつですよ!」

「そうだろうね~どこにでもあるよ~」

「ほとんど割れてますけど、無事なのも何枚かありますよ!

あれも光るんですか?」


「だぶん大丈夫だと思うけれど~

精霊契約をしないと呪文を唱えても作動しないよ~」

「そうですか・・・」


もうしばらくは只のお皿だね。

実際にそ~ゆ~扱いをされている。

そうとしか思わないよね~


さぁ!気を取り直してお宝探しの再会だ!

埋蔵金はどこだぁ!


***


そんなものは無かった・・・が。

長い廊下の左右に幾つか部屋が在る。

会議室のような部屋や、資料室と思われる本だらけの部屋。


ただ、どの部屋も保存状態が良い。

密封されていたからだろう。

数千年も経っている感じがしない。

本も普通に読める状態だ。


「何ですかね?これ。」

「本だよ~」

「これが本ですかぁ!」


想像していた物とは随分と違った。

たしかに字がいっぱい書いて有る。

それにしてもなんて薄いんだ!

何で出来ているんだ?


「紙だよ~」

「カミ?」

「まぁ~簡単に言うと薄い木の板だよ~」

「へぇ~!」


いい加減な説明だな!


奥へと進むとまた扉が在った。

こちらはすんなり開いた。

中にはガラスで出来た水槽が在り、台座には呪文が刻まれている。

挿絵:https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16818093079307445521


あぁ~これは・・・あれだ・・・

培養槽ばいようそうだ・・・

もしかしたらこの施設は・・・


どの水槽も空だったので、何を培養していたのかは不明だ。

だがムーランティスのクローン技術を応用したものであるのは確実だ。


こんな研究をするのは・・・


「ゲライスだね~」

「ゲライス?」

「魔法と聖女が大嫌いな一族だよ~」

「でも、これも魔法具なんでしょう?」

「矛盾してるよね~」


そう!

この島はゲライス家の秘密基地だった!

大災厄の直後から百年くらいは、まだ精霊契約が有効だった。

いきなり消滅したわけでは無い。


しかし自然環境はすぐに激変した。

日中の日差しは狂暴なほどに強く、不用意に屋外へ出ると皮膚が腫れてしまう。

頻繁ひんぱんに吹き荒れる嵐に人々の暮らしは破壊されて行った。

当時ゲライス家の当主であり、マッドサイエンティストでもあった

モロ・ゲライスは、ある計画を立てた。


<人類魚完計画>

それがプロジェクトの名だ。


地上での生活に見切りを付けて、安定した海底世界に活路を見出し、

人類の存続を試みたのである。


つまり魚人を作り出そうとしたのだ。


しかし、その計画は頓挫とんざする事になる。

精霊遺伝子の破損率が限界を超えてしまい、

魔法が使えなくなったのだ。


もはや研究どころではない!

職員たちは施設を捨てた。

なんとかして生き延びねばならない。


ゲライスが渇望かつぼうした魔法の無い世界。

図らずも実現したわけだ。

文明の崩壊と絶滅の危機を引き換えに。


***


さらに奥へと進むと居住スペースとなっていた。

それぞれの個室に生活感の有る物は何も残ってはいない。


そりゃ~そうだろうよ。

職員たちはここを放棄し、戸締りをして出て行ったのだから。


「何か残ってないかなぁ~」


戸棚や机の引き出しをあさる。

い、意外と神経が太いねイリュパー・・・

まぁ、宝探しが目的だからなんだけれど、

ぱっと見はコソ泥だよん!


「何だ?これ?」


ベッドの下から箱が出て来た。

鍵が掛かっている。

これは!あれか?

いわゆる「お宝」か?


「ハニー様!お願いします!」

「いいよ~任せて~」


床に置いた箱に極楽鞭秘ごくらくべんぴを打ち込む!

嬢王様とお呼び!バッシィ~~~ン!


バキッ!

割れた・・・


アホかぁ~!お前は~!

力加減を知らんのかぁ!

サーシアか!


中身は無事か!

男のロマンは無事か!

中には十数枚の魔法紙が入っていた。


これは!やはりあれか!

良かった~破れてはいないようだ。


「なぁ~んだ~宝石じゃないのか~」

研究所の個室にそんなもんは無いよぉ。


「あぁ、エイガノッコスだね~」

「なんですか?それは?」

「映像を記録したり再生したりするんだよ~」

「???」

「見た方が早いね~」


お、おい!ちょっと待てハニー!

イリュパーにはまだ早いって!

無修正だったらどうするんだ!


ま、まぁ~そ~ゆ~知識も必要だし~

そもそも、この旅は子作りが目的なんだから

むしろ知って置くべきかも!


「んじゃ~再生するよ~」

良し!やれハニー!


『ドウガミ~ル!』

おぉ~~~!

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