第12話 真太の前世、大部端折って語る
翌日また、真太の所に彼らは来た。真太は来そうな気がして、眠らないでおこうと、千佳由佳とゲームをしていた。お縁から、
「今日は寝てはいないようだな」
と声を掛けて来た二人である。
「昨日は久しぶりに運動をして、つい午後から眠くなってしまった。来てくれたのに悪かったな。上がれよ。親父は寝ている」
「何だか俺らが、親父さんを避けているみたいに思っているようだな」
金沢が言うと、柳は、
「実際寝ていればいいな、と思っていただろう。お見通しさ」
そう言いながら家に入って来た。入りながら、
「此処も、相当な結界だな。俺らが入れるのが、不思議なくらいだ。入って来る時、抵抗がかなりあったな」
「そうか、でも入れたんだから、無害だとママの結界が判断したんだな。最近一段と結界をパワーアップさせてある。俺、狙われちまっているからな」
「へえ、この前みたいな奴にか。結界はママがしたのか」
金沢が言うと、柳が、
「そうだよ、最初に真太たちが来た時、真太のママが、結界を張っていた。だからただ者じゃあないとは思っていたんだ。それなのにロバートは、真太に喧嘩売ってやがるから、どうなるかなと思っていたんだ。あの人に許してもらって良かったな」
「なんだよ、そういう情報はさっさと言わなきゃ。あの時、俺は身の危険を感じたぞ。マジ怖かったな。大体あの人、人類か?」
真太はそう言われて、ふふんと思ったが、黙っていた。由佳も今日はお利口でおしゃべりは無い。由佳を見ると、口を手でつまんでいる。これでは黙っていても大した違いはない。それを見た二人は、興味をそそられる様子である。千佳が、
「由佳お庭で遊ぼうか」
と連れて行こうとする。
柳が、
「今日は君らのおしゃべりは無いねえ」
と話しかけるが、千佳由佳はそそくさと外に出た。
ロバートは、
「昨日、不味い事を言ったと言っていたからな。それにしても、あの子たちの話はイマイチ変だったな。寝ていた時の事、真太は聞いたか」
「さあな、何の事」
真太はとぼけてみた。
「あの子達から聞いているんだろう。年上の子は利巧そうじゃないか。報告しているはずだがな」
柳も追及してきた。真太は唸った。
「うう、どうしようかな。パパは信用できると言ったけど」
二人は驚いて、
「パパが何だって」
「パパがお前らは信用できると言って居る」
「本当か。俺等って、お前の親父の評価では、信用できる奴なのか。何だか鳥肌が立ってくる。怖いな、見透かされているんだ」
「信用できるは、誉め言葉じゃあないのか」
真太が怪訝そうに聞くと、
「いや、俺、わざと悪ぶっていたんだけどな。見透かされているのが怖いんだ。今までそんなこと言う奴は居なかった」
ロバートは、見ると本当に鳥肌が立っている。
真太は、
「どうして悪ぶっているのか知らないけど、パパに掛かったら本性はお見通しだ」
「超能力者なのか」
「黙っているんだろうな。絶対」
「秘密は守る」
「俺とパパは人ではない」
「じゃ何」
「龍。パパは相当長い間生きている龍神だ。アマズンに居たんだけど。俺の前世で、会っていて、何だか多分俺、あいつに気に入られて、俺の姉ちゃんのピンチを救ってくれて、それから二人は相思相愛になった。で、姉ちゃんと結婚して、子供が出来て、そいつに俺がもう一度生まれ変わって来たんだ。庭に居る子達は俺の妹では無く、父親違いの姉だ。俺は生まれて、まだ数カ月だ。龍神の子は生まれて直ぐ大きくなるんだ。敵が多くてね。普通に暮らせているのは前世の記憶があるからだ。察しているかもしれないけど、前世はママの弟だった。地獄に落ちた霊魂に殺されたんだけど。直ぐ生まれ変わって、二人の子になったんだ。この前も金沢には、説明しにくいと言っておいたけど、今の説明で分かったかなあ」
「悪いけど、良く判らん」
「だろうな。忘れてくれ」
「学校で、魔物を殺していたよな」
「うん、それも訳アリだ。聞きたいか」
「聞いて俺らに分かると思うか」
「大体、俺の説明は下手だからな。兎に角、俺の前世の記憶では、この紅琉川には昔、龍神が住んでいてな。紅のせせらぎ姫って言うんだけど、夫の大露羅の尊っていうのの間に紅の新しきせせらぎの尊っていうやつが生まれたんだ。そいつが人間の夕霧って言うのに恋をして生まれたのが真太郎。その真太郎の父親である龍神の両親は、地獄の鬼に殺されて・・・」
