第121話 リスクマネジメントって大事だよね
「あ、そうだ。
「
「うん!」
元気に頷く
嫌な予感というのはそうしようと思わなくとも察知できてしまうもので、あっと思った時には既にその中の一人の口が開かれていた。
「れいなっちがいるのに、みずっち浮気だ〜♪」
「みーくん、浮気しようとしてたの?!」
「そんなわけないでしょ。お母さんにお詫びとお礼の品を渡すだけだってば」
「そう言いながら奈月ちゃんのこと狙ってるんだ!」
「僕なんかが強く否定するのも申し訳ないから、それ以上勘違いを深めないで」
奈月はこのキラキラしたグループの中でも、クールで落ち着いた立ち位置だ。
それに合わせて、暴走する他3名を止める母親的な役割もになっているため、外見的にも性格的にも男子人気がかなり高い。
そんな女子に対して『好きなわけが無い』なんて言えば、それが火種になってドカーンと何かが怒らないとも限らないのだ。
静かに平穏に暮らしたい瑞斗にとって、それはマイナス要素でしかない。
ちゃんと「奈月さんは素敵な女性ではあると思うけど」と大きめの声で付け足しておいた。
「奈月さんが公園で花楓のことを守ってくれたから、保護者代わりとしてお礼を伝えに行きたいだけだよ」
「なんだ、そんなことなら手間をかけさせる必要もない。母親はアザのことを気にしていたが、私自身はそうでも無いからな」
「それだと僕の気持ちが収まらないよ」
「今の言葉だけで腹いっぱいなんだが、そこまで言うなら断るのも失礼か。母親には私から家にいてもらうように頼んでおこう」
「ありがとう、助かるよ」
これで心のモヤモヤを解決する術は手に入れた。
瑞斗が先に伝えておこうと奈月に「ありがとう」と頭を下げていると、何かを思いついた様子の真理亜が「ねえねえ!」とテンション高めに肩を叩いてくる。
「どうしたの、急に」
「どうせ来るなら、みずっちも勉強会に参加したら? その方が盛り上がると思うんだけど!」
「それは名案です。瑞斗さん、学年2位ですよね? 頭がいい人は何人いても助かります!」
「みんなもこう言ってるし、花楓からもお願い!」
3人から期待の眼差しで見つめられると、挨拶だけのつもりだった彼も少し迷ってしまう。しかし、どの道判断の権利は自分にはない。
瑞斗は玲奈の方をちらっと見ると、行くこと自体は許してくれてはいるが、浮気したら○すとジェスチャーで告げられた。
普通首の辺りを親指でスライドする程度でいいはずが、彼女の場合はそれに加えて殴りつけるモーションまで入っていた。
おそらく死んでも許さないという意味だろう。恐ろしいので疑われる行為も控えるように気をつけよう。瑞斗は心の中でそう誓いながらお誘いを引き受けた。
「やった、みーくんとお泊まりだ♪」
「……お泊まり?」
「うん! あれ、言ってなかったっけ?」
「土曜日に勉強会としか聞いてないよ」
「言い忘れてた……」
お泊まりとなれば話は変わる。何しろ自分以外は女の子であり、おまけに親がいるかどうかも分からない状況。
傍から聞いても何も起こらないはずはなく……というナレーションが脳内再生されそうなシチュエーションは、一応彼女持ちとしてなるべく避けるべきだろう。
そう考えて「やっぱり……」と言いかけた瞬間、目を潤ませた花楓に見つめられて言葉を詰まらせてしまった。
「無理、なの?」
「いや、えっと……」
「無理なんですか?」
「無理じゃないよね〜?」
「無理というかなんというか……」
最後まで踏ん張ろうともがいた彼も、3人の背後で『こうなったら止められない』と言いたげに呆れている奈月を見て項垂れる。
花楓以外にも人がいるなら万が一のことも起こらないだろう。そう自分を納得させて、渋々首を縦に振るのであった。
「…………」ジト
「
「…………」ジト
「そんな目で見ないで欲しいな」
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