第351話 ルディの挑発と伏兵
「このガキ、結構良いツラしてるじゃねえか。捕まえたら可愛がってやるぜ」
ルディと対峙した山賊がルディの顔を見て、にやけたツラを浮かべた。
「お前に掘られたら性病移されそうです。ロバのケツでも掘りやがれです」
ルディが鼻に親指を入れて手を広げ煽り返す。
そして、4対5と数で不利な状況を対等にすべく、直ぐに打って出て、目の前の山賊の1人を切り殺した。
「……このガキ強え!?」
一瞬で山賊を切り殺したルディに、兵士と対峙していた山賊が目を見張る。
そのルディは切り殺した山賊を見ながら、体を震わせた。
「き、切った……僕、初めて人…殺したです……」
山賊の警戒心を緩めようと、初めて人を殺した様な演技をするルディに山賊たちがツッコんだ。
「お前、逃げる前に1人殺ったじゃねえか!」
「……あれ? そーでしたっけ? てへっ」
ルディは後頭部を叩くと、ウィンクをして舌を出した。
「ふざけるな‼」
キレた山賊が暴れてルディに襲い掛かるのを、兵士たちが防ぐ。
山賊を逃げ出さない様にするルディの作戦は成功した。
だが、闇雲に攻撃してくる山賊に、防戦一方の兵士たちは、心の中で「煽りすぎ」と舌を巻いた。
5分近く戦闘は続き、攻撃一辺倒だった山賊は疲れて、防戦していた兵士の体力はまだ余裕があった。
そこへ山賊のリーダー率いる援軍が現れた。
「てめえ等、たった4人に何やってんだ!」
山賊のリーダーは、ここへ来るまでの道中に転がっていた死体を見て、殺したルディたちと手下の不甲斐なさに怒っていた。
「親分! こいつ等意外と強いんです」
「泣き言は聞きたくねえ! さっさとガキを残してぶっ殺せ!」
山賊のリーダーが命令を下し、手下たちが動き出す。
その時、道の左右からレインズとハクが率いる兵士たちが現れた。
「しまった、待ち伏せか!?」
突然現れた兵士に山賊たちが動揺する。
「掛かれ‼」
左からレインズが指揮する100人、右からハクが率いる100人が山賊に向かって襲い掛かった。
山賊が伏兵に動揺している隙に、ルディと3人の兵士が後ろに下がる。
兵士たちは容赦なく襲い掛かり、山賊が次々と倒されていった。
「ちくしょう!」
山賊のリーダーは一方的に倒される味方を見て、悔しそうに顔を歪ませた。
その彼も襲い掛かる数人の兵士の攻撃を防ぎきれず、剣で刺されて命を落とす。
結局、僅か数分で山賊は全滅し、一方、兵士は軽傷者が数名出た程度で勝利した。
「……アスカ殿には感謝しかないな」
相手は兵法など知らない山賊とはいえ、完勝した自軍にレインズが呟く。
「全くだぜ。今まで多くの戦場を見て来たけど、これだけ強い領兵は見た事ねえよ」
スタンがレインズに話し掛けて、デッドフォレスト軍を褒めた。
「レインズ殿。たった200人とはいえ、これだけの精鋭を持てた事は誇って良いぞ」
「そうだな。彼らのおかげで俺も自信がついた」
レインズの返答に、スタンがニヤリと笑い返した。
「そりゃ良い事だ。いくら兵士が強くても大将が弱気だったら、兵士も弱くなるからな。くじけそうになっても部下に弱気だけは見せるなよ」
「進言感謝する」
レインズが頭を下げると、スタンが照れくさそうに笑った。
ルディとルイジアナが魔法を唱え、地面に大きな穴を開ける。
兵士たちがその穴に山賊の死体を捨てて、戦後処理を済ませると、一行は南への進軍を再開した。
山賊と戦った後は特に何事もなく、予定の休憩地点に到着した。
「ここに水と飯を隠していたです」
ルディがそう言って、崖岩に向かって蹴りを入れる。
崖岩の一部は背景写真を張り付けたただのベニヤ板で、それがバキッと折れて中から水と食料が現れた。
「なんと、こりゃ驚いた」
精巧なカモフラージュにハクが驚き、目をしばたたかせた。
「一体どうやって運んだのか、本当に不思議だぜ」
大量の水の入った樽と食料を見てスタンが呟く。
ルディの持っている輸送機の存在を知っているレインズたちは、その呟きを聞いて、お互いの目を合わせると隠れて笑った。
この日のレーションは、アルファ米にコンビーフを入れたカレーを掛けた料理で、食べた全員が絶賛した。
「これは美味いな」
カレーを食べてナオミが褒めるけど、ルディはやや不満な表情を浮かべていた。
「やっぱり保存食はビタミンCが不足しがちになるです」
「それが足りないとどうなるんだ?」
「疲労回復効果が減少して、病気になりやすいです」
「そうは見えないけどな」
ナオミがそう言って兵士と傭兵の様子を伺う。
カレーを食べている彼らは、進軍中に美味い料理を食べる事が出来て嬉しそうだった。
「今回は4日間だけだから症状がでねーです。だけど、これが1カ月続いたら表に出てくるですよ。改善の余地ありです」
ビタミンCは水溶性ビタミンなので、水に溶けやすく熱に弱い。
そして、水溶性ビタミンは食べてもすぐに尿として流れるので、常に摂取する必要があった。
ただし、じゃがいもとサツマイモは、ビタミンCがデンプンに覆われているので、調理後もほぼ分解されずに残っている。
ルディはカレーを食べながら、芋を使ったレーションについて考えていた。
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