「その話、まだずっと続くのか」
「相当長くなるぞ、一晩掛かるかもしれない。泊るか、今日は土曜だから」
「急に泊まっても迷惑だろう。出直してくるよ」
「じゃあ、ママが帰ってくるまで居ろよ。結界が要るかもしれない。俺の話聞いたから、ひょっとしたら、魔物に目を付けられたかもしれない」
「ええっ」
「ママが結界を張ってくれるよ。ママの結界は強力だから」
柳と金沢は呆れて座り込んだ。
千佳達が庭から戻って来て、
「全部しゃべっちゃうことにしたのね。由佳、昨日のおしゃべりは気にしなくて良いよ。このお兄ちゃん達は仲間になるんだって」
由佳は安心した様で、機嫌よく二階に上がって行った。千佳も追いかける。
「ひょっとして、親父さんが起きて来るんじゃあないか」
「怖がらなくて良いよ。普段は良い人だから。この前は魔物にやられて、怪我をしていたんだ。だから闘気を隠せていなかったけど、どうやら弱っているとああいう感じになるらしい。元気な時は見かけを取り繕う余裕があるんだな。今日は恐くないから。ここにいても大丈夫だ」
真太の説明では全く安心した様子ではない二人だが、帰るタイミングを失っていた。アボパパはやって来た。千佳由佳を引き連れてお出ましだ。
「やあ君達、来ていたのか。今日は泊まったらどうかな。真太が積もる話がしたいんだろうから。お家に此処に泊ると連絡しておきなさい。さっき、ママには連絡しておいたから、晩御飯をデパートの総菜売り場で買って来るそうだ」
やけに愛想よく言うアボパパ。
「今日は御馳走だな。千佳由佳」
「ママの作ったおかずは、御馳走じゃあないの」
由佳に言われ、
「いや、ママの作ったのが勿論良いよ。そういう意味じゃあないから。今言った事はママに言わないでよ。やれやれ」
等と言いながら、三人でテレビの前に座った。
柳と金沢は、泊まるしかない事が分かった。
暫くして、香奈ママもにこやかに仕事から帰って来た。アボパパの願いもむなしく、由佳は、
「パパが、今日は御馳走だって」
とママに話していた。
「あら、そうなの」
真太は噴出した。
柳と金沢は、こんな様子に、どうやら緊張する必要は無いと分かったらしい。
夕飯を食べ終わると、真太の話の続きを聞きに二階の真太の勉強部屋に移った。
「さっき、どの辺まで言ったんだったかな。兎に角、焔の童子って言う鬼に大露羅の尊と紅のせせらぎ姫は殺されたんだ。息子の紅の新しきせせらぎの尊は、焔の童子に焼き殺されそうになったけど、母親の龍神が逃がして、北極に飛ばされて、氷の中でずうっと傷をいやしていたんだな。夕霧は紅軍団という忍びの家柄だったけど、主君は金山を所有していたから、焔の童子と組んでいた他の国にその頃滅ぼされて、誰に滅ぼされたか名は忘れたな。紅軍団も夕霧と真太郎だけ生き残った。真太朗の子孫が前世の俺の一族。あ、香奈ママもだから今もだった。で、前世の俺は、熊蔵っていう爺さんに紅軍団の技を少しは教えてもらっていてな。あほうだけど、その特技で警察に入っていた。そこの捕り物で知りあった泥棒が、実の所、熊蔵の息子で、親父の従弟だった。紅軍団の末裔は方々に居て、本家は広永家で、広永リラっていうのがUSBBに住む広永一家に居てな、その子が日の国に来て、俺らで旅行していたら、焔の童子に襲われたんだ、と言ってもそれは鬼の欠片で、昔、大露羅の尊の兄貴に北の極の尊っていうのが居て、そいつが俺らの仇、焔の童子を刀でバラバラにしたけど、打ち取れなくて、逃がしちまったそうだ。その欠片に襲われそうになったら、例の、焼き殺されそうになった紅の新しきせせらぎの尊が、北極から出て来て助けてくれた。俺らはシンって呼んだんだ。俺やリラや、熊蔵爺さんの息子の強と烈の兄弟で、それからずっと、シンの子分になって、鬼退治した。欠片が人間に取り付いていたんだ。俺達、生きていても、霊魂だけになれて、霊魂で素早く移動して、魔物や鬼と戦えた。龍神の末裔だから出来る事らしい。地獄の魔王が、この世を地獄並みにしようと企んでいて、邪魔する俺らを襲ってきた。魔王の自称序列付けた奴らが、どんどん地上にやって来た。それで、極み爺さんもシンも次々、殺された。でも、怨霊龍に迄なって戦ったんだ。