第205話 第2巻発売記念SS『シンシアとステフの女子トーク』


 冒険を終えた夜。

 高級酒場の個室ではシンシアとステフが向かい合って座っていた。


「さあ、今日は二人だけの女子会だ。腹を割って話そうじゃないか」


 ステフは琥珀色の蒸留酒が入った酒瓶を傾け、自分のグラスになみなみと注ぐ。


「シンシアも」


 続いてシンシアのグラスにも同じように。


「乾杯だ」

「ええ、乾杯」


 合図とともにステフはグラスを傾け、一気に飲み干す。

 高級な蒸留酒はそういう飲み方をするものではないが、ステフは気にしない。


 空になったグラスをテーブルに置くと、ステフは挑発するようにシンシアを見る。

 シンシアもニコッと微笑み――グイっとひと息でグラスを空にする。

 それを見たステフは感心した様子で、二人のグラスを再度、満杯にする。


「それにしても、どういう風の吹き回しだい? 今までいくら誘っても乗ってこなかったのに」

「最初は警戒してたからね。でも、一緒に戦って、ステフがどういう人か理解できたから」

「ふうん。それは嬉しいね」


 ステフはシンシアに粘っこい視線を向けるが、シンシアはそれを軽く流す。


「やっぱり、ガードは堅いか」

「それは、まあね」

「ところで――」


 唐突にステフが切り出す。


「ラーズとはどうだい?」

「なにが?」

「夜の方だよ」

「なっ」


 不意打ちにシンシアの頬が真っ赤になる。


「ああ、言わなくても分かったよ」


 ステフが上から目線で告げる。


「やることはやってるくせに、ずいぶんと初心うぶだね」

「あなたほど、経験豊富じゃないのよ」


 男嫌いなステフだが、女性経験の豊富さでは、そこら辺の色男よりよっぽどだ。


「それにしても、いきなりね」


 乾杯直後に持ってくる話題でない。


「情けない男と違って、回りくどいやり方は嫌いでね。女の子を口説くときも、僕はストレートだよ」


 言葉を表すかのように、ステフは一気飲みをする。


「シンシアも、お酒は強いんだろ?」

「それほどでもないわよ」


 そう言いつつも、負けじと一気飲みだ。


「本当に、男性には興味ないの?」

「ああ、まったく」


 虫でも見るかのように、ステフは顔を蹙める。


「強がるくせに、自分より強い女は認めない。情けない生き物だ」

「ずいぶんと嫌な目にあったらしいわね」

「ああ、思い出したくもない」


 怒りか、悔しさか、ステフは酒と一緒に流し込む。


「その点、女の子はいいぞ――」


 酒に酔ったからか、自慢したいのか。

 ステフの赤裸々な女性遍歴が語られる。


 ここが個室で良かったと思えるくらい、子どもには聞かせられない話だ。

 興に乗ったようで、話しながらステフの酒量はどんどん増えていく。

 シンシアも恥ずかしさを誤魔化すために、グラスを傾ける速度が増していく。


 やがて――。


「もうだめでぃあ」


 ろれつが回らなくなったステフがテーブルに突っ伏す。

 シンシアを酔い潰して、あれこれしようとするつもりだった。

 しかし、シンシアの酒の強さを前に、返り討ちだ。


「残念でした」


 ――私が身体を許すのは、ラーズだけだもんね。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】



3月1日2巻発売です!


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【コミカライズ連載スタート&2巻発売中】勇者パーティーを追放された精霊術士 最強級に覚醒した不遇職、真の仲間と五大ダンジョンを制覇する まさキチ @maskichi13

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