第16話 スキル『ルーム』
部屋の中に生まれ始めていた、僕とティアナの『なんかいい雰囲気』はすべて跡形もなく消し飛んでいた。
室内にあふれかえる嵐のようなあえぎ声によって。
『Oh! Yes! Oh! Yes! 奥さん!!!』
『Wow! サブちゃん、You're cooooool!!!!』
ティアナは横になったまま、顔だけをTVの方に向けて、表情をなくしている。
僕も、あまりの出来事にしばし固まってしまっていたが、慌てて元凶と思われる、枕の下の黒い板を探し出して赤い突起を押した。TVは沈黙した。
室内は再び静寂に包まれた。しかし、悲しいことに『なんかいい雰囲気』は二度と戻ってこなかった。
「……。ねえ、ルクス……あれ、何?」
「う、うん……。
「へー、そうなんだー……」
「……」「……」
ど、どうしよう……。
今からさっきの雰囲気に持っていくのは、どう考えても不可能なことのように思われた。奇跡のように歯車が嚙み合って、あそこまで持っていけたわけだし。こんなマイナス地点からのスタートで、あの高みにはいけないって……。
「……」
「……」
「………」
「…………」
気まずい沈黙にそろそろ耐え切れなくなっていた、その時。
プワアァァ~~~~~~~ンッ!
『終~~~~~~~了~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!』
突如、部屋の中に、見知らぬ男性の声が響いた。
◆
「――な、なになに?」
思わず、辺りをキョロキョロと見まわす僕ら。
と、目の前の空間に、半透明の文字板が現れた。
なにか書いてある? えーと……。
『3タームが経過して【ご休憩】時間が終了いたしました。
このまま【ご宿泊】なさいますか?
なお、【ご宿泊】の場合は、このままあと9ターム、お部屋をご利用いただけます。
スキル『ルーム』を終了する / 延長して【宿泊】する』
「スキル、『ルーム』……?」
スキルだって? この部屋……というか、この空間自体が、誰かのスキルで出来てるってことか? 誰かって誰だろう? まさか僕じゃないもんな、スキルなんて持ってないし。ほら、パラメータ見ても、相変わらずスキル欄は空っぽで……って、なんかある! いったい、いつの間に――?
(※ 第4話 ダンジョン『不夜城 ファイト一発🖤』のラストを参照)
そういえば、この部屋に入る前に魔力が減った気がしたけど……。
『VIP……『ルーム』……?』
『【スキル『ルーム』を発動します】』
あ、僕言ってる! 偶然『ルーム』って口にしてる! それで、なんか発動の合図を聞いてた! 完全に聞き流してたけど!
じゃあ、やっぱりこれは僕のスキルってことで、生まれて初めてスキルをゲットできたってことなんだ! スゴイ! 効果はまだよくわかんないけど、とにかく嬉しい!
ゾクッ―—!
ひとりはしゃいでいた僕の背中に、不意に悪寒が走った。
「へえ……この部屋ってスキルだったんだ……。こんなエロいスキルなんて、いったい誰のなのかしらね? 『色欲』さん……?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
天変地異の前兆のような音が聞こえる。僕の前方から。
怒り狂った猛獣のようなプレッシャーを感じる。僕の前方から。
「ルクス……?」
「はい……」
「しねええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
凄まじい破壊音と長い長い悲鳴が、周囲に
◆ステータス
名前:ティアナ・ヴォルフガンド
性別/年齢:女/18歳
職業:武闘家
レベル:10
HP :25
MP:13
BP :30(+70 ※) ←New!
装備:布の服
スキル:『獣王の爪』(斬撃)
『獣王撃』(打撃)
★★★ 次回 ★★★
『第17話 『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます