第18話 アバ登場

 アボパパは、真太達四人を連れて、柳君ちへは直行はしなかった。

「翼君が、帰りたくないなら金沢君は帰ってもらおうかな。ママが心配して待っている事だろう」

 真太も、そうかも知れないなと思った。

「良いんですか、それじゃあ俺は抜けさせてもらいます。良いかな悠一。俺としてはちょっと家に帰りたい気分」

「そりゃそうだよ。うちのママが変な事言った所為で、ごめん」

 と言う事で、ロバートを家まで送ったアボパパは、

「君も、お母さんも、今日は家から出ないで欲しいな。念のために。この家は結界を張ったから大丈夫と思うが。入って来れない人が居たら。呼び入れるんじゃあないよ。魔物に取りつかれているかもしれないからね」

 と、恐ろし気な注意をするので、ロバート君は震えあがって、慌てて家に入って行った。

 パパは、

「ここは多分大丈夫だな。ここの親子は馬鹿ではないし」

 と言って、次は真太の家に行った。

「翼君はお家で千佳由佳と遊んでいてくれ。叔父さんたちが帰ってくるまで、絶対外に出ては駄目だからね」

「分かった」

 翼は納得して家に入った。中では歓声が上がっている。どうやらままごとの役者を歓迎している様子だった。

 アボパパは、

「敵地だからなあ、俺だけで大丈夫かな。アバ、来ないかなあ」

 等と呟いている。真太はギョッとして、

「そんなに危ないの」

 と言うと、

「柳君や、お前が居るからな。お前も家に残れと言いたいところだが、どうせ嫌がると思って、言わなかった。事の前にもめるのは良くない。柳君、別に君は怯える必要は無いぞ。自分の家だろう。これは、俺たちの問題だからね」

 真太は、『でも今、柳君と俺がいるからと言っていただろうに』と、内心思っていた。翔の時の記憶で、止めを刺そうとすると、悠一に逃げ込む可能性がある事を思い出していた。

 逃げ出してきた奴を殺すには、もし強い奴だと俺では取り逃がしそうで不味いのだろう。

 それに、他にも昨日の石と似たような物もまだ有ると言っていたし。真太は、ちょっと困ってきていると、神社に着いた。

 鳥居の前に、アバが、戦いの装束で待っていた。ほっとする真太である。翔の時の記憶どおり、顔には派手な配色の縞模様、着ているものはどこかの舞台で、芝居をしている途中で抜けてやって来たような、派手で豪華な南国風戦いの装束である。

 神社の外で、車から降りながら、アボパパは、

「来てくれたのか、ありがとう」

「ふん、頼みたければちゃんと言いな。俺の良心に掛かっているような雰囲気で居やがる」

 アバが不満気に言うが、真太はどうしてアバはいつも俺らのピンチが分かるのかなあと思った。今の会話では、アボは頼んでいなかったようだ。車の中でも、『来ないかなあ』などと、期待しているような言い方だった。アボパパは、真太にこっそり、

『あいつは、この星全体の様子が分かっている。言わばこの星全体があいつの縄張りの様な物になっているな。大露羅殿や、極み殿が黄泉に行ってしまった今となっては、アバが最強だ』

 聞こえていると見えて、アバは、

「胸糞の悪いお世辞など言うな」

 と言った。

 真太は翔の時と違い、何だかアバが怖くなって来た。と言うのも真太にも小言を言い出した。怖くなる予感はあった。こっちをぎろっと睨むと、

「真太っ、昨日のお前の騒ぎで、俺は睡眠不足だ。大体、親の言いつけを忘れるとは、前世同様、利口では無いな。お前ら親子は、見ていてイライラする。アボは鳥居に隠れて、おろおろ見ているし、助けに行きたけりゃ、さっさと行け。アボが居るから俺の出る幕では無いからな。こっちは眠れずに、イラつくだけだ。結局鉄砲の弾ははじいてやり、おっさんや爺さんに入っている奴は殺していやがる。そのくせ助けた事は教えないし。自分で対処できたと思わせていると、今に大事になるぞ。甘やかすんじゃないアホアボ」

「そうだったの、パパ」

「あはは、言われてしまったね。お前が自分で何とか出来そうだったから、見ていたんだが。あの鉄砲の玉には地獄の毒が塗ってあってね、パパが危ないから、弾いて於いたんだ。真太が火を噴いた時に、出て来た彼らに取り付いていた奴も、ついでに殺して於いた。まあついでだから。親がかりと思われるのも友達の手前、いやだろうから、気付かれないようにしたんだけど、後で言おうと思っていて、言いそびれたな。家に帰ってきたら、真太は疲れて眠ったからね」

 真太は、確かにパパは自分を甘やかしていると分かった。

 柳君は龍神達のやり取りを横で見ながら、彼らも結構人情味があるのではないかと思った。龍神ではあるが。

 アボパパは、

「それじゃあ、柳君の家に上がらせてもらおうかな。ママは在宅のようだな」

 と言う事になった。

 アバは、

「俺は外の様子を見ておく」

 と言って神社を見回るつもりのようだ。

 真太達が家の中に入れば、ママもこっちが仕掛ける前に、逃げ出すはずだ。それとも、もう感付いているだろうか。

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