page27

『ただいま』


『おかえりー!』


帰宅するとソファに座るミナが元気そうな声で出迎える。綾が来るからテンションが上がってるのだろう。

時刻は18時、まだ来る時間ではないな。


『意外と早かったね、どうだった?』


ミナが興味深そうに聞いてくる。


『とにかく疲れた…もう勘弁だな』


表情を曇らせて俺がそう言うと、ミナは呆れ顔になった。


『うわ…運動不足の人のセリフだ…』


『俺は運動不足だよ』


図星というより事実を指摘されたのでそのまま返した。


『全く…開き直らないの!』


強い口調でそう言われたが特に開き直ってるつもりはない。というかいつもそんな感じのやりとりはしている。


辺りを見渡すと、朝は着替えや物が散乱していた部屋がかなり片付いてることに気づいた。


『部屋がすごい片付いてるな』


『綾ちゃん来るし、これくらいしとかないとね』


あまり掃除が好きでは無いミナも、流石に来客があると気合を入れるようだ。


『俺の部屋も掃除してくれてよかったんだぞ』


『するわけないでしょ…てゆか部屋に入られても恥じらいすら無いんだねお兄ちゃんは…』


呆れた顔でそう返される。

ミナは立ち上がりキッチンに向かった。

キッチンでは何かをオーブンで温めているようで、その様子をミナは覗いていた。


『何作ってんだそれ』


『グラタンだよ、懐かしいでしょ』


そう言われて鼻を尖らせてみると確かにグラタンのような匂いがした。昔家でお母さんがよく作ってくれた得意料理だ。


『綾くるからグラタンってことか、レシピとかわかるのか?』


『うーんなんとなくね、昔作るとこは見てたからさ、まあ完璧ではないけど』


『楽しみにしとくよ』


『うん、期待しといて!』


えっへんと言わんばかりの表情をする。

ミナは料理が得意なので自信はあるのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る