龍神は死んで黄泉に行ったら、普通はこの世にはやって来れないから、怨霊龍になってこの世に留まった。そのころ、魔物とかを殺せる御神刀が見つかったり、黄泉の大露羅パパが霊力で刀造ったりで。武器も手に入ったんだ。USBBの大統領の奥さんのレディ・ナイラも実は龍神で、極み爺さんは彼女のボディーガードとかしたりして、殉職ってことになり、レディ・ナイラもくれたりでお金が入ってね、シンが甥としてもらったんだけど、死んでしまった。だからアボパパがシンと入れ替わって、人間としての戸籍を手に入れてね。それでアボは大統領夫人みたいに、人間のふりをして暮らせている。魔物を倒すのに、アマズンの龍神のアバにも助けてもらったな。名前が似ているだろ。アボっていうのはアマズンの龍神で、紅琉新(こうりゅう、あらた)の正体だけど黙って居てよね。シンは俺の姪の桂木舞羅っていう子が好きになっていたんだけど、魔王に殺された。舞羅は俺の上の姉の真奈の娘だ。今は多分紅琉中学に通っている。清浄さで魔物を弱らせる。清浄な声で地獄も壊した。だから恨まれているけど、地獄の魔物みたいな不浄の輩は、あの子に触れる事は出来ない。それから、俺は前世での時、霊魂で黄泉に行って、紅軍団の長から奥義を習ったんだ、前世では紅軍団の長になったけど、地獄に行った紅軍団の霊に地獄の毒で殺された。シンや極み爺にしろ、龍神は人間がする事の災いには手出しできないそうだ。助けてくれるのは、地獄の魔物や鬼達の災いだけだ。そして、それも助けてくれるのは、どうやら紅軍団の末裔の俺達、桂木家だけだった。他の末裔たちは龍神の意向に反するそうだ。殺戮を好むようになっていたから、見捨てられたそうだ。誰が言っていたのかな、忘れちまった。何か質問ある。あっても答えられるかは、分からないけど」
「お前、大部端折っているだろう」
「かもな。一晩がかりで話すのは無理だな。段々眠くなって来ている」
「何が何だかさっぱりだけど、どうして前世の記憶がある?」
「その件は、誰に聞いた所で、分からないだろうな」
「どうやって数カ月で、人間で言えば高校生ぐらいにデカくなれるんだ」
「知らない、そういう者としか言えない。言っておくけど、数カ月で大きくなったんじゃあない。この大きさは一週間もかかっていない。生まれて直ぐ辺りの気を吸って大きくなる。深呼吸するとすぐデカくなった。それに気づいたのは何日かしてからだけど。デカくなった後は、自分の名前を書く練習だな。読み書きも習ったけどはかどらないから、親たちは匙を投げて本職の先生に任せようと思ったんだ」
「本当なのか。信じられないけど。ロバートが、紅琉が怪物を刀でやっつけていた。と言うからな。マジだというし何故、襲って来るのかな」
「言ったかな、俺の魂は真太郎だったって」
「それ、省略していたな。聞いていない」
「そうだったか、死んだとき、夕霧がそう言ったんだ、黄泉で出会った時に。親龍のシンを助け、敵討ちしに生まれて、それが前世の桂木翔ったんだ。ところで、俺の前世のこの名前は、言ってなかったかな」
「言っていない。名前は良いけど、とにかくつまるところ、前世で敵討ちに生まれて来た。その時はまだ生きていた龍神の息子だった魂だよね。そして一緒に鬼か魔物かを倒したんだな。龍神達は死んで、お前も死んだ。だけどお前は又生まれ変わって、またこの世に来た。そう言う事だな」
柳は念を押した。金沢も言った。
「龍神は殺してしまったが、お前は又戻って来た。だから奴らはまた殺すつもりだな。結局のところ。戦いはさらに続くって事だな。で、刀を持って通学だ。柳、こいつは正真正銘危ない奴なんだ。ずうっと、魔物に狙われて戦う運命だ」
「まったくもって、手に汗を握る展開になりそうだな」
二人はなんとなく理解したようなので、真太は安心していつの間にか眠ってしまった。話疲れたとも言える。
次の日、目覚めると、もうすぐ昼ご飯時になる11時過ぎである。二人はすでにおらず、中学には来月から転入だそうだ。三年生に入って、来年は高校に行くと言っていたと聞き、真太も中学に行くと言うと、ママが月曜に申し込みに行ってくれるというので、ほっとした真太だった。
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