第116話 何事にもしっかり準備して臨むべき
玉入れで午前の部が終わり、先生も生徒たちもお昼休みに入った。
本当は
「
「鈴木さんが居ないと作戦会議始められないよ」
「お手洗いでも行ってるのかな〜?」
帰ってくる途中でいつの間にか居なくなっていた彼女は、みんなが教室に集合してから5分ほど後になってやって来た。
本人によると水飲み場に寄っていたらしいが、その手には水筒が握られていたし、そもそも時間が掛かり過ぎている。
ただ、何かがおかしいという違和感は覚えながらも、確証もなしにとやかく言うわけにもいかないので、
会議と言ってもそう大層なものではなく、それぞれの競技でどんな戦い方をすれば勝ちやすいかをおさらいしただけである。
午後の競技はリレーなど盛り上がるものが多い。その緊張感に押しつぶされないように、事前の入念な準備が必要なのだ。
「これにて作戦会議は終了。みんな、倒れないように水分と塩分はしっかり取っておくのよ」
「午後も頑張ろうね〜♪」
そう言って黒板の前から離れた玲奈は、真っ直ぐに瑞斗のところへとやってきてお弁当を広げる。
特に変わったところはないはずなのだが、どこか彼女の視線や歩き方が気になっていた。
しかし、何も言わないのなら本当に大丈夫なのだろう。そう思い過ごしだったと自分を納得させ、彼はいつも通り昼食を食べ進める。
この時、ちゃんと心配しておくべきだったのだと、後になって悔やむことになるとも知らずに。
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昼休み明けに行われた台風の目は見事A組が1位。他のクラスにある程度の差をつけて、午後の部を開始することが出来た。
次の競技は待ちに待った大玉転がし。珍しくやる気に満ち溢れている
瑞斗も玲奈を連れて行こうとするが、彼女何やら俯いて招集のアナウンスに気が付いていないらしい。
「鈴木さん?」
「……何かしら」
「大玉転がし、集合だってさ」
「ごめんなさい、ぼーっとしてたわ」
「体調が悪いの?」
「いいえ、考え事をしていただけよ」
「それならいいけど……」
玲奈はゆっくりと立ち上がると、彼の横を抜けて門の方へと向かって行く。
その後ろ姿にはやっぱり何もおかしなところは無いが、それが逆に何かを隠しているための完璧さのように見えて胸がざわついた。
しかし、そんな考えは「早く行くわよ」と急かされた瞬間に弾けてしまって、再び現れることは無かったそうな。
大玉転がしも花楓が大玉の下敷きになったりはしたが、特段何かが起こることもなく終了した。
だから、ずっとそこにあった違和感はやはり勘違いだったのだと安心した矢先のこと。
体育祭の大目玉である男女混合リレーでバトンを受け取った直後、玲奈の体がおかしな揺れ方をして、そのまま転んでしまったのだ。
すぐに立ち上がって動き出すものの、いつものように綺麗なフォルムで走ることは出来ないらしく、リードしていた他のクラスにも次々に抜かされていく。
三位から数十秒遅れで何とかゴールをすることは出来たが、順位としてはもちろん最下位。
彼女は他のリレーメンバーと合流するよりも早く、担架に乗せられて保健の先生のところへと連れて行かれた。
瑞斗も他のみんなも、ただただその予想外の光景を前に立ち尽くすことしか出来なかった。
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